第12話 閑話 クルミの運命点

僕は月と言う星で産まれた。


月には僕と同じ月兎と言う種族が沢山いる。むしろ月に住んでいる大半は月兎で残りは魔獣である。


月兎にも多くの種類に分かれるが、僕と同じような容姿は誰もいなかった。


そして、この容姿のせいで僕は親に捨てられたそうだ。


その後優しいおばあちゃんに面倒見てもらったが、やがておばあちゃんは亡くなり、また一人になった。


一人となり、寂しくて寂しくて思わず泣きながら歩いていると気づけば知らない場所にいた。そして、見渡せばそこには沢山の魔獣がいた。


僕には蹴り兎などの戦う能力はない。おばあちゃんが亡くなったことで僕は生きることが苦痛となり魔獣に食べられることに何も抵抗する気もおきなかった。


それもその筈、街を歩けば気味が悪いと仲間はずれに合う。むしろそれくらいならいい方だろう。酷い時には石を投げられ罵られる毎日。


僕は何か悪いことをしたのだろうか?何故、皆と同じような容姿で産まれてこなかったのだろうか?何故………生きてきてはいけなかったのだろうか?


唯一僕に優しくしてくれたおばあちゃんも亡くなったことで生きる意味を見つけられない。そんな中、魔獣と遭遇した。死ぬことに後悔はないが、どうしても足が震える。後悔はないがもちろん死ぬことは怖い。


なんな感情がひしめく中、もう目の前まで魔獣の口が僕は食べようとした時、僕は最後に月神様にお願いをした。


「どうが、次の人生は僕を大事にしてくれる人と楽しく人生を過ごせますように!」


最初で最後のお願いをした時、額の月の紋章が眩い光を放ち、気づけば知らない場所にいた。


神様が僕のお願いを聞いてくれたのか分からないが、目の前の人からは優しいオーラが包み込み、何故か心の繋がりを感じた。


今考えれば魔獣に食べられて死ぬ瞬間だったと考えたら、一瞬で恐くなった。


怖くて怖くて何も考えられない状況なのに、気付けば目の前の人に抱き着いていた。


彼の手が優しく僕の体を撫でる度に自然と涙が溢れた。


そんな僕を見て優しく微笑んでくれる彼と一生共に歩んで行きたいと思った。


彼の優しい心が伝わり、彼の見る景色を一緒に見たいと思った。


たぶん神様が与えてくれた最後のチャンスだと思い僕はこのご主人様と楽しく過ごすことを神に誓う。


そうすると、異空間に繋がる穴は消えてなくなり、僕が過ごせる空間みたな部屋だけが残った。


今では、ご主人様にクルミと言う名を貰って毎日楽しく過ごしている。


見知らぬ場所だが、美味しいご飯やご主人様に毎日撫でてもらえるだけで幸せだ。


「罵倒されることもない穏やかな日々がこのまま続くといいな」


でも何で僕は見知らぬ場所で、こんなにも温かいご主人様の元に来たのだろう?


そんなご主人様のために僕は何が出来るのだろう?


そんなことを考えながら、今日もご主人様の肩の上で神に感謝しながら美味しいご飯を食べるクルミであった。

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