KANが死んで悲しい

加藤 良介

KANが死んで悲しい

TVのニュースでKANが死んだと聞いた。

その瞬間は「嘘だろ」という驚きが大きくて、特に悲しくはなかった。

仕事帰りの車の中。

KANのアルバムをかけた。

私が最初に買った「野球選手が夢だった」を流す。

最初の一曲目は「愛は勝つ」

大好きな曲だけど、特に心は動かない。

やっぱりいい曲だなと思っただけだ。

だけど、二曲目「恋する二人の834km」が車の中で鳴り響き、自然と口ずさむ。

駄目だった。

声が引きつって歌えない。

悲しいとか、切ないとか、そんな感情ではなく、名状しがたい何かに襲われた。

ああっ、もう、KANはこの世にいないのだなと、理解してしまった。

涙は流れなかったけど、たぶん泣いていた。

その後は、車外まで響くような爆音で、曲を流しながら家路についた。

外は雨だった。



           終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KANが死んで悲しい 加藤 良介 @sinkurea54

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る