第二章 闇ガチャ化計画

第16話 ソシャゲガチャの闇も取り入れよう


 

 ガチャ第一弾が無事終了してから、半月が過ぎ、田中達はガチャ第二弾の準備に取り掛かろうとしていた。

  

 会議の場所として選んだのは、ファミレス。

 ドリンクバーとランチを頼んだ田中達は、ジュースを飲みながら作戦会議を始める。

 ちなみに、田中はここでもハンバーグを頼んでいた。


 

「第一弾ガチャが終わってからずっと情報収集してたけど、大人気になってるよなー、魔剣」


「情報収集してたんだ。意外」


「あぁ。俺は情報通だからな。ほら、これとか凄い絶賛されてるだろ?」


 田中は灰華へとスマホを手渡して、証拠を見せるが――


「……掲示板?」


 スマホに開かれていたのは掲示板サイトだった。


「掲示板こそが、たくさんの人の意見が分かる素晴らしい情報源さ。俺はいつも確認している」

 

 スマホで第一弾ガチャ関係の掲示板を手当たり次第に見ながら、飛び交う爆死報告を見て愉悦していたことを情報収集と田中は考えているようだ。


「あてになるの?」


「意見とかだけならなるんじゃないか?」


「……ならいいけど」


 掲示板はあくまで意見を取り入れる場所として考えるのであれば良いのかもしれないという考えらしい。

 田中の情報源問題についての話はこれで終わり、次のガチャについての打ち合わせが行われ始めた。

 

 

「じゃあ次のガチャを何にするかとかの話を始めるかなー」


「ここで?」


「あれ? ファミレスじゃダメだった? 違う店を希望するならそっちでもいいぞ?」


「情報漏洩の問題」


「あー、そういう意味ね。でもこのガチャ屋、魔剣を作れる奴がいないと真似できなくない? 」


「……たしかに」


「それにここで話すのは、バレても別にいい情報だけにするつもりだし。バレたとしても逆に絶望するだけさ」


 田中はニヤリと嗤った。


「……どういうこと?」


「次のガチャでは、前々から話してたソシャゲのガチャのあるシステムを参考にしたものを追加しようと思うんだ」


「……?」


「忘れた? これだよ、これ」


 とある物を手で持ち、灰華に見せる田中。


「……! 思い出した……あれを次から追加するの?」


「そうだ。初めのガチャからやったら、まわしてくれないかと思ったから止めたけど、もうキーホルダーの排出率を上げじゃったし、このノリで追加しちゃおうと思う」


「……可哀想」


「大丈夫。 ソシャゲプレイヤーならいつも味わっている地獄さ……。俺も何度、あのソシャゲのガチャシステムに地獄を見させられてきたことか……。あれこそがソシャゲガチャ界の真の闇……」


「そこは似せなくても……」

 

 ソシャゲのガチャのとあるシステムについての話を進めるごとに、田中の目は濁り、死んだ目になっていった。よっぽど、トラウマなのだろう。


「前回のガチャは優しすぎた……。なんだよ……引き換え券が出たら、取りあえず魔剣は確定って……」


「……誰もまわさなくなりそう」


「いや、そんなことはさせない! 高みの見物をしている奴らも被害者になってもらわなければ!

  ……だが、メリットも掲示しなければならないのも事実だ。」


「どうするの?」


「前回通り、魔剣の紹介配信をする予定だからその際に、途中で重大発表とでも言って次回ガチャから登場することを伝える。それによってどう変化するのかを言葉だけじゃなく、配信中に実際に見せることで、まわす側にもメリットのある物だということをちゃんと分かってもらえばいい」


「分かった。私の出番だね」


「そうなるな。頼んだぞ、灰華」


「任せて」


 田中は目を閉じて、腕を組み、少し考え始めた。何か言い忘れたことでもあるのだろうか?

 

「あー……うん、やっぱり必要かな。

 ごめん、灰華。配信する上で、注文があるんだけどさ――初めは魔剣なしでモンスターを倒して欲しいんだ。」


「別にいいけど……何故?」


「魔剣の価値が広まったことで、厄介事が起きてくるだろうし、抑止力として、魔剣なしの灰華の強さもアピールしておいてほしい」


「了解。…………それはそうと今回も魔剣は壊さない様に気をつけた方がいい?」


「いや、今回はいつも通りに湯水のように使ってくれていい。むしろその方が、みんなたくさんの魔剣が欲しくなってガチャをまわしてくれそうだ」


 湯水のように魔剣を消費する――――ガチャで爆死した者達は発狂するのではないだろうか?

 配信を見る人のメンタルが心配である。


「わかった」


「……あと決めてないのって何かあったっけ?」


「魔剣の属性とか?」


「あー……ソシャゲガチャの例のシステムを自分が実装する側にいることが楽しみすぎて、すっかり忘れてた。うーん、まぁ派手な雷とかでいいかな? 灰華はどう思う?」


「雷でいいよ」


「それじゃあ、雷で決まりね。雷かー、水系のダンジョンで良いところ探さないとなー」



 そんなこんなで話はまとまり、頼んでいたご飯も食べ終わった二人は店から出て、ダンジョン配信に向けて、配信する水系ダンジョンの選定や持って行く物などの準備を始めるのだった。




――――――――――――――――





 田中はもちろんのこと、ソシャゲプレイヤー達に地獄を見させ、苦しめているという、とあるガチャシステム。

 果たして、田中が言っていた、ソシャゲガチャ界の真の闇とは一体何なのだろうか――――?


 

 

 

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