間章 ダンジョンでのゴミ拾いオフ会

第31話 追放者の栄光?




 幸運な者――――それは彼のような者を言うのだろう。

 たまたま、ガチャをまわした結果――LRの魔剣を当てた男。しかし、パーティーの共有資金をも勝手に借りてガチャをまわしていたということで、パーティーを追放された――二見勇気のことを。


 もし、魔剣が出ていなければただパーティーを追放された上に、返す宛もない借金に苦しめられて詰んでいたのだ。

――これを幸運といわずして何を幸運というのだろうか。


 ――悪評が広まり、追放されし魔剣士(笑)という不名誉なあだ名となっているが、二見としては、何故か誇らしげに名乗っているので、本人が気にしていないのであれば、それは差したる問題ではないのだろう。



 そんな追放されし魔剣士(笑)は今――――俗に云うハーレムパーティーを作っていた。

 彼のパーティーは現在、三人の女冒険者がおり、男は二見だけである。


 今でこそ、リーダー面しているのは二見だが、その三人の女冒険者達は、元々パーティーを組んでおり、上層と中層を活動拠点にしている優秀な冒険者達だった。そんな彼女達が、パーティーを組んで貰えず、一人ぼっちでいた二見を拾う形で、作られたのが現在のハーレムパーティーである。


 尚、灰華が下層に当たり前のように行っているため分かり辛いが、中層に入れるだけで十分に優秀な冒険者だ。

  

 自分より優秀な女冒険者達に勧誘されて、まさに人生は薔薇色――――そんな風に見える。

 

 だが、このパーティーは少し問題があるのだ。




――――――――――――――――




 灰華が倒した氷の巨人を始めとして、イエティ、フロストウルフ、氷結スライム、等の氷系モンスターが生息する氷系ダンジョン。


 灰華達が配信していたダンジョンではない、別の氷系ダンジョン。その中層に入ったばかりの場所に、四人の冒険者達がいた。


 ――二見率いる、ハーレムパーティーである。


 そんな彼等は、ちょっとした氷の息吹を放つことが出来る、一匹一匹は弱いものの、数十の群れで行動する中層のモンスター、フロストウルフに囲まれていた。


「――――――――ッ!!!!」


「ひっ……ひぃぃぃぃぃぃ!!!」


 フロストウルフが単体では弱いと言ったが、それは他の中層モンスターと比べてであり、ゴブリンより普通に強い。

 そんなフロストウルフに対して、魔剣無しでは、ゴブリンと互角ぐらいの強さの二見はもちろんビビりまくっている。


 そんな縮こまっている二見に、ハーレムメンバーは呆れ果てているようだった。


「はぁ……またか」

 

「フロストウルフぐらいで悲鳴を上げないで欲しいわ……」


「うるさいわねー」



 この時点で、既にお気付きだろうが彼女達は二見を良くは思っていない。


「フロストウルフか……今回は魔剣を誰が使う予定だった?」

 

「えっと、たしか順番的に――」


「縮こまってる最強の魔剣士(笑)の番だったわ」


 この会話から分かるとおり、二見が当てたLR魔剣は、パーティー内でローテーションで使われていた。まぁ、


「……今回も駄目そうだな。では、次の次の番の私が使おう」


「もうあいつ順番に含めなくて良くない?」


「そうはいかないでしょ……あいつが持ち主なんだし」


 縮こまり、震えていて戦えない二見君はさらっと順番を飛ばされているが。これが日常だった。


「ハッ……!!」


 パーティーの女冒険者の一人がLR魔剣を振りかざし――生み出された炎は、一人を除いて恐怖をおくびも感じていないことから、警戒して迂闊に近付かなかったフロストウルフの群れを焼き尽くした。


「何度使っても圧巻の一言だ……!」


「魔剣最高ー!!」


「さすがね……!!」


 

 これが二見のハーレムパーティーの真実である。彼女達にとって、真メンバーは二見ではなく、魔剣なのであった。

 もはや本体は魔剣だと思われていてもおかしくない。

 いずれは、二見の構成成分は「魔剣=95%、水分=3%、ゴミ=2%」と言われるようになるのかもしれない。いや――そもそも、そういじってくれる相手すらも現れるかも怪しいのであった。




――――――――――――――――



 なお――――帰り道にて、二見は魔剣を使って一応活躍(?)をした。


 引き返して帰ろうと上層まで上がってきた二見ハーレムパーティー。

 良いところを見せれなかった二見が悔しく思っていると、

 

 プルンっとバウンドしながら、一匹の氷結スライムが行く手に現れた。

 二見は敵が現れたことに笑みを浮かべ、パーティーメンバーに向かって叫ぶ――


「みんなは手を出さないでくれ! 俺一人で十分だ!

 来い、氷結スライム! この炎の魔剣を持ちし最強の魔剣士、二見勇気が相手になってやる!!」


 興奮した様子で鼻息荒く、息巻く二見。相手がドラゴンとかならカッコいいかもしれないが、属性スライムが相手だと滑稽である。

 現に手を出すなと言われた、二見ハーレムパーティーの面子はというと――


「はぁ……またか」


「上層に戻ったら急に元気になるわよね……」


「……あんな相手に使うなんて魔剣がもったいないなぁ……」


 普通に呆れていた。



 二見は魔剣で氷結スライムをあっさり倒し、


「よしっ! みんなもう大丈夫だぞ!」


 振り返って、他メンバーに右手で魔剣を上に掲げてカッコつけて見せた。


「……キャー、カッコいいぞー(魔剣が)」


「……キャー、サイコーね(魔剣が)」


「……キャー、強いわー(魔剣が)」


 他メンバー達が、魔剣(二見)がパーティーを離脱しないように適当に相槌を打ち、二見を持ち上げている。これが、二見のハーレムパーティーの日常なのであった。

 入るパーティーを誤ったようにしか思えないが、悪評によって他のパーティーに入れなくなった時点で、どのパーティーでも二見はこうなる運命だったのかもしれない。





 




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