第17話 実践打ち合わせ
翌日、約束を違うことなく10時に集合した俺たちは、ダンジョンの25層まで一気に駆け降りた。
「しかし流石ですね、みいなさんは。ここまで来るのに一切苦労する様子もありませんでした」
「ええ、まぁ。攻撃系のステータスは高いので。防御系のステータスは低いので攻撃を絶対喰らう可能性があるところではこうはいきませんよ」
まぁ対策として防御手段も幾つか開発しては来たけどな。
「それでもこの辺りで戦うには十分すぎますよ」
「あはは、お褒めいただきありがとうございます」
推しに褒められるのは素直にうれしい。
俺達が先に進んでいると、先の方から魔物がこちらに来ているのが分かった。
「ブラックサーペントですね」
「前衛、お願いしますね」
基本、俺達二人での戦闘は、春奈ちゃんが前衛、俺が後衛で進めることになっている。
魔眼があるとは言え、春奈ちゃんは剣の方をよく使うからな。それに低耐久高火力の遠距離攻撃持ちは後衛に置くのがセオリーだからな。
こちらに気が付き突撃してきたブラックサーペントの牙を春奈ちゃんが剣で弾き飛ばす。
俺にはできないであろう芸当だ。しかし、いい隙ができた。
「今です!」
「行きます! 『
雷の槍が高速で飛び、ブラックサーペントの頭を打ち抜いた。
「いいですね。やはり火力に関しては私以上あります。私がタンクに徹すればSクラスもやれますね」
「そう、ですかね?」
実感がわかない。確かにステータス的には俺の方が火力はでる計算になるが。
春奈ちゃんの剣技が鮮やかすぎて、技術の差をひしひしと感じるというかなんというか。
「そうですよ。実際Aクラス上位レベルではありますし、Bクラスですらないってのは酷い詐称ですよ」
「さ、詐称ですか……」
な、なんか非難されてる!?
「あなたの実力を知らずにBクラス昇格試験の際の試験監督になる人がかわいそうですよ」
「確かに……」
これからBクラスになろうっていうペーペーがAクラス上位、ひいてはSクラス並みの火力を引っ提げてきたら普通に引く。
「まぁ、近場のAクラス筆頭は私なのでおそらく私が試験官になりますけどね」
「ほ、ほんとですか!?」
なんというか、気が楽というか。
「私はあなたの実力を知っていますから。最初から手加減はしませんよ?」
「そ、それはいいですねぇ……」
やべぇ、全然良くないかもしれない。万一にも勝てる目が見えないぞ?
「さて、連携の確認も十分しましたし、そろそろお昼を食べてから配信の用意をしましょうか」
「了解です。コラボ、頑張りましょう!」
◇◇◇
ダンジョンから出た俺達は近くのオムライス専門店に向かった。春奈ちゃんの好物はオムライスらしい。
「昨日から私の好きな物ばかり食べてて申し訳ありません」
「いえいえ、私も好きですよ、オムライス」
とは言えうちの一家は……まぁ姉貴しかいないが、少し特殊で、オムライスの中身は白米なことが多いんだ。
それに慣れてしまったからかたまに店でオムライスを食べたときに中身がケチャップライスだと違和感を感じる事がある。
ここもそういう店なのかなぁ。
「ここのオムライスは絶品ですよ」
「期待してます」
春奈ちゃんが何も知らない俺の代わりに注文を済ませてくれる。
実際にオムライスが来るまで、少し暇だな。
そう思っていると、春奈ちゃんが声をかけてくれた。
「そうですみいなさん。LUINの連絡先、交換しませんか」
「LUINですか? もちろん構いませんよ」
LUINはメッセージアプリの中で最も有名な物だ。と思う。
「ありがとうございます」
「これでいつでも連絡できますね」
まぁSNSでの繋がりもあるからもともと連絡はできてたんだけどな。
「ええ、ダンジョンの事や日常生活、後は服の事とか。なんでも聞いてくださいね」
「いいんですか? ありがとうございます」
女の子になってまだ日が浅いし、服に関してはいろいろ聞いておきたい。
「さて、そろそろオムライスが来ますね。ゆっくり食べましょう」
「あ、はい」
春奈ちゃん、ここ、結構通ってるな? 注文からくるタイミングまで理解してるとは。
「ご注文の『シンプルなオムライス』お2つです。ごゆっくりどうぞ」
うわ、ほんとに来た! というかネーミングセンスな? 昨日から多いぞこんなの。
「「いただきます」」
……結論から言おう。めっちゃうまかった。昨日のただのでかいコーヒーゼリーとは大違いだ。
これは配信に身が入るな。まぁ推しとコラボなんだから元から入ってはいるんだが。さらに楽しくやれそうだ。
配信、がんばろ。
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