第8話 ガチャ第1弾終了。ラストワンは誰の手に?
それからもガチャは順調にまわされ続け、LRの魔剣もとうとう排出された。
当てた人物は転売して、そのお金で余生を送るつもりだったようで、冒険者を辞めること宣言。
その冒険者は、転売することを聞いたガチャをまわし終えた冒険者達に我先にと自分に売ってもらおうと囲まれ、どこかに連れて行かれるのだった。
そうしてLRの魔剣は残るはラストワン賞のみとなった。
ちなみにガチャガチャは中が見えないようになっているため、いつ排出し終わるのかはその時まで誰にも分からない仕組みである。
つまり今、列に並ぶ者達は自分の番の時に最後の一つを引き、ラストワン賞の最高レアの魔剣を獲得することを祈っているのだ。
そして――――とうとう終わりの時が訪れた。
「次こそ頼む……!!もう、そろそろ無理してかき集めたお金が尽きちまう……!せめて……どのレアでもいいから俺に魔剣をくれー!神様ーー!!」
少年がガチャガチャのハンドルを握り、ガチャの神?に祈りを捧げながら、ゆっくりと…ゆっくりとまわしていき、出てきたカプセルを目を閉じながら、開けた。
少年が再び目を開けると、そこには――――素敵なキーホルダーが入っていた。
「ありえねぇ……。こんなことって……俺には後が無いのに……」
絶望しながら、トボトボと帰っていく少年。しかし――
ピピピピッ――ピピピピッ――
ガチャガチャから音が流れ始めた。
それを聞いた列にまだ並んでいる者達に不穏な空気が伝染していく。
「おい……まさか?」
「今のがガチャの最後の一つだったのか……?」
「嘘だろ……?俺、まだ一回も引けてないぞ……?」
「くそっ!!ラストワン狙いのために遅めに並んだのが仇になったか!」
そう、この音はガチャガチャの内蔵されるカプセルが尽きたことを知らせるアラームだった。
同時にアルバイトの人物がガチャが終了したことをスピーカーを使って発信した。
『ガチャガチャは売り切れましたので、これにて終了いたします!最後にガチャガチャを引いた方は、運営の元へご参集ください』
「くそーーー!!やっぱりかぁぁぁ!!」
「ってことは、あのガキがLRの魔剣を貰えるのか……」
「いいなぁぁ……」
そして見事にラストワンを当てた少年はというと――――
「信じられない……?これは夢か……?」
現実味が無さ過ぎて呆けていた。
しかし、再度の招集の声が聞こえたことで、我を取り戻し、急いで運営のいる場所へと駆け寄っていくのだった。
運営――――田中と灰華がいる場所では、ラストワン賞の魔剣を渡す準備をアルバイト達がしている。
そんな中、田中達は会話をしていた。
「素晴らしい結果だなぁ」
「そうなの?」
「あぁ。だって最高レアの魔剣を偶然当てた少年が成り上がっていくとか物語性あるじゃん?」
「ふーん……でもあの人、すごく弱いよ?」
「え、そうなの? 俺、そういう実力を読むとか出来ないんだよなー。モンスターで例えるとどれくらい?」
「…………ゴブリンぐらい?」
「ゴブリン…………まぁ、これからだろ。おっさんって歳じゃないんだし」
「だといいね」
余りにひどい評価。少年は泣いていい。
気まずくなった田中は、何か話題を変えようと周りを見渡し、少年に仲間らしき人物3人が近づいているのを発見した。
「あ!ほら、ラストワンを当てた子の仲間っぽい3人があの子に近づいてるぞ。胴上げとかやるのかな?」
「……そうなの?でもあの人達、敵意向けてるよ」
「……?あー、分かった。嫉妬だなそりゃ。なんでこいつだけーって嫉妬してるのさ」
「へー」
「興味なさげ……違う話に変えるかー」
「うん」
田中も灰華もそれっきり、少年について話すのをやめ、別の話をし始めた。
一方その頃二人が話していた、少年の方はというと――――修羅場となっていた。
二人の少年達と一人の少女に囲まれ、無言で睨まれている。
全員もれなく青筋を浮かべ、顔を真っ赤にしていることから、怒りの程度が分かる。――――彼らは激怒していた。
「……」
「……」
「……」
睨まれている少年は畏縮しているのか、震えて床を俯いている。
数秒後、囲んでいるうちの一人の少年が少し前に出て、ゆっくりと口を開いた。
「とりあえず、いろいろ言いたいことがある。だけど、その前にこれだけ言っとく。お前、もうこのパーティーから追放な。」
「なっっ……!?待っ――」
「待たない!! これは決定事項だ!!」
「そんな……」
「正直……もう顔も見たくもないが、追放する前にやっておかないといけないことがあるからな。わざわざここに来たんだ」
突然パーティーから追放された、今日のラッキーボーイに周囲の冒険者達は騒ぎ立て始める。
「追放ってマジか。何やらかしたんだ?あいつ」
「ラストワン賞で運使い果たしたんじゃね?」
「あ! ってことは最強の炎の魔剣を持った奴がフリーってこと!? パーティーに勧誘しようかなー」
「ズルいぞ! 俺のパーティーに入ってもらうんだよ!」
「あの元パーティーも運無いなぁ……。LR魔剣の遣い手を追放なんて」
「何があったか分からないけど、話ぐらい聞いてあげれば、魔剣が当たったってことが分かったのに……」
追放された後に勧誘しようと冒険者達は考え、話が終わるのを待つことにしたようだった。
魔剣を当て、順風満帆なように見えた少年が何故こうなったのか。それは数時間前に遡る――――
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