第10話 収益化について

 2回目の配信を終えて家に帰ると、姉貴が拍手をしながら出迎えてくれた。なんかうちに家族がいるのは昔に戻ったみたいで少しうれしい部分があるな。


「お帰り! そしておめでとう! チャンネル登録者数10万人を突破しました!」


「ん? え?」


 そういえば配信を切った時にすぐボス部屋に人が入ってきたから何も確認せずに慌てて出て来たんだっけ。マジで10万人超えてるのか?


 ポケットからスマホを出してチャンネルを確認してみると、登録者数が10.8万人となっていた。


「わぁ」


「というわけで収益化、申請しておいたよ」


 そうだ、収益化な。なんかそうなったら貯金全部投げるとかいう怖いこと言ってた人がいるやつ。全財産を払わせるのはなんとしてでも止めよう。うん。


「ありがとうお姉ちゃん。チャンネルの事なんでもやってくれるね」


「ふふ、私はこれでも配信者事業を立ち上げようとしている者だよ? なんでもできるから」


 そういえばそうだった。もう一人の配信者って誰なんだろうな。少し気になる。


 ああでもそういえば、姉貴の知り合いに最高にインパクトがある人が1人いるな。あの人が配信を始めたら俺なんかよりも絶対に伸びる。


「そう言えば、お姉ちゃんが配信させようとしている人ってさ、もしかして連さん?」


「正解。なんでわかったの?」


 いやまぁそれは……姉貴含め姉貴の知り合いの中で一番インパクトのある人だから。彼、世界4位で日本2位の探索者だし。【光速】の名取なとり つらね。今時彼の名前を知らない方が珍しいまである。イケメンだし。


「だってあの人お姉ちゃんにベタ惚れだし、お姉ちゃんの願いならなんでも聞くかなぁって」


 ただそのイケメンが姉貴に惚れたという一つの情報で台無しである。正直言うとスキル的にもステータス的にも姉貴はゴリラだからな。


「何を考えているの?」


「ヴェ!? マリモ!?」


 舌を噛んだ。痛い。いえ、何もって言いたかったのに。


「まぁ連くんは私の大切な人だから無理はさせないけどね。あと、配信とかで私たちの関係を言わないこと。大炎上間違いなしだよ?」


 ……名取さんと姉貴は付き合ってる。身近に巨大な爆弾を抱えているような感じで少し怖い。名取さんってイケメンだからガチ恋勢とかいるんだよな。


 ああ、姉貴にもいたか。ゴリラだけど美人の部類だし。


「なんだって?」


「……」


 俺、口に出してないよね? これが【超人】の第六感……! 最高に厄介だ!


「まぁそこらへんの事はあなたが心配することじゃないわ。今はとりあえず配信に打ち込んで登録者を増やしてね。収益化ももうすぐすると思うから」


「りょーかい。これからも配信、頑張っていくよ」


◇◇◇


 翌日。収益化の申請が通るまでにやりたいことがあって俺は今1人でダンジョンに来ている。まぁ主にレベル上げ目的だな。


 視聴者さんたちの意見で適性帯での配信ということになったが……正直いって適性帯での配信は安定感に欠けると俺は思う。


 特に、俺は何故だか知らないが防御系統のステータスが最初から一切伸びていない。一撃喰らえばアウト、みたいな状況で戦うには適性帯は向いてない。


 そういうわけで、視聴者には申し訳ないがレベルを上げて適性帯を引き上げさせていただきます。配信は20層からだけど。


 今は配信関係なく、ただのレベル上げの狩りだ。最高効率でやっていこう。


 血液操作で現れた魔物の頭を的確に打ち抜いていく。20層の魔物でもこんなものか。


 ほぼ一日狩りを続けて、レベルはこうなった。


◆◆◆

名前:長麦 みいな

性別:女

年齢:13

種族:吸血姫


レベル:51

攻撃:7904

守備:2225

魔力:13765

知力:13598

精神:2289

速度:7875


スキル:【鑑定眼】【種族特性:吸血姫】

◆◆◆


 もう立派なAクラスだ。まだBクラス試験を受けてないのに。時間があったらBクラス試験を受けに行こう。


 後レベルが50になった時に防御系統のステータスが1000伸びた。これは地味にうれしい。


 魔物を大分狩ったから魔石も結構な数ドロップした。これを換金して、家に帰ってちょっと休もう。かなり長い間魔物の頭を打ち抜きながら移動し続けたから少し疲れた。


 体感的にはまだまだいけそうではあるが、疲れを感じた時点で撤退するのがダンジョンの鉄則だ。


◇◇◇


 そういうわけで家に帰って2日後。お姉ちゃんに叩き起こされた。


「まだもう少し寝てたいなぁなんて……」


 俺がそんなことを言うと、また頭をなでられた。なんで?


「そんなことを言ってる場合じゃないよ。収益化したんだから、発表配信くらいしてきなさい」


「そうなのぉ……」


 眠い目をこすりながら、いろいろと準備をする。ん、今姉貴収益化したって言ってたか?


「収益化後初の配信、頑張ってきなさい」


「わかった、頑張ってくる」


 11月18日。この姿になってから早半月。まさか収益化した配信者になろうとは。


 さて、今日も配信、頑張りますか。

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