第14話 SNSとコラボのお誘い

 家に着くと、姉貴が大事な話があると言って椅子に座らせて来た。大事な話ってなんだろうか。


「あなた、なりすましとかって知ってる?」


「そりゃまぁ。γでいうところの偽物みたいなものでしょ?」


 SNSサービス、γ。その中ではたまに有名人を騙る偽物がアカウントを作成していることがある。


 ……それがどうしたんだ?


「そこまで出てきて思い当たらない辺りあなたらしいね。SNSのアカウント、作る気なかったでしょ」


「え、まぁ、確かに?」


 自分でやるという発想が抜け落ちてた。見てはいるんだけどな?


「おかげであなたの偽物であふれかえってるんだよ。γが。もし誰かが騙されて被害が出ても困るし、アカウント、作成して置いちゃいました!」


「は、はぁ。大事なお話しってそれ?」


 あんなことがあった後だし、てっきり今後の探索者生活についてなにか言われるもんだと思ってたけど。


「SNSは大事なお話しでしょうが! 特に、私にとってね」


「ああ、確かに……」


 姉貴には世間にばれたらあまりよろしくない秘密があるもんな。


「とりあえず今後のアカウントの運営をあなたに引き渡すのと……あ、証拠の写真撮らないとね」


「ん、りょーかい」


 俺が写真を撮ってもらおうと身構えると、姉貴が肩を組んできた。まさかの二人で自撮りかよ!?


「これを私のアカウントでもあげればいいでしょ? もちろんあなたのアカウントの方から先にね」


「なーるほど。確かに」


 とりあえず俺は以下の文章と共に写真を俺のアカウントに投稿した。


『こんにちは。ダンジョン配信者の長麦 みいなです。本日からγの住人となります。お姉ちゃん曰く、今、私の偽物がいっぱいいるみたいなので、私が本物だと証明する写真を撮りました。隣の人はお姉ちゃんです。本日からよろしくお願いします』


 まぁ問題はない、だろう。


 すると、すぐにその投稿が拡散され始めた。最初は偽物疑惑のコメントが多かったがだんだん信じてくれる人や、姉が有名人だと指摘するコメントが増えてきた。


「うん、潮時だね。あ、そのアカウントもう私のアカウントと相互だから。外さないこと」


「はーい」


 確認してみると確かに相互になってた。姉貴のアカウントにはちょうど以下のような文章と共に今撮った写真がアップされていた。


『妹から許可取れたから妹と写真撮った!! 超かわいいでしょ?』


 許可を出した覚えはな……いや、りょうかいって言ったか。


 姉貴のアカウントのフォロワー数はなんと300万に及ぶ。その写真は一瞬で拡散されて、俺についても話題となった。


 そのおかげか、1時間立った後に見るとチャンネル登録者が40万人になっていた。すごいな、SNSって。


「いい感じだね。これで本物って証明もできたし、あなたのアカウントも軌道に乗るでしょ」


「そうだね。ありがとう、お姉ちゃん」


 本当に至れり尽くせりで助かるよ。さすがは配信者事務所を企業しようとしている人だ事。


 あ、そうだ。春奈ちゃんフォローしておこう。


「ん?」


 春奈ちゃんをフォローしたとたんに春奈ちゃんからDMが来た。


 何々?


 そこそこ長い文章だったが、用はSNSを始めたことに関するお祝いと、コラボのお誘いだった。


 うーん、コラボかぁ……。


 ……俺が、春奈ちゃんとコラボ!? もちろん返事はYESだ。


◇◇◇


 返事をした翌日。コラボの前日打合せで直接会うこととなったので、集合場所の札幌駅にいる。去年の12月に事件で大きく倒壊したが、もう完全に復旧しているな。


 俺が去年の事を思い出していると、待ちに待った人が現れた。


「お待たせしました。こうして会うのは初めてですが、長く話した仲のように感じますね」


「そうですね。よくコメントしてもらってますし。私もあなたの配信は良く見てます」


 俺達は互いに手を差し出して握手をした。


「改めまして、九重 春奈です。今日はコラボについての話合いということで」


「私は長麦 みいなです。どこか落ち着いたところで話ましょうか」


 カフェとかで話す感じかな。何というか、女子高生らしいというか。


 まぁ実際女子高生(俺はそういう設定)なんだけどな。


「私のおすすめのカフェにでも行きましょうか」


「いいですね。行きましょう!」


 というわけで数分歩いたところにある、「レインズ」というカフェに連れてきてもらった。SNSでよく映えそうなオシャレな店である。SNSを始めたわけだし、後でそれ用に写真を撮ろうか。


 店に入り、俺達は席に着いた。


「さて、打ち合わせ、しましょうか」


 うん、春奈ちゃん、やっぱかわいいわ。

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