第5話[ヲタク、説明を聞く]

皆が思い思いに魔法の練習をしている中、俺は一人、訓練場の隅でセナンさんに質問していた。


緒拓「すみませんセナンさん、急に話しかけて」

セナン「いやぁ、何も問題ない。それで何の要だい?」

緒拓「実は、色々気になることがあって・・・」


俺はセナンさんに、気になること、すべてを聞いた。

まず初めに聞いたのは魔法と魔術の違いだ。

俺のスキル「魔術保管」は、対象とした魔術を保管する。

それを斎藤さんの「炎魔法【ファイア・ボール】」に使ったとき、魔術に“変換”すると言っていた。

何かしらの違いがあると考えるのが自然だろう。


セナン「そうだな〜、魔法は完成品を打ち出すもの、魔術はその材料となる粘土・・・とでも言ったところかの?」

緒拓「どういう事ですか?」

セナン「まず魔術の説明からするかの」


そう言って、セナンさんは説明を始めてくれた。

まず初めに魔術とは、属性が付与された魔力の塊を顕現させるものらしい。

属性はそれぞれ「炎」「水」「風」「地」「光」「闇」の6つだ。

そのいずれかの魔力が付与されたものが「魔術」と呼ばれている。

他にも属性の無い魔力を運用する無属性魔術という物もあるらしいが・・・。

こちらは効率が悪く、はっきり言って使う意味は無いらしい。

そして魔術の利点は、何と言っても自由度の高さらしい。

自身が望む形に加工して、その時に最も適切な形・効力を持って発動させることができる。

欠点は発動難易度の高さだ。

属性を付与した魔力の展開は誰にでもできることだが、それを加工するにはかなりの才能と技術が必要になる。

中には音楽や舞を絡めることにより、「儀式魔術」として安定化させることもできるが・・・。

かなりの大人数が必要で、準備には手間もかかるので実用性はあまりないとのこと。


次に魔法だが、こちらは型にハマった、決められた形を作り、発動することができるものらしい。

一種類の魔法では汎用性が低いとのこと。

しかし速射性に優れ、魔術と違いスキルを持っているだけで誰でも変わらない性能で発動できるので、実践ではこちらの方が好まれるとか。


つまり、俺の魔術保管は相手の完成品、または簡略化された魔術と言い換えても良い“魔法”を分解し、属性が付与された魔力を保管する、といった感じなのだろう。


しかし・・・魔法が誰にでも扱える物であれば、なぜ練習が必要なのだろうか?

全く同じ物であるならば、特に練習する意味はないと思うのだが・・・。

そのことを聞いてみると、セナンさんは何やらややこしい説明をして来た。

専門用語も多く、正直理解はできなかったか・・・。

噛み砕けば、魔法で生み出された者は同じ大きさ、質量のボールであり、それを投げる速度を高める練習をしているのだとか。

まぁ、このへんはどうでもいい。


魔術は自由度が高く汎用性が高いが、失敗確率も高い物。

魔法は自由度が低く一つだけでは汎用性が無いが、失敗率は低く速射性に優れた物。

これくらいに考えておこう。


緒拓「なるほど・・・」

セナン「納得行ったかい?」

緒拓「はい!おかげさまで」

セナン「それでは代わりに、こちらから質問を良いかのう?」

緒拓「何でしょう?」

セナン「君はどうやって、それだけの力を得たのじゃ?」


セナンさんは、まるで俺の心の中を見透かしたように言う。

その言葉に、俺は何故かビクリと体が跳ねた。


緒拓「どういう・・・意味ですか?」

セナン「簡単な話しじゃよ、ワシの鑑定スキルの力じゃ、今の君の抗魔力は10前後、しかし先程の抗魔力は300以上はあった、なぜ急にあそこまで強くなったんじゃ?」

緒拓「それは・・・」


限界化のスキルのおかげだ。

WPを消費し、その1/100だけ特定のステータスを一分間上昇させる。

その力を使い、抗魔力を高めた。


セナン「抗魔力300と言えば、熟練の魔術師でもなかなかいない。どうやってそこまでの力を得たのか、個人的な興味があるのじゃ。もちろん、口外する気はない」

緒拓「・・・そう言う事なら。強いていえば、スキルの力です」

セナン「ほほう・・・?それで、そのスキルは何という名前じゃ?【魔硬化】か?それとも【魔神の加護】かの?」

緒拓「・・・【限界化】です」

セナン「げんかいか?」

緒拓「はい」

セナン「聞かぬ名じゃが・・・職業固有のスキルか」

緒拓「職業固有のスキル?」


そう言えば、職業という物があったな。

勇者に聖女に剣聖に、そして俺のヲタク。

・・・改めて見ても、ファンタジーから逸脱した職業だよなぁ・・・。


セナン「職業にはの、それぞれ固有スキルがあるんじゃ、例えばワシの職業、光魔導士の固有のスキルは【光の導き】じゃ、効果は・・・簡単に言えば、光の魔法が強くなる」

緒拓「なるほど・・・」

セナン「君のげんかいかのスキルも、きっと君の職業固有のスキルなんじゃろう、ワシの【能力鑑定】ではステータスしか覗けんので、はっきりとは言えんが・・・」

緒拓「そうですか」


固有スキルねぇ・・・。

俺のスキルは【魔術保管】【品定め】【限界化】【Wショップ】の四つ。

魔術保管と品定めを除き、確実にファンタジーには無い物だ。

そう言えば、品定めのスキルを使ったことは無いな・・・。

スキル発動は基本的に声に出すだけでいいんだよな・・・?


緒拓「【品定め】」


一言、呟くように言うと、視界に大量の▼マークが浮かぶ。

これはどうすればいいんだ?

ひと先ず、一番近くに表示されている▼を見る。

すると、▼マークが広がるようにして、以下の内容が表示された。


—————————

「アルミラ―ジの皮防具」

+耐久力4 +抗魔力5

【打撃耐性Lv2】

・アルミラ―ジの皮を加工して作られた防具、打撃に対して強い。

—————————


なるほど・・・。

大体わかった。

【品定め】は物品限定の鑑定スキルだ。

発動すると、適応可能なものにアイコンが表示される。

その中から見たいものに集中すると、よく見ることができるらしい。

なるほどなるほど。

今見たのは、俺が今着ている支給服の鑑定結果らしい。

そうすると、見たいものがある。

俺は皮防具の衿を摘まみ、その中から見えるココロさんのTシャツを鑑定する。


—————————

「星見ココロの限定Tシャツ(古)」

+耐久力1

【WP回復(最小)】

・12時間着用することで、WPを1回復する。

—————————


・・・。

(古)ってなんだよ。

確かに購入は2ヶ月前だし、結構な回数着ている。

しかし!

丁寧に洗濯しているし、新品同然のはずだ。

なのに!

(古)って!(古)って!

はぁ・・・。

あれか?俺が汚れてるからか?

ならば納得だな。

俺が汚いから(古)なんていう不名誉な称号が付いてしまうんだ。

今日からはもっと清潔にしよ。

そんな事を考えながら、俺はみんなの訓練の様子を見続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界に飛ばされたワイ氏、職業がヲタクなんだが・・・。でも意外と使えるんじゃね? ヘキサン @3404

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ