第17話 雷の魔剣 紹介配信




 水系ダンジョン――言葉通り、水系のモンスターが出現するダンジョンである。

 上層は水溜まりがある湿っただけの洞窟という具合なのだが、徐々に規模が拡大していき、下層以降になると打って変わって、水溜まりから湖へと一気にグレードアップする。


 そんな水系ダンジョンの下層の入口にて田中達は雷魔剣の御披露目配信を始めようとしていた。

 弱いモンスターに魔剣を使うのを見て喜ぶ者は少ないと考えたため、上層や中層から配信するのではなく、下層から配信することにしたようだ。

 

 

「そろそろ始めるか……灰華、準備は大丈夫か?」


「大丈夫」


「じゃあ始めるか」


 灰華の了承を得た、田中は配信を始める。


 “おー! 始まったー!!”

 “待ってたぜー!!”

 “次の目玉は何だ!?”

 “ガチャ!”

 “魔剣欲しい!”


 配信を開始すると共に、次のガチャの犠牲者達が一斉にやって来る。

 だんだんと増えていっているので、第一弾の魔剣ガチャに期待している者は多いのだろう。


「こんにちはー。ガチャ屋チャンネルにようこそー。今日は、次回の目玉の紹介と実際に使ってみるという配信をやっていきます。前回同様、灰華が魔剣で色々なモンスターを倒していきます」


 “ひゃっほーぅ!”

 “早くみたい!!”

 “灰華ちゃんカワイイー!”

 


「皆さん、お待ちだと思うので、早速第二弾のガチャの目玉を紹介しようと思います!」


 “おぉーー!!!”

 “キターーー!!!”

 “イェーーイ!”


「今回の魔剣は―――――――」


 田中は灰華へと合図を送り、スマホを灰華に向ける。灰華は合図を受け、手に持った魔剣を湖の方へと向けて振り――――稲妻が横に走った。

 田中は、稲妻が走り終わった後、宣言する。


「――――雷の魔剣です!」


 “雷の魔剣キターーー!!”

 “カッコエエーー!”

 “ほしいいぃぃ”


「それじゃあ、探索をしながら魔剣を使っていきますので、魔剣の性能を見てガチャをまわすか検討してくださいね」


 こうして、田中達は水系ダンジョンの探索を始めるのだった。



――――――――――――――――



 田中達は順調に下層を探索していく。

 ファミレスで相談した通り、配信から少しの間は、灰華が魔剣なしでモンスターを倒していたのだが――


「えい」


 マシンガン以上の威力と速さの泡を連射するモンスター、バブルクラブの群れを灰華は迫り来る泡をすべて避けながら、殲滅する。

 バブルクラブを灰華は素手ではさみを引きちぎり、蹴りで頭を陥没させるなど、容赦なしの大暴れだ。

 そのあまりの暴れっぷりように視聴者はややドン引きしていた。


 “一方的過ぎてモンスターが可哀想になってくるな……”

 “うわっ……カニの脚やハサミが飛びまくってる……”

 “う゛ぅぅ……かに味噌……当分食べれないかも”



 そして、とうとう雷の魔剣のお披露目も行われる時が訪れた。


 バブルクラブのあらかたを殲滅したところで、群れのボス個体と思われる、20mはある巨大なバブルクラブが現れたのだ。


 “デッカいカニだーーー!!”

 “強そう!”

 “魔剣そろそろ使うのかな??”


 迫り来る巨大なバブルクラブ――――が、灰華が雷の魔剣を振るい、稲妻に撃ち抜かれ、出オチしてしまう。


“カニもう死んでるじゃん!”

“魔剣ツヨスギーーー!!”



 


 その後は、水中から人を簡単に貫いてくる水鉄砲攻撃で遠距離から攻撃をしてくる魚系モンスターの対処法についてを実演して見せたりしていた。


「水中から攻撃してくる魚系モンスターって倒すのは面倒ですよね? ですが雷の魔剣があればもう大丈夫です!」


 田中が言い終えると、灰華は湖に向かって雷の魔剣を撃ちまくる。

 魔剣は何本も砕けることとなったが、数分間ひたすらに繰り返し、結果的に湖内のモンスターをほとんど倒せたのか、攻撃は飛んでこなくなり、静かになった。


“…………魔剣が勿体ない!!”

“そんな使い方出来るほど魔剣が当たらないよ!!”

“水中の敵を簡単に倒せるのはマジでヤバいな……魔剣が何本も必要なのはやっぱり勿体ないけど”


 



 雷の魔剣の性能紹介を続けていく田中達、最後に前回の配信で倒した氷の巨人同様、下層の番人的なボスモンスターであるクラーケンもその犠牲となった。


「えいっ」


 灰華はひたすらに水中に向けて雷の魔剣を投擲しまくる。

 一本の伝達範囲では足りなかったものの、魔剣の圧倒的な物量でカバーしていた。


“魔剣が使い捨てにされてる…………!?”

“ひでぇぇ”

“クラーケン可哀想すぎだろww ”



 たまに反撃をしようと足を水面から出して攻撃をしようと足掻いていたクラーケンだったが、逆に直接稲妻を浴びてダメージを受けるはめになり、逃げるしかなかった。

 しかし、湖には脱出口が無いために、袋のネズミである。



 そして少しの時間が経ち、雷の魔剣の猛威にさらされ続け、痺れたのか浮いてきたクラーケンに灰華はトドメを刺した。



 

 クラーケンが倒された後、田中は締めに入る――――

 

「雷の魔剣の性能は、十分に皆さんに伝わったと思います! これが次回のガチャの目玉というわけなのですが――――なんと一つ重大発表があります!!」


“重大発表……!? なんなんだ!?”

“気になる!!”


「それは――――――」

 


   


 


 


 


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る