第8話 2回目の配信

「どうも皆さんこんにちは。ダンジョン配信者の長麦 みいなです。今日は昨日に引き続き、3層から、ダンジョンの攻略をしていきたいと思います」


 配信開始のボタンを押して、俺はカメラに向かって挨拶をする。とりあえず3層から今日は初めて、4層と5層の攻略までいったら配信終了って形かな。ちなみに5層はボス部屋です。


:待ってました!

:今日もカワイイみいなちゃん

:連日最高~


 開始時の同時接続数が昨日のアーカイブが伸びて登録者が3万人になっていたおかげか、1900人もいる。結構緊張するな。


「早速3層の攻略に……と行きたい所なんですが、なんとすでに4層行きの階段見つけちゃいました。ウルフとの闘いをこれ以上お送りするのもどうかと思いますし、先、進んでもいいですか?」


 正直3層でウルフとかいう雑魚を狩るのには飽きたからな。できるだけ早めに配信の方でも先に進みたい。階層飛ばしてお送りってのもなんか違うからな、俺だけの感覚かもしれないけど。


:ラッキーじゃん

:みいなちゃんなら余裕だと思うし、先いこ!

:気を付けて下さい!


 よし、視聴者さんたちもOKって言ってるし、行こう、4層。


「それでは先に行かせてもらいます!! れっつごー!」


 俺はそう宣言して、ダンジョンの階層を跨ぐ階段を下った。


:おい、今の聞いたか? かわいすぎだろ!

:切り抜き期待

:これはカワイイ


 4層で出てくる魔物はゴブリンの強化種。武器持ちゴブリンだ。魔物はS~Fの間でクラス分けされているが、その中でもEクラスにあたる最弱よりは一歩先の魔物だ。ちなみにウルフ、ゴブリンは共にFクラスにあたる。


「よーし、ここからがダンジョンの本番です。気を引き締めて参りましょう」


 ここら辺から敵の殺傷力が上がってくるからな。武器持ってるわけだし。


:怪我しないでね

:みいなちゃんなら大丈夫! 頑張って!


 視聴者からの応援の言葉を見ていると、前から武器持ちゴブリンが1体現れた。あれは、剣持ちゴブリンだな。


 ……なんだろう。心なしか顎がとがっているように見えてきた。


「剣相手なら、私も剣かな」


 俺は手元に血の剣を形成する。そしてちょうど、剣持ちゴブリンがこちらに気づいた。


「ゲギャーー!!」


 俺が今ロリ体型をしてるからか、それとも女だからか、ゴブリンはうれしそうに武器を振り回しながらこちらに走ってきた。


 なんかきもいし隙だらけだったので、俺は一撃でゴブリンの首を跳ね飛ばした。


「……きもい」


 そう言って俺が冷ややかな目線を消滅していくゴブリンの死体に浴びせていると、コメントの流れが加速した。


:今のゴブリンきもすぎるww それはそれとしてきもいってもう一回言ってもらっていいですか

:罵倒してください

:呪物湧いたw


 やばい、視聴者たちの中にもなんかちょっとな人達が混ざってる。無視しとこ……。


 しかし呪物とは、言い得て妙だな。


「はぁ……とりあえず、次行きますよ」


 俺が先に進むと2体目の武器持ちゴブリンと遭遇した。今回は弓持ちゴブリンだった。


 弓を持つにふさわしく、早めにこちらに気が付かれた。


「ゲギャー!」


 こちらに向かって矢を放ってくる。まぁ……止まって見えるほど遅い矢だからどうってことは無いな。


 今回の層では相手の武器ごとに自分の対応を変えるってのがマイルールだ。しかし弓は血で再現できないので魔法で再現させてもらおう。


「『雷の矢ライトニング・アロー』」


 はじける雷の矢が目に見えぬ高速で弓持ちゴブリンに直撃する。弓持ちゴブリンは黒焦げになってはじけ飛んだ。


 ちなみにこの魔法が俺が今使える魔法の中で最も弾速が早いものになる。


:えげつないよみいなちゃん

九重 春奈:これ私より強いんじゃありませんか?

:雷の魔法、やっぱパネェ


 コメントでは雷魔法に対する畏怖が多く見受けられる。って……え?


 九重 春奈って、あの春奈ちゃんか?


:春奈ちゃんいて草

:本物じゃないか


 本物なのか! これは挨拶しておかないと!! 推しに認知してもらうチャンスだぞ!


「九重 春奈さん、いつも配信見てます! まだまだBクラスにもなってませんから、全然およびませんよ!」


 マジでこれはそう。春奈ちゃんはAクラス。今の俺よりは数段強い。


:みいなちゃんうれしそう

:マジで配信見てるんだろうな

九重 春奈:それはそうととてもカワイイのでチャンネル登録しておきました


 え゛!? マジかよ配信者やっててよかった!!


「本当ですか! うれしいなぁ~」


 喜んでいると、曲がり角から斧持ちゴブリンが出て来た。斧か。この体型で斧は使いたくないし、今は超絶気分良くて邪魔されたくないから瞬殺させてもらおうかな。


「『氷柱の棺アイシクル・コフィン』」


 斧持ちゴブリンの回りを小さな氷の結晶が舞い、その範囲が一瞬にして氷に封じ込められる。氷柱のように見えるその巨大な氷は数秒後、斧持ちゴブリンごと砕け散った。


「よし。おはなしの邪魔しないでね」


 しかし、魔法、マジ便利だな~。


:待って、なにあれ!?

:さらっととんでもない魔法使いやがったぞ!?

九重 春奈:!?!?!?!?


 あれ、春奈ちゃんも驚いてる。なんかまずったかな?

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