第5話 初めての配信

 ついに配信を始めてしまった……。とりあえずまずは挨拶からだよな。


「皆さん初めまして。本日からダンジョン配信をしていきます、長麦 みいなと申します。こう見えても高校1年生なのでそこらへんは心配しなくても大丈夫です。では、早速敵を探しに行きたいと思います」


 こんな感じでいいかな。ちなみに高校1年ってのは嘘じゃないぞ。ほんとは13だけど。


 今年の冬休みが終わってから転校扱いという形で高校に通うことになっているから本当に高校1年生だ。……姉貴のせいで。


 まぁ初めての配信だし、どうせ視聴者もろくにいないと高をくくった俺はそのままコメント欄等を見ずにゴブリンを探しに向かった。


 まぁゴブリンなんてダンジョンの一層にはうようよいるので、すぐに見つかった。


「それではゴブリンを倒していきたいと思います。えーと、私は魔法が使えるので、魔法を使って倒していきたいと思います」


 配信してから一番最初の魔物……いわば掴みの魔物なのでインパクトのある魔法がいいな。


 一番インパクトのある魔法ってなんだろうなと考えた結果雷魔法がいいという考えに落ち着いた。


 というわけで……。


「『雷球サンダーボール』」


 俺はゴブリンに向かって雷の球を打ち出した。まぁ一度試しているから結果はわかっているが、ゴブリンはなすすべなく黒焦げになった。


「ゴブリンが倒せましたね。ゴブリンは余裕だと思うので、階層を降りてみようと思います」


 通常、ダンジョンは階層が別れており、階層を降りるごとに敵が強くなっていく。あと一定階層ごとにボスが居たりする。


 稀に洞窟型ダンジョンのような階層の堺が存在しないダンジョンもある。


 というわけで俺は一階層降りて二階層にやってきた。ここではゴブリンが複数で出てくる。


「この階層からゴブリンが複数出てきますね。まだ基礎以外の魔法は習得していないので、複数のゴブリンとは別の力を使って戦っていきたいと思います」


 基礎の魔法、魔法球系の魔法は単体攻撃。対多数の魔物と戦うには少し効率の悪い部分がある。


 それならば直接血の剣でたたくのが効率的だろう。


 二階層にやってきてすぐ、4体のゴブリンの群れと遭遇した。


「それでは戦っていきます」


 俺には一つ、やりたい事があった。この間みたアニメで、俺と同じように血液を操れる人が行っていた血を出す方法。


 俺は手を噛み、歯を突き立て、血を出す。


 その血を操作し、血の剣を形成する。


 そしてゴブリン4体に肉薄。最初の一太刀でゴブリン1体の首をはね、返す刃で2体目のゴブリンの胴体を斜めに大きく切り裂く。


 そこで残り2体のゴブリンが俺に敵意をむき出して攻撃を仕掛けようとしてくるが、俺は血液操作で剣を分解。2体のゴブリンの頭に向かって的確に血の弾を飛ばした。


 血の弾は2体のゴブリンの頭を貫通し、命を奪う。


「ゴブリン4体でも問題ありませんね。とりあえずもう少し継続してゴブリンと戦ってみましょう」


 そういって他のゴブリンを探しに行こうと思ったとき、少しふらついた。


 なんだと思って少し考えると、すぐに原因に思い至った。貧血だ。魔力を血液に変換して補充するのを忘れていた。


 すぐに魔力を血液に変換して、ゴブリン探しを再開した。


 まぁゴブリンを探すのに苦労なんてするはずもなく、すぐに次のゴブリンと遭遇した。


「次は少し乱暴に行きたいと思います」


 毎回剣を生成とか面倒な気がしてきたからな。ゴブリン等という雑魚ならこれでも倒せるだろ。俺は再び手を噛んで血を出すと、それを血液操作で小さな球体状に変える。


 そして、超高速で射出した。銃の劣化版見たいなものである。


 血の弾は遭遇した3体のゴブリンの頭を的確に打ち抜いた。


 使用した血は魔力で補充する。この魔力の血への変換、マジで消費魔力量が少ない。今後のメイン戦術は血液操作になるかもな。


 ……まぁ魔法の方が効きが良い敵とかもいるだろうからそこは臨機応変に対応だな。


「ゴブリンでは相手になりませんね。3層、行ってみましょうか」


 3層からはウルフという素早さに優れた魔物が出てくる。ここから躓く探索者も多いと聞く難易度の変化がある場所だ。


 まぁ前の俺はここで躓くことはなかったけど。


 このダンジョンの地図は把握しているので、3層に降りる階段の元へ向かう。途中、出て来たゴブリンは血の散弾で殲滅した。


 というわけで3層に行きます。あ、その前にコメント欄でも見ておこうかな。多分そんなに人いないだろうけど。


 俺はスマホを取り出して配信の管理画面を開いた。すると、そこには信じられない文字があった。


「同時接続数、2400……?」


 無名の配信者の初配信としては異常な数だ。何が起きた? コメント欄見るか。


コメント

:お、気づいたぞw

:みいなちゃん見てるー?

:みいなちゃんかわいいぞ~

:みいなちゃんサイコー!


 なんだこのノリ。なんかちょっと恥ずかしいぞ……。


「あっどうも皆さん。たくさんの人が見ていらしたんですね……」


 俺はてっきりいても数人だと思ってた。なんでこんなにいるんだよ!!


コメント

:カワイイので見てます

:推します

:というか普通に強いよねみいなちゃん。Bクラスとかだったり?


 コメントが流れるのが早くて読めない……。こんなのを読んでたのか九重ちゃん。尊敬だなぁ……。

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