第23話

観覧車に乗った私たちは、しばらく無言の時間を過ごしていた。


『..............』

『..............』


『.......隣、行っても良いですか?』

『いいよ』


隣に来た乃々華ちゃんは、そっと私の肩に頭を乗せた。


『ほんとは今、アイドルのお仕事をお休みさせて貰ってるのは、私のワガママなんです。』

『もっと友達と遊びたい、休みたい、自由に外出したい』

『もう、アイドルなんか辞めたい。どうしたらいいですか?』


『そうだねぇ、どうして乃々華ちゃんはアイドルになりたいと思ったの?』

『昔、アイドルのライブに行ったときにステージの上で歌って踊っていた人たちに憧れたんです。』

『私も、あんな風にステージの上で歌って踊りたいと』

『私は、乃々華ちゃんが、アイドルを辞めたなら辞めればいいと思うよ。』

『人間は誰だって完璧じゃないし、辛いことだってある。頑張れないときだってあるよ』

『どうして沙矢乃さんは、そんなに優しいんですか?』

『優しくなんて無いよ、ただ乃々華ちゃんは十分頑張ってるって言いたいだけ』

『私だったら、挫けてるよ、えらいね』


乃々華ちゃんは、泣き出してしまった。

2回も泣かせるなんて、ダメな奴だな私。

結構頭を撫でることしか出来ない私はただ寄り添っていた。


『私、決めました。アイドル辞めません』

『そっか。』

『でも、辛くなったら甘えてもいいですか?』

『いつでもおいで、たくさん甘やかしてあげるよ』

『ありがとうございます』


乃々華ちゃんは、いつの日かのような綺麗な笑顔を浮かべてからこう言った。


『でも、次からは恋人として甘やかして欲しいな♪』


不意に乃々華ちゃんの顔が私の顔に近づく。時が止まったかのようにスローモーションに見えた。


........キスをされた。頬に


柔らかかった、意識した途端に顔が熱くなる。え?今キスされたの?


『恋人になったら、次は唇にしますね♪』

『...........//』


やられた、完全に。今日は私がリードするって決めてたのに.....。最後に持って行くのはずるいでしょ


そう思いながら、乃々華ちゃんと手を繋いでかえる私であった。

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