第21話 Bクラス試験
コラボ配信を終えて二日。俺は春奈ちゃんに剣を向けていた。
「全力でかかってきてください」
「わかりました。遠慮はしませんよ?」
なぜこんなことになっているのか。その理由は……。
◇◇◇
いつも通りの朝を迎え、歯を磨いていると、姉貴に声をかけられた。
「ああ、そういえばあなた今日Bクラス試験入ってるからね」
「はい?」
今信じられない言葉が聞こえた気がするが。
「私がBクラス試験予約しといた。今のあなたなら余裕でしょ?」
「いやいや、まぁそうかもしれないけど、もっと早めに言ってほしかったかな」
仮にも試験だぞ。心の準備とかいろいろあるだろうよ。
「あーごめんごめん。とりあえず頑張ってね。私今日は仕事だからもう行きまーす」
「わかった。頑張ってくる。いってらっしゃい」
唐突に試験かよ。はぁ。その時、一件のメッセージが届いた。
メッセージを見ると試験は一時からとの旨が姉貴から届いていた。
「少し復習しておこうかな」
Bクラス試験は筆記100点、実技100点で200点満点のなか、合計140点を取ることで獲得できる資格である。
実技はまぁ8割以上取れるだろうとして、今Bクラスの筆記試験で60点以上取れるかというとまぁ微妙な感じが無きにしも非ずだ。
なんとかしないといけないな。
そういうわけで、午前7時から午前11時までひたすらに復習をした。前にBクラス試験を受けた際の復習が主だからな。そんなに難しくはなかった。
というわけで、一時に協会支部に行ってみると、確かに試験が予約されていた。
まぁ筆記試験は問題なく終わった。前回受けたときは90点は取れてたし、今回はそれより少し低いくらいだろうか。
問題は実技試験である。実技試験に移り、フィールドに移動していると、そのフィールドに見知った人物が降り立った。
「お待たせしました。試験官の九重 春奈です。ね、私の言った通りになったでしょう?」
「本当ですね。今日はよろしくお願いします」
推しに刃を向けなくてはいけないという最悪の試験はこうして幕を開けたわけだ。
春奈ちゃんには申し訳ないが、これは試験である。俺も全力を出し尽くす。
俺の最も強い戦術。それは、卑怯ではあるが空中で魔法を撃ちまくるというものだ。
俺は翼を生成して、フィールドの上空に舞う。そして、魔法弓を展開しようとしたその時。春奈ちゃんが虚空に剣を振る。
空飛ぶ斬撃が俺の隣をかすめた。いや、翼を切り飛ばされた。
まぁこの翼は魔力体で、すぐに再生するから問題はないが。
「落ちないんですね。次は本人を狙いましょうか」
冷徹な春奈ちゃんの目が俺をとらえる。怖いけど、推しに向けられる視線としては新鮮でいい……。
とか考えてる余裕はない。なに!? 春奈ちゃんって斬撃飛ばせるの!? 初めて知ったんだけど!?
それはマジでまずい。
俺の魔法は高い火力であればあるほどタメが長いものになる。
「しかし、飛べるとは意外ですよ」
「まぁ、隠すつもりはなかったんですけどね。使う機会があまりなくて」
とりあえず何とかして魔法を発動させることが必要だな。
俺は移動しながら魔法を発動しようとする。が、しかし、飛ぶ斬撃によって魔法の発動を阻害される。
どうすんだこれ。火力低い魔法をグミ撃ちするか?
いや、グミ撃ちは負けフラグだ。やめておこう。やはり火力の高い、俺らしい魔法を使うのが一番だ。
しかしどうする? 何とかして隙を作らないといけない。
一番現実的なのは血液操作の遠距離攻撃で隙を作ることだな。
俺は手から血を出すと、それを操作して、多数の剣を空中に生成する。
「どこの英雄王ですか」
「私は慢心しませんから」
俺は生成した剣を一斉に春奈ちゃんに向けて飛ばす。これで時間が作れるな。血をが減る分魔力がだんだん減っていくが、今となってはそこまで気にならない。マジで今魔力量多いから。
実は24時間出血し続けても魔力が無くならない。
血の剣を飛ばし、春奈ちゃんの動きを妨害している間に、俺は魔法弓を展開する。
「『
頻度の減った飛ぶ斬撃をかわしながら、何とか魔法弓を展開することに成功した。
ちなみに、飛ぶ斬撃、一発でも当たれば即終了である。なんて威力なんだろうな。
俺が飛ばした血の剣も大体切り裂かれてるし。あれ魔力で特性持たせて鉄より硬くしてるんだけどなぁ? どんだけ火力高いんだよ。
「あらら、展開されちゃいましたか。撃たれないように動かないといけませんね」
その言葉と同時に、飛ぶ斬撃のペースが上がった。魔法の矢を装填している余裕がない。
躱すので精一杯だ。
大体なに? 飛ぶ斬撃で弾幕みたいなの生成しないで? 空間が揺らぐのが見えるからなんとか躱せてるけど見えなかったら即死じゃんこんなの。
なんとか防ぐ方法はないだろうか。
……少し心当たりがあるな。やってみるか。
俺は血液を操作して、いくつか空中に盾を生成した。その盾は、2、3回ほど斬撃を防いでみせた。
行けるな!
いくつか盾を生成、それを操作して飛ぶ斬撃を防ぎながら、俺は魔法弓に魔法の矢を装填する。
「『
よし! なんとか装填できた! 後は撃つだけだ。
「やっかいですね。こちらも一つ手札を切りましょうか……」
その時、春奈ちゃんの目が黄金に輝いたのが見えた。
【金色の魔眼】か! 麻痺を喰らうとまずい!
「『
俺はとっさに魔法弓、魔法の矢を解除し、状態異常をほぼ無効化する魔法を自分にかけた。手先が少ししびれるが、動けなくはない。
こんなことだったら魔法同時展開の練習をしておけばよかった。
魔法弓系の魔法は制御にまだ難があるから他の魔法を同時に使えないからな。
「鑑定持ちですもんね。まぁ予想の範囲です」
「勝手にステータスを覗いたことはあやま……」
あれ、口が動かない。手も、動かない。魔力体である翼は動くため飛んではいられるが……。
……麻痺か!!
「しかし、ちゃんと私のスキルの説明はお読みになられましたか?」
そうだ。あの【金色の魔眼】は魔法の解除能力がある。まさか強化系の魔法も解除するとは!
俺の『
くっ! しくじった!
「さて、これで終わりです」
春奈ちゃんが俺に向かって剣を振るう。
その瞬間、視界が切り替わる。
ダンジョン協会の一室、白い扉の前で、俺は立ち尽くしていた。
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