第8話 サクラとタイガ
桜の精霊にはありきたりの名前だがサクラと懐けた。
名前を与えたことでリアム自身もサクラとのパスを感じることができた。
魔法が使えなかったことの原因が分かり、サクラに魔力供給量を調節してもらうことにして今まで出来なかった魔力操作に再度挑戦する。
意識は体の丹田部分に集中し魔力を感じとると、その魔力を意識して移動させていく…。
「で、できたぁ」
今までの苦労が嘘のように簡単に出来たことに驚き、そして冷静になった結果怒りがこみ上げてきた。
「ねぇ、サクラ?」
「何かしら?」
「叩いてもいいかい?」
「えっ?」
「殴ってもいいかい?」
「ヒ、酷くなってるじゃない。ぼ、暴力反対」
「俺の三年間を返せ~~~~、こらぁ~~~」
「きゃ~~~。クルミは喜んでないで助けなさいよ~。」
「キュイ?」
クルミは可愛らしく首を傾げている。
そこからサクラとリアムの鬼ごっこは日が暮れるまで続いたのは言わないでおこう。
ただ、サクラのおかげ?で手にいれたものもあった。
それは、魔力操作が出来ない鬱憤を晴らすように毎日毎日剣を振り体を鍛え、走り込みを3年間続けた結果、剣術スキルと身体強化スキルを手に入れていたのだ。
町外れの小さな村では娯楽もないので、毎日毎日己を鍛えるしかなかった。
村の近くの森に出かけては薬草などを探すついでにスライムや角イタチなどを討伐するのみだった。
また、スキルのレベルは判らないが急に体が軽くなることがあったので、スキルレベルも多少上がっていると思う。
そんなリアムは魔力操作を覚えたことによってここから1年間は魔法を中心にさらなる努力を重ねていった。
詠唱ありの魔法、詠唱無しの魔法などをサクラと一緒に研究していった。
魔法を使えるようになり近場の草原だけではなく、その奥の森に行きホーンラビットなどを実践に戦うようになった。
そのおかげで魔石やホーンラビットの肉が手に入るようになったので、食卓に肉料理が増えたので地味に嬉しい。
貯めにため込んだ魔石をどうにかしたいとセイラに相談すると週に一度くる行商に相談するといいと言われた。
ちなみにこの世界では週は6日間で【火・水・風・土・光・闇】となっている。
週が5週で一ヶ月となり、月が12ヶ月で1年である。
毎週風の曜日にくる商人アンダークに相談する。
「アンダークのおじちゃん?」
「どうしたんです、リアムンド坊ちゃん」
「貯めこんだ魔石を売りたいんだけどダメかな?」
「魔石ですか?」
アンダークは「うーん」と言いながら悩んでいる。
「手数料をとって安くなってもいいからさ」
「それなら。そもそも小さな魔石はそれほどお金にならないんですよ」
「そうなんだ。なら、売れ残りの物と交換なんてどう?それならアンダークさんにとっても利益になるでしょ」
「それなら有り難い。それにしても貴族のお坊ちゃんは頭がいいですな」
その後ガハハと笑いながら機嫌を良くしている。
リアムは子供達の食べ物や今後役に立ちそうなアイテムを買っていく。
もちろん食べ物は子供達のために偽善としてあげていく。
リアムがこれを気に皆に尊敬の目で見られることとなる。
こうした生活を1年過ごし9歳となったころ事件が起こった。
ホーンラビットを狩りに森にいつものように足を運ぶとサクラが声をかけてきた。
「森の奥に獣人族の子が倒れているわよ」
「え、本当?案内して」
サクラに案内してついていくと、歳が同じくらいの獣人の子供が倒れていた。
クルミを肩に乗せたままゆっくりと揺さぶって起こす。
獣人の子は目を覚まし、距離をとろうとしたが力が入らないらしい。
その直後、獣人の子供から「グー」と言うお腹の声が鳴った。
「お腹が空いているの?これを食べるかい?」
リアムは優しく微笑みながらパンを取り出し差し出した。
獣人の子は恐る恐る手をだしパンを受け取るとガムシャラに食べだした。
飲み物も渡し、落ち着いてから事情を聞いた。
何でも森のさらに奥にある山から逃げてきたそうだ。
父親が亡くなり、母親と一緒に過ごす内にいつしか村で腫れ物扱いを受けるようになった。月日が経つにつれ母親が耐えきれず、その原因となる子を奴隷商に売ったそんだ。その奴隷商の馬車から縄を噛みちぎって何とか逃げ出し、ひたすら走って逃げて気付けば今に至るそうだ。
名前を聞くとタイガと教えてくれた。
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