第14話 貴族のお披露目会
音楽が鳴り響いた後、大臣の声が鳴り響いた。
「アドベルト陛下の入場である、皆の者、頭を下げよ」
一同臣下の礼をとり、頭を下げて陛下の言葉を待つ。
「顔を上げよ。本日は子供が主役だ。気軽にするが良い」
皆一斉に顔を上げ、国王陛下を見つめる。
その横には綺麗な青髪のお淑やかそうな女の子が立っていた。
そして、陛下と王女様が挨拶をし、大臣による乾杯の音頭でお披露目会が始まった。
これからは親と子は離れ、自由に行動するらしい。その中で、位の高い貴族から陛下達に挨拶に行くのである。
楽曲の演奏が響く中、リアムは壁沿いに行き周りの様子を覗った。
ある程度派閥があるのか、仲の良い者同士で話をしている者が多い。中には一人になってオロオロしている者や、積極的に話しかけている者などもいる。
「10歳と言えど流石に大人びた子供でないと気の合う奴は見つからないだろう。もう一人の転生者を探すのも面倒だしこうなったら食事でもするか」
本来はいきなり食事をする者などいないのだが、リアムは気にせず食事を堪能しだした。
クルミの分も召喚陣の中に美味しそうな食事を入れてあげる。
そうして食事を楽しんでいると二人の子供が近づいてきた。
「僕も一緒に食事をしてもいいかな?」
「私も出来ればお仲間に入れてほしいですわ」
「君達はバカなのか?」
「その言葉はそっくりそのまま君に返そう」
リアムはニヤリと笑った。
「なら同類だな。俺の名前はリアムンド・ゼロサム。継承権はないただの子爵家の子供だ」
「私は辺境伯の次女でリリーナ・アイデンよ」
「僕は侯爵の長男、レイブン・キサラギだ。宜しく頼む」
リアムはキサラギと言う名を聞いて、この世界にも日本に似た名前があることにビックリした。
「同類と言って悪かった。まさか俺よりもバカだとは思わなかったよ」
レイブンは人目も気にせず笑いだした。
「僕の名前と爵位を聞いても態度が変わらないなんてやはり君は面白い奴だな」
「ほら、私の直感に間違いはなかったでしょう?」
「ああ。てかいつもは役に立たないのに今日は冴えてるな」
「喧嘩を売ってるの?ぶっとばすわよ」
「僕に勝てると思ってるの?」
「チッ、いつか勝って見せるわよ。てか、もう言葉遣いにボロがでているぞ」
「二人は仲がいいんだね?」
「「どこが」」
「息もピッタシだね」
リアムはこの二人のやり取りを見て、久しぶりに会話を楽しんだ。
「僕のことはレイとでも呼んでくれ、君のことはリアムと呼ばせてもらうがいいか?」
「もちろん。面白い奴は大歓迎だね」
「じゃあ、私のこともリリーナと呼んで」
「それはちょっと…。」
「な、なんでよ、レイがいいのに私はダメなのよ?」
「や~い、振られてやんの」
「流石に女性をいき成り名前で呼ぶのは…。」
「私が言いっていってるからいいのよ」
「君は暴君かい?」
このやりとりを見てレイはゲラゲラと笑っている。
普段クールで評判なレイが本気で楽しそうに笑っているのを見て周りの貴族は驚愕している。それもその筈、レイに取り付こうとしても邪見にされ相手にされない貴族の子がほとんどなのだ。
「あんたも笑ってないで執り成しなさいよ」
「いや~、リアムは最高だな」
「いいから呼びなさいよ。分かったリアム?」
「はいはい」
「キー、なんで投げやりなのよ。頭にきた、リアム勝負よ」
「でたでた、脳筋はすぐに戦いたがる」
「レイは黙ってなさい」
なんだかんだでリアムの場所は賑やかで、周りからも注目を浴びていた。
周りの貴族達もヒソヒソと話だした。
「また戦闘狂のリリーナ辺境伯令嬢が騒ぎだしたぞ」
「流石にお披露目会で勝負だなんて」
「これだから辺境伯の人達は野蛮なのよ」
様々な声が聞こえる中リアムは答えた。
「冗談だよリリーナ。それに俺は弱いから勘弁してくれ」
そう、リアムは目立ちたくないのだ。
「嘘ね。私の直感がそう告げてるわ」
「ねぇ、レイ?リリーナの直感は当てにならないんだよね?」
「まあ、普通はな。ただ、戦闘に関しては外したことがないぞ」
「マ、マジか?」
リリーナがドヤ顔をしていると丁度良く二人の執事が陛下達の元へ挨拶に行くために呼びにきた。
リアムは何とか窮地を脱出して一息入れるのであった。
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