飛翔(BL)

夢月みつき

本文 翼と翔

中学二年の田中翼たなかつばさは、男友達の島村翔しまむらしょうの家に泊まりに来ていた。


翔は翼より、一つ年上で男っぽく一方、翼は翔と違って中性的な顔立ちで、

身体が小柄なので良く、女子と間違われる事をコンプレックスに思っていた。



それでも、対等に扱ってくれる翔の事をとても、信頼していたし疑う事もなかった。

自分が、他の男子と違う事は、幼い頃から自覚していた。

翼は男でありながら、翔に恋愛感情を持っていたのだ。



昼間見かけた信じがたい光景、翼は思い切って翔に問いただしてみた。

「翔、お前昼間、年上の女性と歩いていたろ? あれ、何なんだよ…俺、しっかり見たんだぞ」



すると、翔はクスッと笑い、翼の頭をポンポンと軽く叩いた。

「何だ? 翼…俺に焼きもち焼いてんのかよ?」

「焼きもちじゃないっ!」

翼は真っ赤になってこぶしを振り上げた。


しかし、翔は翼の拳を軽く掴むと、耳元でささやいた。

「焼きもち焼くお前…すっげぇ可愛いよ」

と言うと翼の耳たぶを甘噛みした。



「あ…」

ぴくんと反応し、頬を染める翼。そのまま、唇をすべらせ首筋に舌をはわせていく。

「あ…翔っっ!」

翼は女のような甲高い声を上げた。


「お前、やらしー声だすなぁ」

くくとのどを鳴らし、翔は翼の頬を撫でるとそのまま、唇を奪いベッドに押し倒した。



その時、突然部屋のドアが開き若い女性が入ってきた。

翔のえりを掴み無理矢理、引き剥がし翔の頬を平手打ちした。

「なにやってんのよ! 翔、男同士で! 気持ち悪いっ」


翔は、舌打ちをすると悪態あくたいをついた。

「うるせえ。ババア! 勝手に部屋入ってくんな!」



翼は驚きのあまり、ぽかんと口を開けている。

翼は思った。昼間、翔と一緒にいた女性だと。

羞恥心しゅうちしんに襲われ動機が止まらない。

「あっ、あの翔。このひとは誰なんだ?」



恐る恐る問いかけた。

「ああ、俺の姉貴のあかね」

翔は不機嫌そうに答えた。



思わず胸をなでおろすと、同時に翔の義理の姉が自分を汚らしいものでも見るような目で見ているのを感じた。


自分の横で翔が震えているのを肌で感じ、あかねにいきどおりを覚え声を荒げた。

「出てけよ…翼をそんな目で見るな! 糞婆クソババア!」



「ふんっ、愛人の子のくせにいきがってんじゃねぇよ! この糞餓鬼クソガキ

社会の義務も、果たしていない人間が意見を言う権利はないっ!」


その言葉に翔は頭に血が上り、いきなりチェスターの上の電気スタンドを掴み、

あかねに向けて投げつけた。


「きゃ!」


スタンドは、とっさに顔をかばったあかねの腕に当たって落ちた。

「お前らキモいんだよっ! こんな事して、お父さんにチクッてやるから! お母さん!翔がー」

あかねは、捨て台詞を吐くと、部屋からそそくさと出て行った。



「二度と来るな! ドブス!!」

今度はドアに思い切り、クッションを投げつける翔。


翼がふと見ると、翔の袖から見えた腕には赤黒いあざがあった。

「翔、それって!?」


嫌な予感がした、胸がざわざわと騒ぎ出す。

気が付けば翼は、翔の腕のアザに泣きながらキスをしていた。



「翼、サンキュ」

翔は目を細め、翼の肩を抱き寄せて首すじに鼻をすり寄せた。

「高校出たらこんな、胸糞むなくそわりぃ家、出て行ってやる。仕事見つけて金貯めて、そしたらおまえと」


翼をもう一度抱きしめた翔の目は、強い決意の光にあふれていた。

「翔、ぼくは…おまえとだったらどこへでも行くよ」

翼と翔は、ツガイのように離れられない運命なのだと互いに感じていた。




-終わり-


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最後までお読み頂いてありがとうございます。

BLを意識して書いたのは多分、これ以外なかったと思います。

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