第16話 座間村パーティとの邂逅
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた
「えっと、誰でしょうか?」
『シホミィ知らないのか!? あれは〈ブラックサウルス〉の座麻村パーティだ! 全員Aランクだぞ!』
「えぇ! そんなすごいパーティがなんで!?」
シホミィが視聴者さんと話しているが、そんな様子には目もくれずに座麻村は俺に近づいてきた。
「
「……配信中だ。用事があるなら後にしてくれ」
「あぁん? 配信中だってぇ? どうせしょぼい階層でちちくり合ってるだけだろ?」
「ギャハハハハハ! ザマちんはっきり言い過ぎ!」
なんなんだこいつらは、もう俺は部外者のはずだろう。
シホミィの方を見ると、彼女はどうしたらいいのかわからない様子で、オロオロとしていた。
「俺たちみたいなトップクラスの冒険者に相手にされないからって、女相手に指示厨やってるんだってなぁ?」
「それがなんだっていうんだ」
「だっっっっせぇ真似してるなぁって思ってよぉ!」
「ぷはははははは! 落ちこぼれカメラマンにはお似合いだぜぇ?」
相変わらず人を小馬鹿にしたノリの座麻村たちを見て俺はゲンナリする。
しかも自分たちのことをトップクラスって言ったか? 自己評価が高すぎるんだが。
まともに相手をしても仕方がないので、あしらう方向に持っていこうと思う。
「じゃあ、そんなすごい冒険者さんは、さっさと次の階層へどうぞ」
しかし俺の思惑とは裏腹に、座麻村たちはここから離れようとしない。
「そうだ。ここで会ったのも何かの縁だ。視聴者どもに完塚のことを教えてやろうかな」
「ぷははははは!」
「ちょうど俺たちも新しいカメラマンが入ってな」
座麻村がそう言うと、彼らの背後にいたカメラマンが姿を現した。
「え? ……うそ!」
「久しぶりねシホミィ。相変わらず、独りよがりの配信をしているようね」
現れたのは以前シホミィのカメラマンをしていた女性だ。確かイレギュラー戦で逃げてから〈ムーンキャッスル〉を辞めたと聞いたが、〈ブラックサウルス〉に行ったのか。
「さぁ、役者が揃ったところで始めるぜ」
座麻村は自分たちのカメラに向かって話しかけた。
「イレギュラーのサンダーエレメンタルや、ミノタウロス戦で完塚がもてはやされているようだけどなぁ。それは完全に間違いだぜ?」
「詐欺みたいなもんだぜ! みんな騙されんなよ!」
「あいつはただの
やいのやいのと、カメラに向かって吠える座麻村たち。
「あいつは元々俺たちのカメラマンだったんだ。だからAランク帯での撮影経験もあるし、サンダーエレメンタルやミノタウロス戦なんて、何度も撮影してんだよ」
「そうだそうだ!」
「だから俺たちから戦い方を学んだ完塚が、それらと戦えるのは当たり前なんだ!」
「そうだそうだ!」
何を言い出すのかと思ったらそんな事か。
確かに、撮影をしていて学んだ事はたくさんある。それがどうしたっていうんだ?
「完塚を過剰に持ち上げてる連中は目を覚ました方がいいぜ? 何ならヤラセを疑ってもいいくらいだ」
「ちょ、ちょっと! さっきから聞いていましたが、それは酷いんじゃないですか!」
座麻村の一方的な言い分に対してシホミィが身を乗り出してきた。
彼女はいかにも怒ってますという表情で座麻村に詰め寄る。
「あぁん? 何のようだ?」
「
「おいおい酷いだって? それは視聴者を騙そうとしてるお前たちじゃねぇの?」
「はぁ!? 何でそうなるんですか!?」
座麻村は俺にだけ突っかかるかと思いきや、シホミィにもガンガン噛み付いていく。
「だってそうだろ? エンタメ系ダンジョン配信って何だ? 作りもんって事だろ?」
「そ、それは見る人が楽しめるようにとですね……」
「かぁーっ。そういうの困るんだよなぁ。俺たちみたいにガチで攻略してるモンからしたらホント迷惑」
「そうだそうだ! チャラチャラした連中がダンジョンで好き勝手やってよぉ! ここは遊び場じゃないんだぜ?」
「でもそれは、人それぞれの……」
座間村たちが威圧するように捲し立てるため、シホミィは萎縮して言葉尻が小さくなっていった。
言い返せないシホミィを見て、ニヤニヤと勝ち誇ったような笑みを浮かべる座間村たち。
ダメだ見てられない。
俺のことはともかく、彼女たちのことまで馬鹿にされて黙っていられるわけがない。
「さっきから聞いていれば、好き勝手言ってるな」
「あぁん? なんだ完塚ぁ?」
座間村の視線をまっすぐ見つめ返して、俺は言い返す。
「ダンジョンの情報を発信しようとしているのはどっちも同じだろ。それを馬鹿にするのは違うんじゃないか?」
「ハァ? ここは生きるか死ぬか、勝つか負けるかの戦場だっての。完塚ぁ、お前勘違いしすぎだぜ?」
座間村のような考えの冒険者は一定数いる。それを見て俺はいつも思うんだよな。
何を根拠にダンジョンはこうだって決めつけているのかと。
それはあくまでも、自身のダンジョンとの向き合い方なだけだろってな。
「勘違いはお前たちだ。ダンジョンで勝手に生き死にをして、勝手に勝ち負けをやってるだけじゃないか。ただ博打を打ってるだけだろ。それを押し付けんなよ」
「こんの野郎ぉぉぉぉぉ!」
座麻村が頭に血を上らせたのか、怒りの表情で睨みつけてくる。
こういう視野が狭いところも、俺が座麻村たちと合わなかった部分なんだろう。
「俺たちの攻略についてきて、モンスターとの戦い方を覚えただけの寄生野郎が偉そうに言いやがって!」
「いや、どんな方法で戦い方を覚えようが勝手だろ」
「ハァ? 何言ってんだこいつ」
「図々しいにも程があるよなぁ!」
それに戦い方を覚えたのは座麻村たちだけのおかげではない。対モンスターについては俺なりに色々と調べているんだ。
まぁここではあえて言わないが。
俺の言動に腹を立てた座麻村たちは、自分たちのカメラに向かって必死に正当性を主張している。
内容はガチ攻略系のプライドだとか、恩を仇で返されたとか、自分勝手な主観ばかりだが。
自分たちのカメラに向かって一生懸命話しているので、俺たちとの話はこれで終わりかと思いきや、座麻村が俺とシホミィの方をじっと見てきた。
そしていやらしく笑うと……。
「そういや完塚は〈ブラックサウルス〉を追い出されて、行き着いたのが〈ムーンキャッスル〉だったよな?」
「それが何か?」
「ダンジョンに寄生しているだけの雑魚ギルドと冒険者に寄生するだけの完塚。案外お似合いだと思ってなぁ!」
「ギャハハハハハハハハ! ザマちんそれな!」
「
あぁダメだこいつら。俺たちを
だから何を言ってもまともに取り合うんじゃなくて、偏見や印象であざ笑ってくる。
シホミィも座麻村たちから好き放題言われて、握った拳がプルプルと震えていた。
「相手するだけ無駄だ。勝手に言ってろ」
これ以上、座麻村たちと関わっても
その時。
ミノタウロスのいなくなったボス部屋の中央に、突如モンスターが湧いた。
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