第2話 12年前

 12年前、私は終着駅近くの中学3年生だった。コミュ障の私は、友達といえる友達もおらず、中学最後と熱の入るイベントにも興味がなく…。かと言って学校が終わってすぐに帰宅すると、学校生活や受験を心配する母の小言…。それを聞くのも嫌で、学校近くの小さな公園で、小説を読んで時間を潰していた。公園といっても、古びた滑り台とベンチが一つあるだけの、人気ひとけのない公園。「夕焼け小焼け」の音楽が鳴るまで、そのベンチで過ごした。静かでお気に入りの場所だった。


 ある日、公園の隅で一人でサッカーボールで遊んでいる小さな男の子がいた。

一瞥したものの、知らん顔をしてベンチに座った。


 夕焼け小焼けの音楽が鳴り終えた時、

「ゆうー、お待たせ!ごめんねぇ。」

と息を切らしながら、男の子の祖母らしき人が迎えに来た。

一瞬、自分が呼ばれたのかと焦った。

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