第6話 会場を出て歩く②


 まだ見ていないところはあるが、とりあえず次は2階だ。

 降りる手段を探していると、数人のプレイヤーにすれ違った。暗い顔のものはおらず、目を輝かせている。


「こんにちは」

 声をかけられた方を見ると、金髪の男が立っていた。

 顔の整った青年だ。アイドルか何かだろうか。


「ぼくは おかべ りょう と言います。今さっき、会場を出たところで何もわからなくて・・。

 もしよければ、今わかっていることを教えていただけませんか?」


 さて、どうしたものか。ここでとれる選択肢は2つ。対価を求めるか、求めないかだ。

 教えない選択肢は最初からない。

 現状は情報をもつプレイヤーがかなりのアドバンテージをもつだろう。ただ、1人でできることには限界がある。探索にしろ、【スキル】の発見にしろ、情報共有できる仲間がいることに越したことはない。あとは信用できるかどうか・・。


 そこはこれから見定めていくしかないな。

 そう思い、伝える情報を精査しながら、話し始めた。


「僕は、佐伯博人と言います。私もまだこの狭い通路を見てきただけなのですが・・・。岡部さん、今何を持っていますか?」


 岡部さんは、唐突な質問に少し驚いた様子を見せるが、すぐにポケットを探り始めた。

「今持っているのは、カードと紙だけです」

 そう言って、博人の持っているのと同じ金属製のカードと薄い小さな紙を取り出して見せた。


「これは、会場でもらいました。チュートリアル特典?だそうです。」

 聞いていないのにそんな情報まで教えてくれた。いい奴なのかもしれない。


 こちらの情報を渡しておこう。

「ありがとうございます。後で取りに行ってこようと思います。

 そのカードですが、この狭い通路の両脇にある自分の客室のルームキーのようです。タッチして中に入ることができました。正直、快適とまではいきませんが、寝ることはできそうでしたよ」


 こうして情報交換を終えると、岡部さんは客室フロアに入っていった。


 さて、彼はあの紙の謎が解けるのだろうか。次会うときが楽しみだ。




 ※ご覧いただきありがとうございます。

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