第15話 推しとの打ち合わせ

 ついに始まったコラボの打ち合わせ。でも、俺、マジメに話ができる気がしない。


 だって、春奈ちゃんかわいすぎるんだもんよ。俺、そこまでオタク気質はなかったはずなんだけど、最近一段とダンジョン配信者にはまったのもあって、オタク属性を手に入れてしまった可能性が高い。


 どもりそうでとても怖い。


「まず明日のコラボの集合時間ですね」


「はい」


 これに関しては事前に春奈ちゃんの方で決めて問題ないと事前に連絡していた。だって札幌駅って俺の家から割と近いし。


「明日は火曜日です。配信をするなら17時からがいいと思いますが……」


「そうですね。学校とかもあるでしょうし、それぐらいが妥当でしょう」


 帰宅時の学生に優しい時間帯だしな。それに春奈ちゃんも高校生だし、授業等があるだろう。


「集合は、事前にダンジョン内で実践打ち合わせもしたいので、10時ほどに集合でいかがでしょう」


「え、学校はいいんですか?」


 火曜日ってバリバリ学校じゃないの?


「ああ、私、ダンジョンに行くためなら公欠扱いになるので。Aクラス探索者の利点ですよ」


「ああ、なるほど……」


 なんだそれ。俺の知らない制度出て来た。まぁ、俺が探索者始めたのは19からだし? 学校に関する制度に興味はなかったし? 仕方ないよねー?


「ああ、そういえばみいなさんこそ学校ではないですか? 16時30分集合とかにします?」


「私は学校1月からなので問題はないですね」


 実際俺が登校を始めるのは1月からだ。それまでは問題ない。


「……? 1月からの学校なんてあるんですね」


「ええ、まぁ……」


 ちょっと空気が微妙になってしまった。やばい、推しとこんな空気になるなんて精神にダメージが……。


「ご注文の『コーヒープリン:DX』2つになります。ごゆっくりどうぞ~」


 ちょうどその空気を注文の商品を持ってきた店員さんがぶち壊してくれた。ナイスだ店員さん。ところでその奇天烈な名前の商品はもしかしてさっき春奈ちゃんが『いつものお願いします』って頼んでた奴かな?


「注文が来ましたね。私おすすめの『コーヒープリン:DX』です。どうぞお召し上がりください」


「あ、いただきます」


 名前の通りかなりの大きさのコーヒープリンだ。味はどうなんだろうか。俺はそれを一口食べる。


 ……うん。普通のコーヒープリンだ。ただでかいだけじゃねぇか。


「ゆっくり食べながら打ち合わせの続きと行きましょうか」


「了解です」


 しかし、春奈ちゃんはこのコーヒープリンを美味しそうに食べるなぁ。口にした後の笑顔がまぶしい……。


「どれくらいの層で配信しましょうか」


「そうですね、私の実力的には25層から30層くらいが妥当ですかね……。申し訳ないですけどそれ以上だと足を引っ張る可能性があります」


 鑑定で把握したステータス、そして剣の実力を鑑みるに、春奈ちゃんは半分Sクラスに足を踏み入れている。それについていくのは多少厳しい。


 ちなみに春奈ちゃんのステータスは以下の通りだ。


◆◆◆

名前:九重 春奈

性別:女

年齢:16

種族:人間


レベル:167

攻撃:12988

守備:11232

魔力:7999

知力:14593

精神:12891

速度:10909


スキル:【金色の魔眼】

◆◆◆


 俺はてっきり剣術系のスキルを持っているからあれほど剣の扱いが上手いのだと思っていた。だが、そうではなかったらしい。


 スキルは【金色の魔眼】。効果は……。


【金色の魔眼】

・発動すると、視認した対象が生物であれば麻痺、アンデッドであれば浄化、魔法であれば魔法解除を付与する。発動すると、目が金色に輝く。


 チートすぎるというわけではないが、なかなか強力なスキルだ。なぜ春奈ちゃんはこれを配信で使わないのだろう。


 アーカイブも全部見たが、これを使っているところを見たことがない。


 うーん、なんでだろう。……まぁいいか。


「それでは配信開始は25層からで構いませんね?」


「あ、はい」


 やっべ、何も話聞いてなかった。推しの話を聞き逃すとか、一生の不覚だろ。


「あとは明日の10時からの実践打ち合わせで確認しましょう。コーヒープリンを食べ終わるまで少し雑談でもいかがです?」


「もちろん大歓迎です」


 ちなみにコーヒープリンは結構食べた気がしているが、3分の2ほど残っている。でかいんだけど……。


 春奈ちゃんはすでに半分以上食べ終わってる。早い。


「ありがとうございます。所で少し気になってたんですけど、配信外でもその衣装なんですね?」


「ああ、これは姉の趣味で……。こういう系しか外出用の服がないんですよ」


 マジで、クローゼットの中はゴスロリ服だらけである。しかもほぼ全部色が黒。ゴキブリか俺は。


「ご自身で服は買わないんですか」


「幼いころから姉だよりでして。服のセンスが何とも言えないんですよ」


 服のセンスがないは本当である。俺、男だったし?


「なるほど……。ではこの後私が少し服を選びましょうか? これでも少し自信があるんです」


 今の春奈ちゃんはポニーテルにキャップ、大き目のボトムスと、なんというかストリート系といえるファッションをしている。正直めっちゃ似合っててセンスいいなと思う。この人に選んでもらえるなら安心かもしれない。


「九重さんがよろしければ、是非」


 こうして、俺は初めて女子と二人きりで買い物に出かける事になった。……おい、童貞とか言うなよ?

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