第9話 お金が無くなった
リアムはタイガに何故腫れ物扱いされたのか聞くと人間から見たらどうでもいい内容だった。
タイガはトラとウサギのハーフの子として産まれたのだが、見た目がどちらとも言えない容姿から毛嫌いされていたそうだ。
父親がいた時はトラの獣人と言うこともあり力や発言力もあり何もなかったのだが、父親が亡くなると兎の母親は心配性で気が弱いこともあり塞ぎがちとなり病んで行った。そうなると村の者はいいたい放題となり今に至る。
この世界の獣人族は人型に近い容姿の中に耳や尻尾が獣人族としてある。
タイガはトラ族の顔立ちをしているものの何処か可愛らしい。ただし、耳はトラなのだが、尻尾はウサギとなることからイジメられていたのだろう。
リアムは奴隷商から逃げてきたことも含めて今後のことを考えて聞くことにする。
「君は奴隷商から逃げてきたけど今後はどうする予定だったの?」
「わからない。とりあえず逃げることしか考えてなかった」
「そうか。では今は今後どうしたいって思う?」
「お、俺は…、普通に生きたいだけなんだ。でも、このまま逃げ通せるわけもないし、そんな小さな夢も無理なんだろうな」
リアムはタイガの思考にビックリした。
現在の状況から自分の状況を正確に把握できていることも踏まえて、今後の道筋をたてる。
「奴隷商から逃げられる道があるとしたら君はどうする?」
タイガは初めて目に生きる希望の光を見つけたように力強い眼差しで見つめながら答えた。
「お、俺を助けてくれるのなら、貴方のどんな道でもついていきます。もちろん貴方の楯となることを誓うので、どうか助けて下さい」
タイガの泣き叫ぶような声を聞きリアムは優しく頷いた。
リアムは家に帰りセイラに事情を説明した。
もちろんセイラが奴隷商に対してはどうするのかも聞かれることを予想し、解決策を含めて話すとセイラはニッコリと微笑みながら了承してくれた。
ここら辺で奴隷商を扱っているのはゼロサムの町だけなので、セイラはタイガの情報を踏まえ確認するとすぐに分かった。
セイラとリアムは町に出向き奴隷商の元へやってきた。
奴隷商もこの町の領主の婦人とあり丁寧に出迎えてくれ応接室へと足を運ぶ。
「これはこれはセイラ様、本日はどう言ったご用件でしょうか?」
「すこし前に山を越えた村からの帰りに獣人族の子供に逃げられたと聞きましたが本当ですか?」
「セイラ様は情報がお早い。そうなんですよ、格安で引き取ったのはいいんですが、逃げられてしまって」
「何処かに売る予定だったのですか?」
「いいえ、とんでもない。村から引き取って欲しいと言われただけでして。ただ、働き盛りの獣人の子供なので高く売れるだろうと思っていたのでとてもショックで」
「そうでしたか。実はその子なのですが、山の中で倒れていたところを私共が保護させていただきました」
奴隷商はパッと笑顔となった。
「ほ、本当でございますか、それは有り難い。何かお礼が必要ですよね?」
セイラは妖艶な笑みで頷いた。
「ええ。本来なら山の中の魔物に食べられていたでしょうからね」
「そうですよね。ど、どのような物をお望みですか?」
「欲しい物を言えば、逆に高くつきますが宜しいので?」
「えっ、いえ、私共が赤字にならない程度で出来ればお願いしたいです」
この時点でセイラの独壇場となっていた。
「もちろん分かっておりますわ。丁度息子の護衛が欲しかったところなので、私共にそのまま売っていただけませんか?」
「も、もちろん喜んでお売りさせていただきますが…」
奴隷商は料金の設定に困っているようだ。
「村の往復の費用や冒険者を雇う費用などの支出も含めて金貨1枚でどう?」
日本円で言うと100万円となる金額であるが、格安で仕入れたと言っていた上に逃げられることを考えると冒険者を雇う人数も最低限にしていると考えこの金額に設定している。
「そ、そんなにいただいていいのですか?」
この言葉を聞けているだけに、予想は的中していそうだ。
「ええ、もちろんよ。それなら貴方の利益もでるでしょう?」
「も、もちろんでございます。有り難うございます」
こうして無事にタイガを購入することに成功した。
ちなみにリアムが5歳から使わずに貯めていたお金が無くなったとだけ言っておこう。
この世界の通貨の値段
鉄化→10円
銅貨→100円
銀貨→10000円
金貨→1000000円
白金貨→100000000円
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