第4話 新たな力

 俺はダンジョン配信を行うことに決定したが、その前にはまず変わってしまった俺自身の力を把握することが必要だ。


 というわけですでにダンジョンに入っている。実験を始めようか。


 とりあえず鑑定した際に一番上に来る効果から試していこう。


 一番上は……自分より身分の低い吸血鬼に対して絶対的な命令権を得る、か……。


 これ吸血鬼が他にいないから調べようがないな。吸血鬼の発見例とかめちゃくちゃ稀だしもう全部討伐済みってことだ。次いこ次。


 日光を完全に克服する。秋晴れの中歩いてダンジョンに来たんだから当然の話ですね。ハイ次。


 十字架を完全に克服する。これはまぁ十字架なんてものは持ってないし試しようがないな。


 次の銀を少しだけ克服するも同様に銀を持っていないので調査不可だ。


 吸血を行うと一時的にステータスが極増……これも無理だな。というかこれをやれば逮捕の自信があるので封印である。


 吸血を行った相手を吸血鬼にできる……論外。次!


 肉体の再生速度が上昇する。ようやくまともに調べられそうなのが来たぞ。案外まともに使える能力がなくてひやひやしてたから、この能力に期待だな。


 俺はサバイバルナイフで自分の指を少し切ってみた。少量の血が手を伝うも、それを拭い去ると、傷口は見当たらなかった。


 ……再生速度の上昇はどうやらかなりのものらしい。でも血液操作するのにこれじゃあ少し困らない?


 お次は翼を生やして飛翔だが……。今はやめておこうと思う。この服がもし破れるようなことがあれば姉貴にどつかれてしまう。4~5万かかってるらしいからな。


 ちなみにあの後姉貴がさらにゴスロリ服を買い足したのでかなりの数クローゼットに埋まってます。合計で100万近く使ったんだったかな?


 まーじで今できる事が少なすぎる。案外変わってないかもしれないな。


 というわけで次。血液操作です。


 もう一度、今度は手首をナイフで切って血を出す。そしてそれを動かすイメージをする。すると、流れ落ちた俺の血は踊るように動き始めた。


 そして、血液を操作している間は傷口がふさがらないことも分かった。便利。


 俺は血を動かすイメージを強め、剣を形づくらせてみた。すると、しっかり握れる血の剣が完成した。


 その血の剣でダンジョンの壁を斬りつけてみると、まるで金属同士がぶつかったかのような音が響き渡った。


 ……俺の血は金属だったのか? どうやらイメージによって相当無法な事ができるらしい。これは実験してよかったと思う収穫だな。


 次。これが一番の期待だ。


 【全属性魔法】。まずは火魔法から試して見ようか。適当に的になりそうな魔物を探していると、ゴブリンと接敵した。よし、お試しだな。


「『火球ファイヤーボール』」


 俺が射出した火の玉はゴブリンを一撃で黒焦げにした。


 これが、魔法か。すげぇな!


 テンションが上がった俺は、急いで次の的を探した。ゴブリンは数が多いのですぐに次の実験台が見つかった。


「『水球ウォーターボール』」


 水の球体が飛んでいき、ゴブリンに直撃、数m吹き飛ばした。余りの威力にゴブリンは一撃で絶命したらしく、そのまま消えて行った。


 魔法、普通に強すぎないか?


 こうなる前の俺の努力は一体何だったんだろうか。鑑定眼とステータスだけでBクラスまでのし上がった努力は。


 まぁいいか。今はこれが俺の力だ。


 その後も風、土、氷、雷、光、闇と実験を重ねたが、明らかに光魔法の威力が低く、闇魔法の威力が高い傾向にあった。


 つまり、適性的にいうなら、この体は光魔法の才能は余りなく、それ以外の才能は普通、闇魔法にはかなりの才能があるといった感じだろうな。


 これからは光以外の魔法を主体で伸ばしていこう。


 最後に耐性だが……。わざわざ敵の魔法を受けたくもないので、パスさせてもらう。まず、魔法を使ってくる魔物ってのもダンジョンの浅いところじゃ多く無いんもんな。


 これで能力の検証は以上だ。


 思った以上に収穫が少ない。……というか今できないことが多すぎる。まぁそんなもんかもしれないが、自分の能力は一度試して知っておきたいものなのだ。


 それが生存率につながる場合もあるからな。


 今度時間があったら条件を整えて実験をしてみるのも悪くないかもな。


 ……さて、それじゃあ初めての配信の用意でもしますかね。


 まずは声のコンディションを整えて。


「あ、あ。こんな感じで大丈夫かな」


 やっぱまだ違和感あるんだよなあ。


 言葉を口に出すときは女の子らしく柔らかい言葉を。これ、大事。配信者ってのはイメージ商売だからね。


 その後、俺はスマホで様々な設定を操作して、後はボタンを押すだけで配信開始の状況まで持ってきた。


 すでにドローンは俺を撮影しながら周りを飛んでいる。


「よし、初めての配信、頑張るぞ……!」


 決意を新たに、俺は配信開始のボタンを押した。

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