第7話 会場を出て歩く③
2階に降りる階段はあっさり見つかった。
吹き抜けのちょうど真ん中に階段があったからだ。
人が5,6人並んでも通れるほどの広い階段で、今まで通ってきた道と同じように厚いカーペットが敷かれている。
ただ、途中からカーペットの色がわずかに濃くなった。
2階だ。
2階は商業施設になっているようで、たくさんの店が立ち並んでいた。
閉店時間を過ぎているのか、開いている店はなかった。
仕方なく、さっきの階段に戻り、1階を目指す。またカーペットの色が変わる。
1階だ。
1階に来て真っ先に目に入るのは3階から見たあの大きな店だ。
4本の大理石の柱で屋根を支え、その下には様々な品物が置いてある。
まずは情報を集めておこう。
店に近づくと中にはくまのぬいぐるみがいた。
大きさは、40㎝くらい。抱えて歩きまわるギリギリのサイズとでもいえるだろうか。
そして、かなりボロボロだ。綿が出てしまっている。
目のボタンも1つない。で、ぷかぷか浮いている。
ただ、不思議と怖くなかった。
「いらっしゃい。プレイヤーくん。スキルショップ《ベアーズ》にようこそ。ボクは、チャッピー。ヨロしくね」
チャッピーはふにゃふにゃな首を上下に動かして、くたっとお辞儀をした。
「ここでは、スキルの売り買いができるヨ。売る金額ヤ買えるスキルは日によって違うヨ。ぜひたくさん買って、たくさん売ってね」
ここまで言い終えると、チャッピーは店前で動かなくなった。どうやら、システムで動いているようだ。
「チャッピー、店の品物を買わせてほしいんだけど、品物を見せてくれない?」
チャッピーが いいよ。とうなずいた瞬間、博人の目の前に薄く青色がかった、ウィンドウが出てきた。
『
・スキルE【ステータスウィンドウ】 10S
・ランダムステータス小上昇 2S
・称号【探索者】 残り1(5個中)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「チャッピー、この【ステータスウィンドウ】はどんなスキルなの?」
チャッピーは博人のほうにふわふわ寄ってきて、現物を見せてくれた。
なるほど、薄く緑色がかったウィンドウで、ステータスが書かれている。スキルもタッチすると詳細が見られるようだ。必ず必要になるスキルといっても過言ではない。
とりあえず、ほかの品物の説明も聞いてみる。
ランダムステータス小上昇 …STR、VIT、INT、DEX、AGI、LUK、HPを
ランダムで1つ少しだけ上昇させる。
称号【探索者】 …すべてを犠牲にして探索をする冒険者に送る称号。
スキルE【視力小上昇】を得る。
ここまで聞き終わったところで、チャッピーが話し出す。
「今はお金がなくて何も買えないから、称号だけもらっておくといいヨ。最後の一個だヨ。」
そのアドバイスを聞き入れ、称号だけもらっておくことにした。
全部で5個あったということは、最低でも4人はもうこの場所にたどり着いていることになる。
―――怪しいのは、最初に出ていった人たちだな。
そんなことを考えながら、チャッピーにお礼を言い、店を後にした。
そのほかの露店には、まだ何も品物は並んでおらず、人もいなかった。
佐伯博人(さえきひろと)
STR:不明 VIT:不明
INT:不明 DEX:不明
AGI:不明 LUK:不明+3
HP :不明
【冷静】【視力小上昇】
※ご覧いただきありがとうございます。
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