第10話 閑話 タイガの運命点
俺の父親はトラの獣人で、母親はウサギの獣人である。
一件普通のハーフの獣人なのだが、両方の特徴を色濃く反映した見た目から俺は村でハブられている。
父さんは厳しくも優しく母さんは慎重で心配症な性格なのだが、俺は勇猛果敢な時と心配性で疑心暗鬼する部分を持ち合わせた性格をしている。
たぶんだが誰かのために動く時と理由がない時とで性格が変わるのだと思っている。
この性格を踏まえるなら、信頼できる人の下で働くのが一番だと思っている。
ただ、村からは毛嫌いされているので将来が心配である。
そんな矢先、父親が村のために魔物の討伐に向かったまま帰らぬ人となった。
母さんはずっと泣きじゃくり塞ぎこんだ。我が家は稼ぐことも出来ずにしばらくは周りのお世話になっていたが、当然ずっと面倒は見てくれない。
しばらくすると村でも問題となり、罵声が飛び交うほどの状況になった。
これも俺の容姿に問題があるような言い方で、ついには疫病神とまで言われる始末である。
このまま生きていてもと考え死のうと考えた時もある。
しかし、死のうとした時に限って弱気な性格がでて死ぬことが恐くなる。
そんな日々を過ごしていると村長から呼ばれて行くと手足に縄を掛けられ馬車に乗せられた。
耳を澄ますと村長と一人の男が奴隷だなんだと話している。
「あ~、この人生最悪だ。何で俺ばっかり…」
ついつい愚痴と涙が溢れるほどに人生を諦めかけていた。
俺は奴隷となり最悪のケースばかりを考えてしまいどんどん怖くなった。
人生諦めたはずなのに諦めきらず、藁にもすがる思いで手足の縄をなんとか嚙みちぎり馬車から逃げ出した。
運がよかったことに荷台には俺一人で、馬車の護衛も冒険者二人のみで逃げた瞬間を見つかっても追いかけてこなかった。
そこからはひたすらに走って走って走りまくった。
動けなくなると木陰に休んでまた走るの繰り返し。
気付けば空腹と疲労で倒れていたのだが………、神は俺を見捨ててはいなかった。
気付けば見知らぬ人の子が立っていた。肩にリスのような兎のような動物を乗せて。
その動物をよく見ると額に月の宝石が見える。
心の中で震えた。もしやこのお方は村の御伽話で聞いた月の導き手ではないのだろうか?
そんなことを考えているとその少年に話かけられた。
「お腹が空いているの?これを食べるかい?」
警戒しながらも夢中でパンを食べた。
その後は少年から今後どうするか聞かれたがどうすることも出来ないことを伝えた。
それを見兼ねた少年は俺に救いの手を差し伸べてくれた。
そこから俺の人生は一変した。
リアムンド様と一緒に行動した結果、驚愕するばかりで自分の無能さを思い知らされた。
狩りの腕も魔法の腕も知識さえも完敗であった。
人としての器や村の子供に無償で食べ物を配る姿を見て、俺はこの方に仕えたいと本気で思った。
もちろん助けてくれた恩義もあるが、リアムンド様は見た目や種族で人を差別しない心優しいお方なのだ。強く凛々しくも弱者の者にも手を差し伸べれるリアムンド様に尊敬の眼差しが日に日に強くなる。
リアムンド様のために何が出来るか考えているとセイラ様が話かけてくれた。
「そんなに思い悩んでどうしたの?」
リアムンド様のお母様だけあって綺麗な上にとても優しい。
俺に何が出来るか考えていたことを相談するとこう言われた。
「あの子と一緒の道を歩むつもりですか?」
「歩みたいと考えています」
「そう。あの子に本当に付いていきたいのなら貴方の人生をかけないと辿り着けませんよ。その覚悟がおありですか?」
俺は真剣な眼差しで頷いた。
その日以降、朝は貴族の礼儀や読み書きなどの勉学に励み、昼からは武術や狩りの実戦を励むことになった。
厳しくも大変だが、俺の今の人生はけっこう気に入っている。
それもこれもあのお方の側にいると温かいのだ。
生涯リアムンド様に仕えるため、今は執事の勉強をしている。
ちなみに年は私の方が一つ年上なのだが、何故だか年上のような気が一切しないのはここだけの話だ。
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