第11話 道中
1年が経ち、ついに貴族のお披露目会と受験の年がやってきた。
現在リアムは王都に向け馬車を走らせている。
セイラには受験する学院を伝え許可を受けている。
まず学院に関しては貴族が多くいる王国学院や騎士学院には絶対に行きたくないと考え、残るは魔法学院と希望の星学院になるのだが、この大陸を象徴するダンジョンに興味を示し希望の星学院に入学する予定にした。
ここでまず大陸の説明をすると、北の魔法大陸、南の武力大陸、東の文武両道大陸、西のダンジョン大陸と言われている。
この西の大陸はダンジョンの大陸と言われる所以は、何処の大陸にもダンジョンはあるものの、この西の大陸にだけ世界最大級の神のダンジョン、そして神のビジョンがあるからだ。
神のビジョンは冒険者の様子がランダムで映し出される魔道具の様なものである。
ダンジョンが発見された時には神のビジョンもあったと言われており、神の魔道具ではないかとも噂されるほどだ。
さらにはダンジョンが映しだされるビジョンは一つの娯楽となり、有名な冒険者はアイドルさながらの人気となり、スポンサーがつく程の現代社会のテレビのような存在で日夜お祭り騒ぎの状況だとか…。
学院で成長を遂げ、ダンジョンで一攫千金を夢見るリアムは、希望の星学院の受験に緊張しながらも、まずは貴族のお披露目会に参加するため暇な馬車の中でそんな夢を見ているのであった。
馬車の中では魔力操作の練習以外は寝るか本を読むかを続けていると気付けば王都が見える位置まで進んでいた。もちろんタイガも一緒なので話相手に困ることはない。
困ることはないがサクラが構ってちゃんなので大変だ。
「はぁ、せっかくの長旅なのに何のイベントもなく魔力操作を行う日々は飽き飽きだな」
「私を可愛がってもいいのにクルミばっかし可愛がるんだから…、キィーーー。」
「周りからお前は見えないんだから、可愛がっていたら変な人に思われるだろうが。まあ、頭の中で喋れるから話し相手としては助かったがな」
「でしょでしょ。もっと褒めていいのよ。まだ2、3年間の時を恨んでいるのなら器がちっちゃいわよ」
「まったく、俺の3年間の苦労も知らないで。俺には魔法の才能がないと本気で泣きかけたんだからな。まあ、おかげで伸びしろは無限大になったから今では感謝してるがな」
サクラはリアムの言葉を聞いて、足をパタパタとさせ喜んでいる。
それもその筈、魔法が使えない間は筋トレと剣術の稽古を欠かさず行っていた。
そのおかげでスキルを習得できたのが嬉しいのだが、やはり一番は戦闘での経験値が大幅に上がったことが何よりも大きい。
通常スライムは魔法で攻撃するとゼリー状の体を通して核にダメージが行くので簡単に倒せる。しかし、魔法が使えないとなると核に届くような重たい打撃などを与えないといけない。比較的小さなスライムなら剣でも簡単に倒せるが大きくなるにつれて剣が通らなくなる。その度にリアムはあの手この手で核を攻撃する手段を探す。
叩く、切る、突くなどは当然だが、剣の切っ先だけでの切り裂きや上空からの突き降ろしなど多種多様の戦闘を試みた。
その会あって、スキルレベルが高くなったような気がする。何よりもそのおかげで一つのスキルが手に入ったことが大きい。
一点集中と言う名のスキルだが、剣先に意識を込めるだけで剣の間合いや力強さなど強弱が出来るのだ。このスキルは多編成に優れているので試行錯誤がとまらない。
しかし、タイガと出逢ってからのタイガとスライムの戦闘を見た時は唖然とした。
タイガのスキル≪内部破裂≫が炸裂すると大型のスライムであっても簡単に倒せるのだ。
俺は「チートだ!チート」と騒いでいたが、心の中ではタイガが一緒に居てくれることに感謝している。
そんなことを考えているとついに王都の城門が見えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます