第16話 まごうことなきデートである!!
「さて、服、探しましょうか」
「助かります」
バカでかいコーヒーゼリーを何とか食べ終えた俺たちは(春奈ちゃんは余裕そうにしてた)話の通り、服を見に来ていた。
しかし、しかしだ。こういう機会にお金を使ったことのない俺からすると、予算が高すぎる。
『30万あれば困らないんじゃないですか?』
『は、はぁ……』
服に30万とか考えたこともない。こうなる前はBクラス探索者としてそこそこ稼いではいたが、それでも服にそこまで金をかけたことはなかった。
何気なしに手を取った服が10万を超えていた時には思考が停止した。
……なんでこんなに高いんだ。
「……値段が疑問だという顔をしていますね」
「……バレましたか」
実際気取られないようにしているつもりではあったが。よく見てるな。春奈ちゃん。
「まぁこのお店はデザインと機能性を両立しているので高くなるのも当然ですね」
「機能性、ですか」
デザインはまぁわかるが、機能性なんてどの服も一緒じゃないのか。
「本当に服は姉に任せっきりだったんですね」
「うっ」
お、推しに引かれた……。
「ふふ、いや、別に馬鹿にしたわけじゃないんですよ?」
「いや、その……。はい……」
推しのスマイルで俺の精神が吹き飛んだ。語彙力、消滅!!
「この服はダンジョンで取られた素材が使われてるんですよ。強靭で、しなやかなんです。おまけにある程度攻撃のダメージを減らせます」
「それはすごいですね……」
思わずもう一度服を見なおしてしまった。手に持った感じ少し上質な布って感じ以外は普通の服と変わらなかったからな。これがダメージを軽減できるのか。
「ですので、私はよくこの店で服を買ってますよ」
「なるほど、私も参考にさせていただきます」
ここの店で服を選ばせてもらおう。ダメージを軽減できるなんて、防御方面が終わってる俺にとってはかなり好都合だ。
「まぁ服を選ぶのは難しいですから、始めは私がお教えしますよ?」
「本当ですか! ありがとうございます!」
すごく、かなり助かる。たくさんある中から自分に似合う系統を今から考えるなんて俺には無理だし。
「まずは普段着から選びましょうか。ゴスロリ系はお姉さんの趣味でたくさんあるんでしたよね?」
「ええ、かなり」
おそらく今後も増えるだろう。
「でしたら今の私のようなストリート系、他にはカジュアル系などを試して見ようかなと。みいなさん、なんでも似合いそうですし」
「なんでもですか」
◇◇◇
それから2時間ほど。かなりの種類の服を買い込んだ。まぁ名前とかはよくわかってないんだけど、春奈ちゃんが言うにはカットソーがなんちゃらとか、ニットかなんちゃらとかロングスカートがなんちゃらとか。
その道のプロなのかなと思うくらい、春奈ちゃんはオシャレに詳しかった。
ダンジョン配信者をやってるんだから俺もその辺に強くならないとだめなのかもしれない。割と容姿社会であることは間違いないし。
「いかがでしたか?」
「とても有意義でした」
結局40万以上使ってしまったが、これは元の俺時代の貯蓄から出すので問題はない。
「しかしもう、暗いですね」
「それはまぁ……冬ですから」
北海道の札幌という地。11月19日であれば、もう18時にはすでに日は落ちている。
もう吐く息も真っ白だ。小さくなった俺の手の先も赤くなっている。冷たいな。
「みいなさん、手、つなぎませんか」
「……ふぇ?」
今、推しに手をつなぎませんかとか言われた!? 俺が!?
「ああいえ、はぐれるといけませんし、寒いですから」
「あ、そうですよね……お願いします」
他意は無い的な感じで付け足されたその言葉に少し落胆しつつも、俺は春奈ちゃんに手を差し出した。
春奈ちゃんが差し出された俺の左手を右手で包む。暖かくて、大きい。
「ふふ、冷たいですね」
「最近寒いですし。私は体も小さいですから。九重さんは温かいですね」
「……そうですか? それはよかったです」
……なんなんだこのやり取り。少し顔が熱くなってきた。
「もしみいなさんさえよろしければこのあと温かいものでも食べに行きませんか?」
「私は大丈夫ですが……。もうそこそこ遅いですけど、九重さんこそ、いいんですか?」
もう18時半になる。女子高校生が出歩く時間じゃ、そろそろ無くなってくるはずだ。あ、俺も女子高校生だ。
「こう見えて強いですし、夜だって平気ですよ。では行きましょうか。おすすめのラーメン屋があるんです」
「ラーメンですか、いいですね」
その後、俺は推しに手を引いてもらって、ラーメン屋まで行き、二人でラーメンを食べ、家まで送ってもらった。
家に帰ってきた今、思ったんだ……これってなんかデートみたいじゃないかって。
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