24.虐めは誰が?
「でも、確かにオリビア様の教科書が破られたり落書きされたり、酷い場合は捨てられたりしているのは事実のようですわ・・・」
食事をしながら令嬢の一人が厳しい表情で話した。
「え? そうなんですの? ダリア様」
別の令嬢が驚いたように目を丸めた。
「ええ、聞いたことがありますの。以前、オリビア様が制服を濡らしたまま歩いているところを見かけて・・・。その時、近くにいたご令嬢方の会話から誰かにバケツの水をかけられたらしいって知りましたの。気になって彼女たちに話を聞いてみたら、他にも嫌がらせをされているらしいって聞いて・・・」
「まあ、そんなことが・・・ありそうですわね・・・、オリビア様なら。彼女を妬んでいる人は多いですもの。殿方様絡みでね・・・」
呆れたように肩を竦める令嬢。
「話を聞いた時は少々お気の毒とは思ったのですよ。でも、まさかそれをわたくし達のせいにしていたなんて・・・!」
ダリアと言う令嬢は急に怒り沸いてきたのだろう。優雅に動かしていたはずのフォークに力が入り、グサリと皿の肉を突き刺した。
それを見て椿はヒュッ息を呑んだ。
「本当に酷いですわ。わたくし達がそんな馬鹿げた卑劣な真似するわけがないのに! 教科書に落書き? 他人の物をこっそり手に取るなんて泥棒ではありませんか! ましてや捨てるなんて、流石にそんな権利わたくしにはございません!」
別の令嬢もご立腹だ。
「本当ですわ、クラリス様。それ以前に、わたくしはオリビア様の物など触れたくもございません」
(ア、アウト! それの言い方はアウトですよ! えっと、アニー様でしたっけ?)
ドキマキしながらガールズトークを聞いている椿の隣で、柳は涼しい顔で食事をしている。
時折、椿にだけ聞こえるように、お~怖ぇ~と呟く。その度に、その言葉がガールズに聞かれないか、そっちにもドキドキする。正直食事どころではない。
「ま、でもさ、実際問題大きな声で人を貶すのはどうかと思うぜ? 聞いていてあんまり気持ちのいいもんじゃないしな」
「「「・・・っ!」」」
今まで黙って聞いていた柳の発言にガールズは言葉を詰まらせた。
「それにさ、そこに付け込まれたんだぜ? あんた達が嫌がらせしててもおかしくないって周りから思われても仕方がない状況を自分たちで作ってたわけだ」
「「「!」」」」
三人はハッとしたように目を見張った。
「だから、これからは気を付けようぜ。お互いにさ。こういうのって誰もがやりがちなんだよ」
柳はニコッと三人に微笑んだ。さっきの意地悪そうな凄みの利いた笑みとは全然違う、優しいセオドアのスマイル。
「「「はい・・・♡」」」
(すごい・・・柳君。あっさり論破、からの秒殺)
感服して目をパチパチさせていると、
「俺も気を付けるよ、な? オフィーリア」
柳は急に椿の顔を覗き込んできた。
(『な?』って何ですか?!)
王子様スマイルの
「オフィーリア、早く食べないと昼休み終っちゃうぞ? 俺が食べさせてやろうか?」
「はひ?!」
「まあ、あまり見せつけないでくださいませ」
「ふふ、本当に仲がよろしいのね。羨ましいですわ」
「ご馳走様ですわ。わたくし達は先に失礼いたしますわね」
誤解が解けた上に、セオドアから眼福スマイルをもらえて満足したのか、三人の令嬢はご機嫌に席を立った。
「それではお先に。セオドア様、もうすぐ卒業ですわ、オフィーリア様を独り占めしないでたまにはわたくし達とも過ごす時間をくださいませ」
去り際に、令嬢の一人―――ダリアが振り向くと優しく微笑んだ。
(オフィーリア様はお友達から大切にされているんだな・・・)
こんなにも友達に思われているオフィーリアが果たして本当に悪役令嬢なのだろうか。
さっきの三人の話からもオフィーリアは虐めなどしてなさそうだ。
もちろん、彼女たちの話が嘘でなければだが・・・。
「なあ、山田。今日の夜オフィーリアと話せたら、ちゃんとウラを取っておけよ」
「はい・・・」
椿はお友達の後ろ姿を目で追いながら、小声で話す柳に小さく頷いた。
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