第30話
今日は、あの負の連鎖を断ち切るべくあてもなく街をさまよっていた。否、迷子になっていた。
いや、だってね、裏道一本入っただけでまさか迷子になるとは思わないよね、普通。なんか道を進んで行くうちにどんどん治安が悪そうな感じになってきたんですけど。おまけに、スマホの充電が切れていた。なんか冬ってバッテリーの減りが早い気がするんだよね。
道も分からないまま、ただ真っ直ぐに進んでいると、声をかけられた。
『そこのお嬢さん、あなたは何かに迷っていますね。』
声のした方を見ると、あからさまに詐欺ですみたいな占いの館があって、顔は見えないけど美人そうな人がいた。怪しすぎるけど、とりあえず今はここから抜け出したいので、話しかけてみる事にした。
『はい。道に』
『......え?道ですか?』
『そうです。道に迷ってます。出来れば大通りに出たいんですけど、どっちに行けばいいですか?』
『それなら、そこを右に曲がって突き当たりまで行ったら左に........。ってそうじゃなくて』
『人生に迷っていますね!』
『いえ、迷ってないです』
『..........ずばり、それは人間関係ですね!』
『.........話、通じないですね。』
なんかこの人ポンコツそうだな。大丈夫かないろいろと。
『あなたの悩みを解決して差し上げますので、どうぞこちらへおかけ下さい』
胡散臭いけど、悩んでいるのは事実なので聞いてみる事にした。気軽に人生相談できる人もいないしね。
『では、どのような事について悩んでおられるのですか?』
『えーっと、......』
具体的に話すとややこしくなるから、うまく掻い摘んで話そうか?いや、どうやったら同居人と平和に暮らせますか?とか。聞き方が難しすぎる。
『.....恋人の事なんですけど......。』
『なるほど』
『どうやったら、束縛が緩くなりますかね?』
『んー。安心させるような事をすれば良いのでは?例えば普段からスキンシップを増やすとか』
確かに恋人としてはそれがベストだろう。だがしかし、私たちの関係は同居人であって恋人ではない。
『他の方法とかは』
『無いですね』
『えー』
この人ほんとに占い師なのかな?てか、普通に人生相談してるだけじゃん。占いで見て貰えばいいんだ。
『占いで見てもらうことはできるんですか?』
『....あ。出来ますよ』
絶対忘れてたやん。
『じゃあ、お相手の方のお名前を教えて下さい』
『寺島榊です』
『................え?』
『................え?』
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