TS吸血姫のダンジョンストリーム

ニア・アルミナート

札幌ダンジョン・配信事務所編

第1話 「スキル覚醒ポーション」

 いつものように宝箱から出て来た黒いポーションを廃棄しようとして思いとどまった。鑑定の結果がいつもとは違うものだったからだ。


 いつも廃棄しているのは黒いなんの効果もないポーション。鑑定しても、【ポーション(効果なし)】としか表示されない。


 しかし、今回俺が廃棄しようとしたものの鑑定結果はこうだ。【スキル覚醒ポーション】。名前からしてそそられるじゃないか。詳細鑑定をしてみようか。


「『鑑定』」


【スキル覚醒ポーション】

・使用者に新たなスキルを一つ、目覚めさせる。その際、使用者の不利になるようなスキルは生成されない。


 なんとまぁ夢のようなアイテムじゃないか。このダンジョンが現れた現代に置いてスキルは1人1つ。俺の場合は今使っている【鑑定眼】だ。


 これに加えて新しいスキルが一つ、手に入るわけだ。しかも使用者の不利になるスキルは何もないと来た。【不死】スキルを引いて即アンデット化とかもしないわけだろ?


 最高じゃないか。家に持ち帰って早速使おうか。


◇◇◇


 というわけで家に帰ってきた。酒と一緒にポーションを飲もうと思う。


 まぁまずポーションを飲む前にビールを一杯。


 Bクラス探索者になってから引っ越した無駄に広い部屋に酒の缶を開ける音が響く。この感じ、最高だね。


 俺はビールをグラスに移して、一口呷る。


「くぁ~! 最高!」


 知ってるかお前ら。ビールってグラスに移すだけで味が変わるんだぜ。


「さて、飲んでみるか。このスキル覚醒ポーションとやらを」


 酒に酔って気分が良くなっていた俺はその黒いポーションを一気に飲み干した。


 そして……。


「お? 酒飲んだの、よくなかったか……?」


 凄まじい眠気を感じ、床に倒れこんだ。


◇◇◇


 ……お、意識が浮上してきた感じ。だいぶ寝た気がするな。さて、どんなスキルゲットしたか確認するか~。あれ、俺布団入ったっけ? 記憶ねぇや。


「あのバカ、こんな小さい子置いてどこ消えたのよ。……誘拐とかじゃないよね?」


「んぁ?」


 布団を押しのけ目を開けると、姉貴が部屋のソファーに座っていた。つーか誰かと話してんのかな。


「あ、起きた? 君、この家に住んでる男の人って人知ってる?」


「何言ってんだ姉貴。俺に聞くかそれ……ん?」


 一瞬姉貴が狂ったのかと思ったが、そうではないらしい。俺の声が全くの別物になっていた。俺は自分自身に鑑定をかける。


◆◆◆

名前:長麦 勉

性別:女

年齢:13

種族:吸血姫


レベル:1

攻撃:1904

守備:875

魔力:2765

知力:2598

精神:1289

速度:1875


スキル:【鑑定眼】【種族特性:吸血姫】

◆◆◆


 ツッコミどころしかないステータスだな。言及するところが多すぎて困る。まず性別な。女になってるし。年齢も。酒飲めねぇじゃねぇか。


 まぁおそらくこれは種族が吸血姫に変わった影響だろうなぁ。


 そしてレベル。俺の元のレベルは135だったはず。それが1に戻されていますと。


 しかし、しかしだ。ステータスは守備と精神以外ほぼ下がっていない。むしろ魔力と知力に関しては上がっている。


 これは素直にめっちゃうれしい。あと【種族特性:吸血姫】ってなんだ? 詳細鑑定にかけよう。


「『鑑定』」


「それは勉の……まさか……」


 姉貴がなんか言っているが、まぁ今は無視でいいか。詳細鑑定の結果は以下の通りだ。


【種族特性:吸血姫】

・持ち主の種族を吸血姫に変更する。そして、以下のスキルを内包する。

・【真祖吸血鬼】【血液操作】【全属性魔法】【全属性魔法耐性】


 ……まって、めっちゃえぐいスキル手に入れたぞ? 内包しているスキルとやらの効果も確認してみようか。


【真祖吸血鬼】

・現在の位【姫】

・自身より低い位の吸血鬼に対し、絶対的な命令権を得る。位は【王】・【姫】→【公爵】→【侯爵】→【伯爵】→【子爵】→【男爵】→【一般吸血鬼】のに低くなる。

・日光を完全に克服する。

・十字架を完全に克服する。

・銀を少しだけ克服する。

・吸血を行うとステータスが一時的に極増する。

・吸血を行った相手を吸血鬼に変えることができる(任意)。

・肉体の再生速度が上昇する。

・翼をはやして飛翔が可能となる。


 いや多い多い。効果多すぎだって。後銀だけ地味に克服できてないの何?


【血液操作】

・血液を操ることが可能。魔力を血液に変換することも可能となる。


 うん、シンプル。こういうのでいいんだよこういうので。というかなぜこれが真祖吸血鬼に複合されていないのか疑問なんだが。


【全属性魔法】

・火、水、風、土、氷、雷、光、闇の魔法を扱うことができるようになる。


 ……何気、これもとんでもないやばさをしてるぞ。少し前に言ったが、この世界は基本的にスキルは1人1つ。基本は一属性の魔法しか扱うことができないからな。その中で俺は全部の属性を使うことができる。ずるだな、はっきり言って。


【全属性魔法耐性】

・火、水、風、土、氷、雷、光、闇の魔法の影響を75%軽減する。


 75%!? 普通の耐性系は50%なんだが? これもぶっ壊れといえるな……。


 総評として、俺これぶっ壊れスキル引きましたね。これはお酒が飲めないのも許せる……か?


「それで、考え事は終わった?」


「ああ、姉貴。で、なんでうちにいるんだ?」


「あんたが3日間返信寄越さないからでしょうに。まぁ何があったかは大体予想つくんだけど……」


 さすがはSクラス探索者の姉貴だ。思考速度もかなりのものか。俺からしてこの状況はなかなか理解不能の状況ではあると思うんだけどな。

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