第19話

『乃々華ちゃん!』


名前を呼ぶと、顔をあげてくれたけど、目元がすごく真っ赤で酷い顔だった。


『大丈夫?ハンカチ貸すよ』


そう言って、ハンカチを差し出せば、素直に受け取ってくれて、落ち着いたら少しずつ話してくれた。


『実は、撮影の時に悪口言われて、かなりショックで抜けてきたんです。顔だけが取り柄な性格ブスだって。』


『それが、悔しくて、でも言い返せなくて、誰かに助けて欲しかったんです。』

『....そっか。話してくれてありがとう』


背中を撫でてあげると、落ち着いたのか抱きついてきた。辛い時って人肌恋しくなるよね。ついでに、頭も撫でてあげた。


『乃々華ちゃんは、よく頑張ってるよ!えらいよ。悪口言われて辛かったんだよね、今日くらい撮影抜けたって大丈夫だよ。まだ、子供なんだから失敗する事だってあるし、まだまだ成長途中だよ。』


そう言って微笑むと、乃々華ちゃんは、頬を赤くして俯いてしまった。そして、私の肩に頭をぐりぐり押しつけてきた。


『....優しいですね、沙矢乃さんは』

『そんな事ないよ、誰だってなぐさめてくれるよ』


乃々華ちゃんは立ち直ったのか、いきなり立ち上がり、とびきりの笑顔で笑った。


『ありがとうございます。沙矢乃さんのおかげで、元気でました!』

『それはよかった。』

『あーあ、沙矢乃さんみたいな人が彼女だったらなぁー』

『乃々華ちゃんには、榊がいるでしょ』

『もう、あんな人知りません、別れます。』


あーあ、やらかしたね榊。乃々華ちゃんに振られるなんて。


『私には、勿体無いよ』

『そんな事ないです。沙矢乃さんは素敵です。』

『そう言ってもらえると、嬉しいな』

『じゃあ私、撮影に戻りますので.....』

『沙矢乃さん、連絡先だけ交換してくれませんか?』

『いいよ』


連絡先を交換したら、彼女は行ってしまった。まぁ、元気になったんだからいいよね

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