7
ハリスたちに追いついた時、その気配の濃度は頂点に達していた。ハリスたちが見つめているのは、荒すぎる喧嘩をしている男たちだ。その男たちは漏れなく嫌な気配を纏っていた。
「おいお前ら、こんな時になにをやってるんだ!」
「ボス、あいつら黒鷹の奴らじゃないですか。魔獣に便乗して俺らの縄張りを荒してやがるんだ」
どうやら赤鷹組と黒鷹組の組員たちが喧嘩をしているらしい。
「オーデュボンといえど、ランベルが危機に陥っているのにこんなことを指示するはずがない」
ハリスはそう言うと、振り向いてリシェルを見た。
「君の目にも、彼らが普通ではないことは見て取れるだろう。赤鷹の者も黒鷹の者も正気じゃない。ただただ怒りに支配されているような。まるで、先刻の我々のように」
それと全く同じ気配が彼らにある。リシェルはどうすべきか分かっていた。
「アルテナ様の剣なら、彼らの纏う気配を消し去ることが出来ます。少しだけ手伝っていただけますか?」
「無論だ」
リシェルだけしか気配を抹消することは出来ない。まずは、取っ組み合う二人の男から正気に戻すことにした。全員で二人を引き離すと、リシェルは剣を鞘に入れたまま、鞘の先で軽く腹を押す。羽交い絞めにされた黒鷹の組員は徐々に怒気を収めて、我に返った。
もう一方の処置をしようとすると、赤鷹の組員は妙に大人しかった。仲間たちに地面に打ち伏せられていた。ハリスは彼の前に膝を折って、正気に戻そうと声を掛ける。
「落ち着け、バウム。今は喧嘩などしている場合ではないだろう」
彼の怒りを萎れていき、情けない表情になっていく。
「すんません、ボス。俺、なんかおかしくなってました」
彼から嫌な気配は完全に消えていた。ハリスの言葉がそれを消し去ったとしか思えなかった。ハリスたちも彼が元に戻ったことを察し、拘束を解く。
「君の剣は触れずとも、その力を発揮するのか」
否定も肯定もしようがない。自分もまだアルテナの剣の力を把握しきっていない。ただ、今の現象は、剣の力が干渉したことではないと思った。
「ハリスさんが声を掛けたことで気配が消えました。もしかしたら、剣の力がなくても、彼らを正気に戻せるのかもしれません」
もう一組、喧嘩をしている男たちがいたので、彼らでそれを試した。黒鷹の組員はハリスの言葉に反応しなかったが、赤鷹の方は剣の力なしに正気を取り戻した。
「赤鷹の連中は組長の言うことは聞くように躾をされてるらしいな」
ドライスは皮肉っぽくそう呟いたが、リシェルはそこにこそ真実があるように感じられた。ハリスだけではない、他の赤鷹の組員が懸命に話しかければ、彼らの嫌な気配は薄くなっていた。剣の力だけでなく、誼のある者が声を掛ければ気配を消せるのかもしれない。更に次の組員をハリスたちが正気に戻したことでそれが確信に変わった。
その場にいた嫌な気配を纏っていた者たちは全員、正気に戻った。だが、辺りにはまだ気配は至る所に点在してあった。それらは自分一人だけでは対処しきれない。ハリスと正気に戻った組員たちが手伝ってくれるのなら、速やかに事態は収束するはずだ。彼らが元に戻した仲間たちに同じように助力を求めていけば、効率よくランベルに蔓延る気配を鎮められる。リシェルはそのことをハリスたちに伝えた。
「住民の避難と暴動の鎮圧を同時にしなければならないか。それぞれに割り当てる人員を調節しながら対処しよう。しかし、問題は黒鷹の方だ」
ハリスは所在なさげな黒鷹の組員たちを見た。
「彼らが我々に協力してくれなければ円滑には進まないだろう。その意志が彼らにあるのだろうか」
黒鷹の組員たちはハリスから目を逸らした。自分たちが大きな過ちを侵したことは自覚しているようだが、それを正すために敵対している赤鷹組と連携を取るのは気が引けるようだ。リシェルは彼らに近付き、彼らの顔を眺めた。
「貴方たちの力がなければランベルは崩壊してしまいます。どうか、力をお貸しいただけませんか」
誰も、頷いてはくれなかった。これほどまでに黒鷹と赤鷹の溝は深いのか。ランベルの危機を前に、嫌悪が優先されてしまうことにリシェルは歯痒さを感じた。
どうすれば彼らを頷かせられるかを考えていると、一人の黒鷹組員が唐突に声を上げた。
「親父もこっちに向かってる。赤鷹をぶちのめす、って息巻いてる。あれも俺たちと同じで正気じゃないのか?」
それに呼応して他の男たちが次々と声を上げ始める。
「もしそうだっていうなら、親父の情けない姿を赤鷹の連中には見せられない」
「親父だけじゃないだろ。怒りに身を任せてる馬鹿な面を見せるのは俺たちだけで充分だ。赤鷹に見られる前に他の仲間も俺たちが助けてやらなくちゃならねえ」
「ああ、そうだ。それに黒鷹の縄張りも心配だ。俺たちは俺たちで出来ることをやろう。赤鷹よりも早く片付けちまおうぜ」
黒鷹の組員たちは頷き合い、それぞれ何をするかを確かめ合った後、リシェルたちには目もくれずに走り去っていった。
「他人様の縄張りで勝手をしやがって。ボス、俺らも行きましょう」
赤鷹組の組員たちは触発されたのか、興奮気味に彼らの組長に詰め寄っていた。
ハリスはそれでも冷静で、それぞれに役割を割り当てて、こなすべき任務を伝えた。組員たちはそれを聞き終えると、各自の持ち場へと散っていった。
後に残ったのはリシェルとドライスとハリスの三人。ハリスがリシェルたちの方へと歩み寄ろうとしたその瞬間、彼の頭上を黒い影が覆った。リシェルは反応が遅れ、剣を抜く間もなかった。
間に合わない。黒い影、蝙蝠のような姿の魔獣がハリスに牙を剥く。だが、魔獣はその牙をハリスに突き立てることは叶わなかった。光の一線が魔獣の胸を貫き、その命を奪い取っていった。ハリスの目前で地面に落ちて、幾度かの痙攣を終えた後に完全に停止した。
「失礼。打ち漏らしがいたようで」
光の残滓を目で追うと、その先にハッドがいた。ハッドは神器たる弓を携えて、リシェルを見ながらも、上空にも気を向けているような素振りをしていた。
「何があってハリス殿と一緒にいるのかは問いません。今はただ一つだけ、お伝えしておくことがあって会いに参りました」
ハッドの飄々とした様子は変わらないが、どこか余裕がないように感じられた。リシェルは次に続く言葉にその理由を知った。
「魔の神器を使う者が入り込んでいるようです。それが魔獣を呼び寄せています」
「魔の神器、というのは?」
知らないことではあるが、その言葉には何故か強い恐ろしさを想起させられた。
「私たちが持つ聖なる力を宿す神器の対となるもの、魔なる神が宿った神器のことです。聖の神器と同じく、選ばれし者だけが扱うことができ、魔獣を自在に操る力を持つといわれています。ランベルは聖の神器の加護によって魔獣を寄せ付けない。此処から一番近い教会クラリアに収められているものと私のもの、リシェル殿のものも含めて三つの力が集約しているにも関わらずにこれだけの魔獣が出現しているのは、人為的に魔獣を操っている者、つまり魔の神器の適合者がいるとしか考えられません。今、ヒースキーにそれらしき人物を探してもらっています。彼はあれでも優秀ですから、すぐに見つけてくれるとは思いますが、もしリシェル殿が魔の神器の適合者に遭遇してしまったら、即座に逃げてください。おそらく貴女がどうにか出来る相手ではありません。其方の処理は私がやりますから、貴女は貴女に出来ることをしていてください」
神器に選ばれた者として能力を認められていたはずなのに、あっさりと逆方向に転換されて戦力の外の者に変えられてしまった。魔の神器の適合者が得体の知れない相手だからこそ、他者に任せられないという心情がハッドにあるのは分かった。それでも、自分が使えないものとして見られているのは、鉱山からランベルに戻ってくるまでの経験を有効に活用しきれないもどかしさを意識させた。
リシェルはハッドに、鉱山で魔獣を倒したことや、ハリスたちが纏っていた嫌な気配を消すことが出来たことを伝えて、自分も戦力になると主張しようとした。だが、リシェルより先にドライスが口を開いた。
「リシェルでは魔の神器の適合者に敵わないとして、だ。お前なら、そいつを止められる保証があるのか? そもそも、ネズミ一匹に見つかるような相手か?」
「聖獣は適合者と同様に魔の気配を感知する力があります。リシェル殿も感じておられるでしょう?」
リシェルは口を挟みたい衝動を抑えながら黙って頷いた。
「ヒースキーは私よりも魔の感知能力は高い。町中に充満している魔の気配の中から、必ず魔の神器の適合者を見つけ出してくれますよ。私の実力に関しては、魔獣の死体を数えていただければ分かるでしょう」
「俺の目には一つしか映っていないが」
ハッドは不敵に笑み、弓を構える。矢を番えずに引き絞られていくが、引き切ったあたりで、発光する細長い物体が弦の中心から弓に向かって伸びてきた。
空を切る音と共に煌めきの残滓が尾となった。空へと放たれた光の矢は上空で品定めをしている魔獣の群れの中の一匹を貫いた。次いで、機敏に旋回して別の一匹、更に逃げ惑う魔獣たちを追って着実に仕留めていき、群れを完全に消失させると閃光を放って自身も消えた。
「ちゃんと見えましたか?」
ハッドは墜落する死体を見遣るドライスの肩越しにそう言った。ドライスは疎ましそうにハッドを睨んで言葉を返す。
「さっさと薄汚いネズミに騒動の首魁を見つけさせて、その手の込んだ曲芸で仕留めてみせろよ」
「住民の避難と暴徒たちの鎮圧は貴方がたに任せます。私がちゃんと芸を披露できるように、舞台は整えておいてください」
ハッドは淡々と返すと、早足で何処かへと行ってしまった。その方向にはいわゆる魔の気配というものはあることをリシェルは感じていた。魔獣のものと人のものが混ざり合っているが、特別目立った気配はなかった。リシェルがそれらの気配と違うものを感じ取っていたのは別の方角にある。北側、黒鷹組の区画から赤鷹組の区画の方へ向かってきている大きな気配の塊だ。その気配は人が纏う気配の集合体のようであったが、その中に一つだけ異様な強さを感じるものがあった。
それが魔の神器のの適合者が放つ気配なのではないかと思った。しかし、ハッドはそれを感じなかったのだろうか。こんなに大きく目立った気配を無視して、ハッドは何を目指しているのか。それともヒースキーにあの気配を調べさせて、確認が出来るまで魔獣の対処をしているのか。ハッドの思惑をいくら考えても憶測にしかならない。此方に侵攻してきている大きな気配を放置しておいては町に被害が出るのは確実だ。あの気配が自分ではどうにもできないものであっても、止めに行かなくてはならない。
「強い気配が北から此方に向かってきています。他にも人の持つ気配がいくつか。あれを止めに行きましょう」
ドライスに話していたが、ハリスが反応を示した。
「北からということは黒鷹組の連中か。その中にオーデュボンがいるのではないか?」
「強い気配というのは気になるが、オーデュボンが正気でないなら元に戻すのは理にかなっている。贖罪と称して事態の収束を手伝わせてやる」
「奴が易々と自分の認めるとは思えない。面倒だが、同じ罪を負った者として私が説得しよう」
ハリスも含めて、リシェルたちは強い気配へと向かっていくことにした。町の構造を把握しているハリスのおかげで円滑な道程となり、南北を分かつ大きな通りで気配の集団と遭遇した。
その集団の先頭にオーデュボンがいた。集団全体が魔の気配を匂わせているのは間違いないことだったが、オーデュボンからは特に強烈な濃度の気配を感じた。それを証明するかのように、オーデュボンの目は血走り、怒りで顔を引きつらせていた。
オーデュボンはリシェルたちに気付いて足を止めた。視線はリシェルにもドライスにも向けられていない。ハリスを射殺すかのような目で凝視していた。
「最初から俺を陥れるつもりだったんだな。聖絶士と組んで、黒鷹をランベルから排除しようと。お前が卑劣なやり方で俺たちと戦おうというのなら、俺たちは正面からお前たちを潰してやる」
オーデュボンたちは武器を持っていた。ツルハシや金槌といった類ではなく、剣や槍といった本格的なものだ。
「組織の武闘派といったところか。たかが鉱業従事者の集合体の分際で、物騒な輩を用意しやがって」
人数も多く、迂闊に近付いたら無事で済むはずはない。彼らを正気に戻すにも、それが出来るのはこの場ではリシェルだけである。一人ずつアルテナの鞘で突いていくにも、時間が掛かるし、掛かる時間の分、危険も増える。リシェルもそのことは承知していて、これから降りかかる多大な労苦に覚悟を迫られていた。だが、ドライスが即座にリシェルの覚悟を払い除けた。
「全員を相手しようと思うな。狙いはオーデュボンだけでいい。奴さえ正気に戻せば、他の連中も落ち着くはずだ。俺が他の奴らを引き付けてやる。相手が一人なら、俺が教えた通りにやれば必ず勝てるだろう。まあ、魔獣を鮮やかに捌いてみせたのだから、人間に勝てないはずもないな」
ドライスは近くに立てかけてあった箒を手に取った。
「待て。そんなもので戦うというのか」
ハリスはドライスの腰に剣を認めていた。それ故に、ドライスが剣を使わないことに抗議した。
「刃を向ける相手は選んでるんでな。あんたらにだって使ってないだろ」
「しかし、あちらは武装している上に、そのほとんどを貴方一人で相手しようというのだろう? 無謀にもほどがある」
「ごちゃごちゃと煩い奴だ。お前にも手伝ってもらうぞ。奴らを引き付ける極上の餌としてな」
ドライスはハリスの腕を強引に掴み、黒鷹の集団の左翼側に回っていった。オーデュボンを含めて、黒鷹の全員がその動きに注目していた。路地を背にしたところでドライスは立ち止まり、ハリスを放した。
「ほら、お前らの大好きな赤い鷹のお頭はこっちだ。こいつを食えるのは一人っきり、早い者勝ちだぞ」
ドライスはハリスを路地の奥へと押し込んだ。同時にオーデュボンの怒声が轟く。
「逃がすな! 追え、追え!」
黒鷹の集団が路地へと入り込もうとするが、ドライスが蓋となり彼らの侵入を防いだ。箒を振り回して素通りしようとする者を阻み、向かってくる者に対してはその箒で叩きのめした。彼らも正気ではない集団であるから、手に握る刃物を容赦なくドライスに向けるが、それら全てを難なくいなして手心を加えた反撃をしていた。
リシェルは黒鷹の集団が路地の入口で詰まっているのを見ながら、最後方にいるオーデュボンへ視線を移動させた。誰ひとりとしてリシェルには気付いていないようで、オーデュボンもハリスの逃げ込んだ路地に夢中になっているようだった。今ならオーデュボンの隙を突いて、魔の気配を消し去ることが出来る。アルテナの剣を帯から外して、鞘と柄を両手で握り、気付かれないようにゆっくりとオーデュボンの背中に近付いていく。
魔の気配が、音を立てて灯るのに気付いた。リシェルは足を止めて、背後に体を振り向ける。人がいた気配は感じなかった。だが、臭気に近しい魔の気配は間近にあり、それを手中に握り込む何者かが確かに眼前にいた。
波打つ刃を持つ短剣を持つ手、左手の薬指が赤く染まっている。それに気を取られて、短剣が自分の胸を穿とうとしていることに反応が遅れた。防衛のために体を動かさなくてはならないのに、赤い爪と短剣が放つ禍々しい気配で呆然としてしまった。
しかし、リシェルの意識が働かずとも、体は勝手に動いていた。鞘から剣を素早く抜き、刃を刃で受け止めた。一瞬の膠着の間、リシェルは視線を上げて襲ってきた者の正体を確かめた。見たことのない男だ。だが、背格好はグラネラで見た赤い爪の男に酷似していた。
「何者ですか」
男は答えなかった。短剣を引っ込めて懐に収めると身を翻して逃走していく。リシェルは追いかけようとしたが、背後の声で追走を断念せざるを得なくなった。
「こっちに一人残ってるぞ! あの女も赤鷹の仲間だ、殺せ!」
オーデュボンの号令で、集団の半数が狙いをリシェルに変えた。剣を鞘に戻す暇もなく、両手にそれぞれを持ったまま、彼らと戦うことを強要された。
怒りに身を任せて刃を振るう暴徒たちに、ドライスのように手加減をしてあげられるほどの力量はないという自覚がリシェルにはあった。抜き身の剣は防御のために使うことを心に留めて、鞘を振るって戦った。
幸いなことに彼らは怒りに、というより魔の気配に狂わされていたおかげで動作に無駄が多く、かろうじてリシェルでも対処が出来た。次々と彼らを正気に戻しつつ打ち倒していく内に、剣を鞘に収める余裕が生まれた。魔の気配が消えていき、リシェルの近くには一際強い気配だけになった。
オーデュボンは他の暴徒よりも体格が良く、持っている剣も長大な物だった。オーデュボンにドライスの影が重なる。ドライスとの訓練の延長かのように思われた。ドライスには訓練であっても、一撃たりともまともな攻撃を与えたことはない。果たして、鞘に収まったこの剣でオーデュボンの身に濃く纏う気配を斬り払うことが出来るか。
そうした憂いが沸き立つことは全くの無意味であることをリシェルは忘失している。リシェルが持つ聖なる神の剣が今まで発揮した力を持ってすれば、どんな障害も困難も些事となる。リシェルはオーデュボンの長剣の一振りを鞘で受け止めた時、虚しい思いを抱いたのも、そうした力の存在を自覚しきれていなかったからだ。
鞘に眠る刃から体だけが感じ取れる音響が聞こえて、砕けた刃を伝ってオーデュボンの魔の気配を溶かしていく。酷く濃い気配はしぶとく残っていたが、剣の力は平然とそれを押し流す。波状となった音響は魔の気配が完全に消えるまで止まず、衰えることもなかった。
のたうつオーデュボンを見ているのが辛かった。彼から魔の気配が消え去り、荒い呼吸だけが残ると、リシェルは安堵の目でオーデュボンを見下ろせた。弱々しい目だけが、リシェルを見上げて何かを訴えている。
「もう平気です。貴方は魔の力に操られていただけなんです」
返答として正しいか、自信はなかった。だが、オーデュボンの視線は地面に落とされて、そのままになった。
リシェルは辺りが静かになっていることに気付き、路地の方を見た。荒れ狂う暴徒たちは一人残らず倒れて動けなくなっていて、ドライスとハリスが彼らを跨ぎながら此方に向かってきていた。
「よくやった」
ドライスから労われたが、素直には喜べなかった。自分の手柄ではない。アルテナの剣が解決してくれたことだ。
リシェルは小さな頷きで返した後、オーデュボンをドライスとハリスに任せて、魔の気配を纏ったままの倒れ伏す暴徒たちを浄化していった。彼らはただ鞘を当てられただけで正気に戻っていく。それが特別な力によって引き起こされる現象だとしても、自分がしているのは鞘を当てることだけだ。成していることの手応えのなさがリシェルを戸惑わせていた。
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