第2話 配信やる?

「まぁあんたがなんかを飲んで色々あって女の子になっちゃってある程度強くなったのは理解したから、とりあえず少しまってなさい」


「あ? ああ」


 姉貴は謎の理解力を発揮した後、そのままうちから出て行った。待ってろってどういうことだ? 何かありそうだしスマホでも見ながら待ってるか。


 最近俺は酒を飲みながら若い子がダンジョン探索の様子を配信しているのを見るのにはまっている。皆カワイイし、強いからな。特に俺はAクラス探索者の九重 春奈ちゃんの配信はいい。安全マージンがしっかりしていて、安定感がすごい。


 カワイイし見てて飽きなくて参考になる。最高の配信じゃないか。というわけで待ってる間は九重 春奈ちゃんのアーカイブを見ながら姉貴を待ちます。


『この魔物は弱点の属性が二つあります』


 画面の中の春菜ちゃんが魔物と会敵し、解説しながらその討伐を始める。


 あの魔物はBクラスの魔物で俺だと倒すのに少し苦労するレベルだ。しかし、春奈ちゃんは一撃も喰らうことなく、魔物にダメージを蓄積させていく。


 ステータスに頼った戦いではなく、圧倒的な技術でなされるそれは何度見ても飽きがこない。


『討伐完了です』


 ついには魔物に何もさせることなく討伐を完了させてしまった。まぁ、ソロだったらそれはマストではあるが、それでもすごい。さすがはAクラスだ。


『では次の魔物の討伐に移りたいと思います』


 春奈ちゃんの配信を見てて面白いのはここだ。圧倒的な効率の良さ。参考にもなるしな。


 それから一時間ほど見続けていたところ、ドアが開く音がした。お、姉貴帰ってきたな。


 姉貴を玄関まで迎えに行こうと立ち上がろうとした瞬間、気づいた。服がぶかぶかすぎる。これじゃあ歩けない。


 考えてみればそれもそうだ。俺の体は今女子中学生レベルのものなんだから成人男性用の服を着ていて大きくないはずがない。


「いろいろ買ってきたわよ。で、あんたはそれ何してんの?」


「いや、ちょっと服がでかくて」


 部屋に入ってきた姉貴は俺の様子を見て困惑の表情を浮かべた。


「あんた今気づいたのね。とりあえず服は買ってきたから着替えなさい」


「ああ、了解」


 どうやら姉貴が服を買ってきてくれたらしい。非常に助かる。


「はいこれ」


「……ちょっとまて、これを俺に着させるつもりか?」


 姉貴が出してきたのは女児向けのゴスロリ服だった。間違いなく元成人男性に着させるものではない。


「当然。あんた鏡とか見てないの?」


「見てないな」


 そういえば今の俺はどんな容姿をしているんだろうか。気になるな。


「じゃあ見てきなさい。きっと驚くわよ」


「見てみるか」


 俺はスマホのカメラをインカメに変えて自分を映してみる。


 ……なるほど。これは驚くな。長い銀髪に赤い瞳。儚さを感じさせる幼くも美しい容姿。アニメの世界からそのまま飛び出してきたようだ。正直ゴスロリは似合うだろうな。


「驚いたでしょ?」


「これは確かに、驚いた」


 余りにも常人離れしすぎな容姿だ。よく見れば吸血鬼らしくしっかり犬歯もとがっている。


「私が今までみた中で一番かわいいんだから……今後は気を付けて街を歩かないとね?」


「……確かに?」


 別にステータス上はBクラス並み以上はあるわけだし、危険はないと思うけどな。


「それじゃあ早く着替えて」


「いくら容姿が優れていても抵抗しか感じないが」


「いいからいいから」


 結局姉貴の押しに負けて着る事になってしまった。しかし……着方がわからん。


「姉貴、やっぱり着方がわからないから着なくていいか?」


「これしか買ってきてないけど?」


「嘘……だろ?」


 これ着るしかないじゃんか。で、どうやって着るんだ?


「仕方ない。私が着させてあげる」


「いや、それは流石に抵抗が」


 しかし着方も全く持って予想がつかん。どうするんだこれ。あ、後下着とかマジでわからんぞ。


「諦めなさい。一回着てしまえば慣れるわよ」


「くっここまでか……」


 そういうわけで姉貴にいろいろ教えてもらいながら着替えた。次からは絶対自分で着替えてやるからなぁ!


「いいじゃん。超かわいいよ」


「実感わかないな。自分の事だと」


 俺は今正直容姿よりも戦闘能力の方が気になってるしな。


「そうだ、あれやってみれば?」


「あれ?」


 あれ、とは何だろうか。すでに姉貴は老化が始まっているのかもしれない。


「あ、そうだ! ダンジョン配信者? 今流行りなんでしょあれ」


「あー確かに流行ではあるけど……」


 俺が、ダンジョン配信者? 成人男性の配信を見たってなにも……ああ、今は銀髪赤目の女児か。


「その容姿だったら絶対売れるでしょ。私ほど強くないにしても」


「姉貴レベルで強いなんてなかなかないんだから勘弁してくれ」


 姉貴はSクラス探索者の1人で、はっきり言って規格外の強さを持ってる。こんなのがポンポンいたら日本が終わるレベルの強さだ。ちょっとステータス見てみるか。


◆◆◆

名前:長麦 心寧

性別:女

年齢:22

種族:人間


レベル:209

攻撃:12987

守備:13683

魔力:8975

知力:8867

精神:12111

速度:11567


スキル:【超人】

◆◆◆


 やっぱ化け物だわ姉貴。


 ……とりあえず、ダンジョン配信者、検討しておこうかな。

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