第20話 予感……?
「しかし30層にバジリスクですか……珍しいこともあるものですね」
春奈ちゃんが顎に手を当て、考え込むようにしてそういった。
その仕草少しあざといからやめてほしいな。かわいい。
しかしやはり最近このダンジョンの動きが余りよろしくない。こういった階層ごとの区切りが明確でない場所ではたまに不安定になるのはあることではあるが、それにしてはバジリスクが出張しすぎだ。
「もしかすると、前兆、なのかもしれませんね」
「可能性はないわけではないですが、現状低いと言わざるを得ないと思いますけどね?」
春奈ちゃん曰く、ダンジョンの外にゴブリンの一匹すら出ていない現在の状況では少し大きい乱れと言わざるを得ないらしい。
基本、スタンピード本波の前にはゴブリンや、その魔物に生息する雑魚が少しだけ外に出てくるそうだ。確かに言われてみるとそうだったな。Bクラスになる前に勉強してた。
「で、あればただの乱れですかね?」
「現状はそう判断できますね。ここからダンジョンを出たときに魔物が外に出ていたとなれば話は別なんですけどね」
:ほぉーん
:でも万が一もあるかもしれないからね、札幌の人は一応避難の用意とかしとくといいかも?
ミク:¥50000 確かに札幌の人は避難の用意をしておくといいかもね~!!
うちの視聴者たちは防災意識が高く、一応は避難の用意をするようにとのコメントが多くみられた。
そうだな、俺も呼びかけておこうか。
「多少の異常がみられることは確かです。前例のないダンジョン災害が起きてもおかしくありませんし、避難の準備、しておいてくださいね?」
:俺さいたまだけど防災の用意するわ
:防災意識高くていいね
ミク:¥50000 いつ起きるかわからないんだからなるべく早く用意するんだぞ!
赤スパで注意喚起をしてくれるミクさん。こっちがお金をもらっているのは少し申し訳ないがモデレーター権限を与えて置いてよかったかもしれない。
「そうですね、私からもひとこと。皆さん、ダンジョンがあるこの世界に慣れていますが、ダンジョンは超常の存在です。何があるかわからないのは、常にです。今が安全だからと言ってこの先何かがないとは限りません。防災の用意はしっかり完璧にしておきましょうね」
Aクラス探索者の春奈ちゃんからありがたいお言葉をいただいたところで、今回のコラボ配信を終了する運びとなった。
二人とも配信を切った後、俺は春奈ちゃんにお礼をいった。
「今日はありがとうございました」
「いえいえ、私の方こそ。それで、相談なのですが、また後日私とコラボしていただくことは可能でしょうか」
春奈ちゃんとまたコラボできるのか! それはいいな!
「もちろんですよ。日程等はどうしますか?」
「4日後の11月24日などいかがでしょうか?」
もちろん俺は空いてる。
「もちろん構いませんよ!」
「でしたらそこでお願いします。またよろしくお願いしますね」
◇◇◇
「名取。俺が前回札幌のスタンピードを解決した時の事を話しておく。今回は俺が大阪に当たらなきゃいけなくなったからな」
探索者協会本部。その会議室にて、二人のSクラスが会話をしていた。
片や、世界最強のSクラス。紅 司。常に真っ白な仮面をつけた、謎の多い男。
片や、日本の2番手、世界4位の名取 連。20歳にして、Sクラスの若き天才。
「助かります」
「前回のスタンピードでは、ゴブリンキングの特殊個体が統率個体だった、ということになっている」
札幌地下大迷宮は1年2か月前にもスタンピードを引き起こしている。その際は、もともと規模が小さく、Aクラスの探索者が対処に当たった。
が、しかし、それは誤った判断であった。
「違ったんですか?」
「ああ。俺がゴブリンキングの特殊個体を討伐したが、それには別のものが寄生していた」
名取は探索者をしていて聞きなれない言葉に疑問を浮かべる。
「カースレイスの特殊個体。それがゴブリンキングの特殊個体に取り憑き、操っていた」
「アンデッド系ですか」
アンデッド系は総じて厄介な個体が多い。しかし……。
「アンデッド系は得意分野です」
「まぁ、その辺は俺も心配してないがな。今回言いたいのはそこじゃない」
紅は、少しタメてから、次の言葉を放つ。
「……特殊個体。特殊個体だ。あのダンジョンで発生するスタンピードでは特殊個体に気をつけろ。俺が戦ったカースレイスは相当の魔法耐性を持っていた」
「なるほど……肝に銘じておきます」
名取はそういうと、たとえ世界に影響を与えるような魔物が出てきても、最低でも大切な人は守ると心に誓ったのだった。
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