閑話『ミクの休日?』
『皆さん!? 少し落ち着いてください!! お金は限りあるものですからね!?』
画面の中の押しが焦ってかそう声を上げる。焦ってるところもかわいいなぁ。
まぁ、僕にとってはお金はただの肥やしだし、お姉さんがいくらでもあげちゃうよ。
一度のスパチャで送れるのは5万円ほど。正直少ない。今の僕の財産を送りきるのにどれだけかかるんだろう。
僕は通帳を開いて残高を確認する。¥1,203,412,967。これを5万で割ると……。少なくとも2万4千回はスパチャしないと全財産を送れないじゃないか!!
欠陥システムめ……もっと送れるようにしろ!!
ちなみに僕は推しの配信をより良い環境で見るために高画質のテレビを買ったし、通信環境も最大限良いものにした。
後残ってるのはスパチャ、グッズの購入くらいしかない。
「なんとかならないものかね……」
僕は登録者が20万人に達した推しにお金を送って祝いながら、頭を回した。
「直接支援するために会いに行くほど厄介なファンはしたくないし」
迷惑なファンにはなりたくない。まぁ、すでに迷惑な可能性がないわけでもないけど。
と、そこで電話が鳴った。仕事の電話かな?
『んー何? 僕今推しの配信見るのに忙しいんだけど』
とりあえずは出る。しかし、みいなちゃんの配信を見るのが優先だ。
『お、推しですか!? 土佐霧さんにもそういう趣味があったんですね』
『僕をなんだと思ってるのさ』
お、みいなちゃんが黒蛇と遭遇した。頑張れってお金送っておこ。
『え、人類最強の風魔法使いで、常にだらしない絶対結婚できない女ですかね?』
『風魔法使い限定でしょそれ。風魔法使いはそもそも弱いんだから。後後半余計だし』
風魔法使いでAクラス以上まで上り詰めたのは実は私だけだ。総合的に見れば僕より強い人なんてたくさんいる。
……たくさんはいないかも。
『で、なんの用?』
『ああ、極秘でお願いしたいんですけど、なんかスタンピードの可能性があるらしくて札幌まで向かって欲しいんですよね』
スタンピードか。それはまた面倒な。まぁ多分、私は札幌に滞在するだけになりそうではあるけど。札幌には名取と長麦がいるからね。2位と13位。十分安全でしょ。
この配信を見るのに最高な環境から抜けて。戦うかもわからないのになんでそんなとこまで行かないと……ん?
そういえばみいなちゃんが潜ってるダンジョンって札幌地下大迷宮では……?
『ふーん。いつからいつまで?』
『具体的には3日後から14日間ですね』
なるほど……もしかすると仕事でと言ってみいなちゃんに会える可能性があるわけか。アリだな。仕事なら、仕方ないしね?
『亜理紗ちゃん、僕行くからホテル取っといてよ』
『本当ですか! いつもなら積極的に動こうとしないのに。助かります! あと、亜理紗ちゃんってやめてくれません? これでも私探索者協会石川県支部支部長ですよ?』
なんで僕より1歳年下の18歳が支部長やってるのか。大丈夫か、探索者協会。
『嫌だね、亜理紗ちゃんは亜理紗ちゃんだよ』
『はぁ、仕方ないですね……。とりあえずホテルはとっておくので、3日後から札幌、頼みますよ?』
さすが、助かるね。お、みいなちゃんが黒蛇倒した。いいじゃん、かっこいい!
『ほんとに配信見てるんですね』
『今みいなちゃんがしゃべってるんだから喋らないでよ』
『ガチ勢じゃないですか……』
そりゃ一目ぼれしたし? 全財産つぎ込むって決めたし? まぁこのペースならまだ増える方が早そうなんだけどさ。
『とりあえず私も配信見るんで切りますね。3日後に札幌、忘れないようにしてください!』
亜理紗ちゃんはそう言って通話を切った。札幌、忘れないっつーの。
というか、あなたも見るんだ。同担だね。あと支部長の仕事した方がいいよ? 配信見てないで。
この配信が終わったら僕も札幌行く用意始めないとなぁ。絶対だらだら用意するから。
お、同時接続5万超えたのか! すごいなぁ、僕の推しは。
配信も最高だしね。
お金送っちゃおっと。
『¥50000 最高の配信をありがとう!』
っと。
って何!? 近々10万人記念配信!? できれば3日以内にして!! 札幌のホテルの中でスマホで見るとか嫌だ! この設備で見たい!!
……そうだ、ホテルの中に持ち込めばいいんじゃないかな!? この設備!
10万人記念配信とか、本当に楽しみだな。
今ままで、だらだらと無気力にやってきたけど、最近は配信を楽しみに仕事できるし、気力が出て来た。
本当にありがとう、みいなちゃん。
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