閑話 それぞれのGW【青島編】

 新学期が始まって一ヶ月。五月上旬になると多くの人々は歓喜に包まれる。


 ──そう、ゴールデンウィークがやって来た!


 この世の中にはGW期間中も身を粉にして働いている人もいるのが現状なのであまり心の底からは喜べないが、それもまたこの季節特有の感情でGWの訪れをひしひしと感じる。


 何がともあれ僕は一週間近くも合法的に家に引き篭もることが出来るのだからまさしくゴールデンなウィークだ。


 さて、何をしようか。


 夏休みなどの長期休暇前にもよくあることだが、何をしようか本当に迷う。

 あれもしたい、これもしてみたい、やれてなかったあれをしよう、久しぶりにやってみよう等とやりたいことリストにどんどん項目が追加されていく。


 それならいっそのことスケジュールを組もうかと考えたが、せっかくの休みなのに時間に縛られるのはそれはそれで嫌だという結論に至り没案となった。


 結局、したいことをのびのびとやって過ごそうという自堕落極まりないスローガンを打ち立て、実行していくことにした……のは失敗だったようだ。


 ──のびのびしすぎて特に何もしないままGW最終日になってしまった!


 まだあと四日あるし……三日あるし……二日あるし……という油断がこんな事態を招いてしまった。僕としたことがとんでもない大ミスだ。きっとこの一ヶ月、平穏とは無縁の日常を送ってきたから何かが乱れてしまっていたのだろう。


 朝起きて、今日こそはしたいことをしようと決心する。見たいアニメも溜まってるし、未読の本も積み重なっているし、ハマってるゲームだってやりたい。

 たくさんあるが予定を詰め込んでいけばきっと大丈夫だ。絶対に最高の最終日にしよう。


 よし、まずは朝の読書からだ。この前買った好きな作品の新巻から読もうと本を手に取った時、僕をどん底へと突き落とす一言リフトオフ。


「ハルー、買い物行くぞー」


 部屋の外から聞こえてきたそれは悪魔の言葉だ。このままでは僕のせめて最終日だけは満喫しよう計画が破綻してしまう……。


 僕は可能性に賭けてスルーをすることにした。もしかしたら諦めて一人で買い物に行ってくれるかもしれない。


 ──孤独スキル【寝たふり】発動。


「寝たふりなんて私に通用すると思ったか!」


 そう言うと僕の部屋にずしずしと入ってきて僕のスキルを打ち破った。やはりダメだったか……。


「さ、はやく着替えて! 最終日だし、楽しまなきゃ!」


 僕は流唯さんには逆らえず、仕方なく着替えて外出の準備をする。内心、ため息が止まらない。


 ──さようなら、GW。


 なんとも切ないお別れだ。感動のシーンだ。涙腺崩壊必須案件だ。


 家を出る時、僕はさようならと心の中で呟いた。

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