第15話 お披露目会2

窮地を脱出したリアムはやっと食事を堪能しているとクレアが呼びに来た。


「陛下達の所に挨拶に行くわよ」


「君が呼びにくるなんてビックリだよ」


「レイブン様と何を話していたのか気になったから私が呼びに来たのよ」


「あ~、レイ達か。くだらない普通の会話だよ」


「どうやってお近づきになったのよ?あの神童とも呼ばれているレイブン様と?」


「へぇ~、そんな呼ばれかたしているのか。お近づきも何も向こうから挨拶にきたから知らないな」


「何て羨ましい。お相手はいるのかしら?」


「自分で聞けば?」


「それができれば苦労しないわよ」


そんな話をしていると挨拶の列に辿り着いた。


しばらくするとリアム達の番となった。


継承権のないリアムは家名と名前を名乗って一言いえば終わりなのだが、リアムが挨拶をして帰ろうとすると第3王女から声をかけられた。


「あ、あの、リアムンド殿はフィアンセはいらっしゃいますか?」


リアムも周囲の貴族も全員がこの発言に驚いている。


何よりも挨拶以外の会話で王女自ら話しかけたことだけでも驚きなのに、さらにはリアムにフィアンセがいるのか?ととんでもない質問をしたことで隣にいる陛下でさえもこの後の会話に注目している。


「ソフィー王女様、私は継承権ももたないただの子爵の子供です。婚約者どころか友達もいないくらいです」


「そ、そうですの?先程は楽しそうな声が聞こえてきましたので気になりまして」


「えっ、挨拶しながらも遠くの声を聞き分けたのですか?」


「ええ。すこしだけ耳には自信がありますの」


すこしってレベルじゃないだろうとリアムは心の中でつっこんだ。


「お恥ずかしい会話をお聞かせして申し訳ございませんでした。しかし、それとフィアンセの質問は繋がりませんでしたので…。」


「知りたいですか?」


「いえ、なんとなく怖いので遠慮しておきます」


「フフフ、やはり正直者ですわね。そう言えばリリーナ嬢と決闘致しますの?」


決闘と言うソフィー王女の言葉に喰いついてきた者がいた。


「ほぉ~、あの戦闘狂と決闘か~。」


あのバカ、陛下にまで名前が知れているなんてアホだろう。心の中で愚痴をこぼしながらどう返答するかを考える。


「いえいえ滅相もございません。言葉のアヤと言いますか、子供の戯言でございます」


「まあ、そう言うな。せっかくのお披露目会も余興がないと面白みにかける。皆の挨拶が終われば簡単な模擬戦をしてくれないか?」


陛下から頼まれると断ることなど出来ないが出来ればしたくないのが本音だ。


そんなリアムの心情を読み取ったのか陛下は再度口にした。


「余興として戦ってくれれば褒美を出そう」


「はっ、是非やらせていただきます」


リアムは間髪なしにそう答えた。


「クックック、面白い奴だ」


こうして皆の挨拶が終わるとリリーナと決闘することになった。


もちろんリアム達だけでは盛り上がらない恐れもあるので希望者を募り何組かの模擬戦を行うことに。


会場の真ん中に結界フィールドが用意され決闘の準備が行われた。


希望者の模擬戦は無事に終わったが、そこまで盛り上がってはいなかった。

そして、ついにリアムとリリーナの決闘が行われようとしていた。


セイラもまさか自分の子供がこんなことになるなんてと思わず失神しそうになっている。タイガはリアムの側で「手加減にはお気をつけ下さい」と小声で伝えていた。


そんな中一人だけワクワクと嬉しそうにしている者がいた。


「リアム、全力で行かせてもらうぞ」


「何一人で楽しんでやがる。いい迷惑だ」


「私は自慢ではないが同年代の者にはほとんど負けたことがない。遠慮なく本気でくるがよい」


「人の話を聞けこの戦闘狂が」


流石に結界フィールドがあるとは言え、お披露目会で血しぶきを舞わせる訳にはいかないので木刀と初級魔法のみの決闘となっている。


もちろんたかが10歳の子供の戦闘に本気で期待しているわけがない。

魔法も初級魔法以外使えないと思っているが、貴族の子供を逆なでしないように上手く伝えているだけである。


しかし、この後誰も予想にしてない展開が待ち受けていることを今この時は誰も知る筈がないのであった。

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