第3話 視線が気になる

 数時間後。俺は姉貴にゴスロリ服のまま外に連れ出されていた。


 札幌というある程度の都会では人の往来が多く、異質な格好をした俺はかなりの注目を浴びた。


「ねぇ、あれヤバくない?」


「コスプレかなぁ? 完成度やばぁ」


 今日は11月6日月曜日。今は午後4時なので、帰宅途中の高校生等も多く見受けられる。その視線が全て、俺に向けられるわけだ。はっきり言って視線に慣れていない俺にはキツい。


「姉貴、俺帰りたい」


「だめ。早いうちにいろいろ手続きしないといけないんだから、しばらくはこの忙しさを覚悟しておきなさい」


「うぇ!?」


 そんなこんなで様々な手続きのため俺は一週間ほど連れまわされた。


◇◇◇


 この一週間、本当にいろいろあったなぁ……。マジで姉貴のおかげで手続きが早くすんだ感がありすぎる。Sクラス探索者としてかなり高い信頼度があるからかな。


 この一週間であったことといえばこんな感じか。


・長麦 勉は行方不明ということになった。

・長麦 勉の財産は全て姉貴に相続された。

・俺は長麦 みいなとして長麦家に籍を入れることになった(複雑だが、姉貴との間柄が義妹といった形になる)。

・俺は戸籍的には16歳ということになった(肉体年齢は13だけどな? そうしないと探索者できないから……)。

・俺はこのまま姉貴の所持に変わったこの家に住むことになった。

・スマホが新しくなった。

・銀行口座とかも新しく作った。

・来年一月から高校に通うことになった(これが一番謎)。


 これ以外にもまだあるんだけど、めぼしいのはこれぐらいか。


 本当にいろいろあった。特に名前とか学校の件とか。ほぼ姉貴が強引に決めたからなぁ。


 正直この馬鹿目立つ容姿で高校生活とか考えたくもない。前はいろいろ普通だったからなぁなぁで何とかなったけどな。


 そういえば探索者証も新しくなったから俺は今Bクラスではない一般探索者である。早めにBクラスになりたいし、とりあえず今日この後はダンジョン行きだな。


 いろいろ終わってリビングでくつろいでいる姉貴に外出の連絡をしておこう。というかもういろいろ済んだのに何でうちにいるんだよ。さっさと帰ってくれねぇかな。


「姉貴、とりあえず俺はダンジョンにいってくる」


「行くって言いだすとは思ってたけどもう行くのね。渡すものあるから少しまってなさい」


 渡すもの? なんだ? 新しい武器とかか? そういえば前まで使ってた剣この体じゃうまく使えないだろうな……。まぁ今は魔法があるから心配はしてないんだけどな。


 少し待っていると、どこからか姉貴が最新型のドローンカメラを持ってきた。え、まってここ俺んちなんだけど。どっから持ってきた?


「その口調をまず直して……せっかくだから配信もしてきたら?」


「え?」


 配信ってそんな気軽に始められるものだったっけ?


「もうアカウントも用意してあるしね~。さすがに配信作業くらいは自分で出来るでしょ?」


「確かにできるとは思うけどさ。視線結構緊張するんだよ」


 最近外での視線が案外痛くて自覚したんだよな。俺昔は視線感じたことなかったけど今は結構、な?


「配信は直接視線を感じるわけじゃないんだから別に良いでしょ」


「まぁ……確かに?」


 確かに少し気になってはいたしな、配信。やってみようか。とりあえずは姉貴に言われた通りに口調をなんとかしないとな。


「姉貴、俺口調どんな感じにすればいいんだ?」


「うーん……なんだろう。普通に女の子っぽい感じにすればいいんじゃないの? 私みたいな?」


 姉貴みたいな感じに、かぁ。姉貴って女の子っぽいって言えるのか?


「うーん……よし、一人称私で語尾も優しめに行こうと思う。これから私はこんな風に話すよ。……こんな感じでどうかな?」


「いいんじゃない? その容姿でのしゃべり方の違和感は消えたから」


 今までしゃべり方に違和感あったのか。まぁそうだよな。見た目と中身が一致していないわけだから。


「さて、それじゃあダンジョン探索、行ってこようかな……」


「いってらっしゃい。まずは自分の今の能力を把握してから配信しなよ~」


 ……俺の能力が変わったこと、知ってたのか。


「知ってたの? 私の力がいろいろ変わったこと」


「なんとなくね」


 さすがは【超人】スキルの持ち主だ。確かにわかってもおかしな話じゃないな。


 ああ、【超人】の詳細鑑定、久しぶりに見ておこうかな。ちょくちょく効果変わってたりするしこのスキル。


【超人】

・自身への物理攻撃のダメージを99%軽減する。

・自身への魔法攻撃を完全に無効化する。

・戦闘時、または移動時、自身の攻撃ステータス、速度ステータスが10倍になる。

・飛翔を可能とする。

・第六感を飛躍的に向上させる。


 さすが26名のSクラスのうちの1人。マジで理不尽すぎるだろスキルの効果が。姉貴より強い奴が12人も日本にいるってのがさらに謎だけど。


 ちなみに少し前まで物理攻撃のダメージ軽減は95%でした。今99%ってことはいずれ物理も無効になるのでは? 敵からして見れば物理も魔法も効果ないのクソすぎる……。唯一毒などの状態異常は効果あるが、姉貴は状態異常回復ポーションを100本以上マジックバックに入れて持ち歩いてるからな。


 果たして俺はこれに追いつけるのだろうか。

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