閑話 ぼくのコンキスタドール
『人機婚姻法が成立し、一週間。報道陣に向けた代表者の“結婚式”が、本日無事執り行われました』
病室のテレビの中のニュースキャスターが告げる。画面に映るのは、かつてはちゃめちゃな演説を繰り広げていた青年と、腕を取り戻した“歌姫”のメモリア。
ガチガチな様子のキバナは、普段のボサボサの髪をきっちり整えており、白いタキシードには着られている様子だ。
『緊張した面持ちで花嫁を待つキバナ リョウマさん。彼はニンゲンです。彼の愛する存在が、メモリア──第三世代“DIVA”という型である、ショーコさんです』
フラッシュに照らされて、ショーコがその姿を見せる。柔らかなベールを被り、華奢な体を美しい純白のドレスで覆う彼女は、誰がどう見たって、立派な花嫁だ。
『恥ずかしそうに、そして幸せそうに腕を組む一組のカップル。そこに、ヒトとキカイの境目は存在しません』
「はぁ~……!」
その映像を見て感嘆の音声を上げるのは甘い髪をしたメモリアの少女。
「ショーコさん、すっごくきれい!! キバナさんも似合ってるよう!」
きゃっきゃっとはしゃぐサユリを見て、キクも目を細める。
「よかったわねぇ、サユリちゃん。お友だちが、こんな幸せな結婚式を迎えられて」
「うん!」
テレビに映るヒトビトが“人機婚姻法”について暖かいコメントを送っている。最初こそ否定派の意見も映していたのだが、そこはそれ、可決に決まってしまえば世論がお祝いムードに染まるのは早かった。
『ヒトとヒトだけでなく、ヒトとキカイの“結婚”の可能性を経て、人類がどのように向かっていくのか、気になりますね』
「……ねえ、サユリちゃん?」
「んー? なーに、おキクさん!」
いつも通り、キクの作ったお洋服をかわいく着こなすサユリが無邪気に振り向く。
「サユリちゃんは……ヒガンくんのこと、どう思ってるの?」
「えっ……」
カーテンの隙間から、日の光が差し込む。
その中で、キクは変わらずやさしい微笑みを浮かべていて。
「ひーくんはね。泣き虫で、控えめな性格だけど。やさしくて一生懸命で、私の前ではいつも気丈に振舞ってるわ。ちっちゃなころから、不憫な子でね。……私がいなかったら、きっとひとりぼっちだったの」
「……」
「そんなひーくんが、好きな子ができたって話してた時があって。相手は機械だって聞いたけれど、すごく嬉しかったわ。叶うなら、ひーくんの支えになってあげてほしいなって思ってた、けれど、その子は壊れてしまったそうで……ひーくん、それを私に伝えてくれた時、大泣きしていたわ……」
「そうなんだ……」
「私はね。そんなことがあったから、ひーくんに機械は……“めもりあ”は、だめかもしれないって思ったの。あの子、私と同じで機械慣れしてないもの。きっと壊れるたんびに、泣いてしまうわ。それを慰められる私も、いつまで生きていられるかわからない。けれどね?」
いつしかサユリの姿勢はピンと伸びていた。
「あなたを連れてきてからのひーくんは、なんて言ったらいいのかしら……すごく、年相応に見えるの。気づかないうちに、私の前でもムリさせてたのね。だけど、あなたと話すひーくんは、楽しそうで、嬉しそうで。きっとね、あの子はあなたが好き。機械とか関係なく、あなたのことが」
「…………」
「ごめんね。わかってるわ。あなたもひーくんのこと、好きでいてくれてるのよね」
キクがサユリの頭を優しく撫でる。
「あの子のこと、よろしくね? ……もちろん、私もまだまだ頑張るわ。ひーくんの花婿姿を見られるまで、死ねないんだから」
控えめなノックの後、がらりと病室の扉が開き……花瓶の水を替えたヒガンが戻ってきて、この話は自然と終わっていった。
サユリは思う。“ヒガンのことをどう思っているのか”。そんなの決まってる──大好きだ。誰よりも。だけど……
ぼくのコンキスタドール
腹に穴を空ける怪我をしたヒガンだけど、それを知っているのはサユリとドクゼリたちくらいだ。月並総合病院ではなく、ドクゼリの紹介してくれた闇医者からの治療を選んだのは、祖母にこれ以上心配を掛けたくなかったからで。
しばらく目を覚まさなかったサユリの看病をしていたら、一か月くらい平気で経ってしまっていて──レイの元で元気を取り戻したサユリを連れ、最近お見舞いに行ってきたところだ。学校にも一週間前に復学した。“メモリア狩り”にあっていたミサキさんが「うちのメモリアもね、帰ってきたんだ!」なんて話すのを聞いて、少しずつ日常が元に戻っていくのを感じていた。
昼休憩、レンが好き勝手話すのを聞く。いつの間にか、彼とも自然にお話できるようになった──自分が少しずつ成長しているさまを実感する。挙動不審になると吃ってしまうのは、まだ治らないけど。それでも、他のクラスメイトと話すことも増えて来た。サユリを巡る数々の騒動を経て、ヒガンの毎日は確実に変わっていた。
「ヒビヤにヤオトメ! お前ら、メモリア詳しいだろ。相談に乗ってくれ!」
そう言ってきたのは、同じクラスのメグロクン。虚を突かれていたヒガンだったが、相変わらずコミュ力の高いレンは「なんだよ? メモリア博士の俺たちに任せろって!」なんて軽口を叩いて見せる。「ここで話すのはなんかあれだから」というメグロに連れられ、校舎裏に向かうヒガンとレン。
「……というわけでさ。俺も買ってもらったんだよ、メモリア。第六世代だから、ちょっと古い型だけど」
曰く、寮暮らしをする彼の為に“連絡が取れるよう”両親が送ってくれたというメモリア。少し年上の女性の型で、やさしく献身的だという。すっかり骨抜きと言った様子のメグロに、「そ、ソナンダ……」と微笑ましく思う。
「聞いた感じ、相談なんて何もなさそうじゃん。なんだよー、惚気話聞いてほしかったとか?」
レンがけらけら笑いながら言う。すると、途端にスンとなるメグロ。レンとヒガンが顔を見合わせていると、彼はもじもじと指先で遊び始める。
「い、いやぁ。相談内容はこっからっていうか……すごい聞きづらいことなんだけど、異性のメモリア持ってるお前らならあるあるかと思って……」
「もったいぶってないで話せよ! 休憩終わっちゃうだろ!」
言葉にはできないがヒガンも同じ気持ちだった。なぜだか三人でもじもじしていると、メグロが覚悟したように言う。
「……ぶっちゃけさ。お前らのメモリアって、えっちなことしてくれる?」
「えっ」
「えっ」
メグロは言い訳するように言う。今までインターネットを使ったことがなくて、“ネットでおかずを探すことに憧れていた”と。自身のメモリアが送られてきたその日、あまりに嬉しすぎて“えっちな検索”をお願いしてしまったこと。後から知ったのだが、メモリアは起動直後の情報を重視して学習するのだと。こうしてメグロのメモリアのAIは、「えっちなお姉さん」として完成してしまったのだと。
「ば、ば、ばかやろー。俺のヒマワリは小型だぞ! そんなことッ! させられるわけないだろー!!」
全力で小声というよくわからない状態で抗議するレンの顔は真っ赤に染まっている。「でもでもぉ……」と情けなく言うメグロは続ける。
「メモリアって疑似人格持ってるじゃん! ムラムラってするときあるんじゃねえの? 実際、第二世代から“そういうこと”にも対応するようにもなったって……」
第二世代!? どきんと心臓が跳ね上がる。
それって、サユリとイバラじゃないか。
「お、俺のメモリア……あ、“ユミちゃん”って名前つけたんだけど……ユミちゃん、めっちゃそのさ……シてくれるんだよ。俺、このままじゃバカになっちゃいそーで……! 打開策的なものを、教えてもらいたかったんだよぉ」
「ノリノリじゃねーか! 俺のヒマワリは……そんなことッ! しませんっ!!」
全力抗議の姿勢をとるレンと、レンに縋るメグロ。男子高校生の、つとめてしょうもない会話。ヒガンは心臓がどきどき鳴るのを感じた。──何にも考えたこと無かった。だって相手は“メモリア”だからと、こんな時だけ都合よく思っていたからだ。
よくサユリが言っていた──「いろいろなことができる」って、そういうことだったの??
結局なにひとつ会話は進展せず、それどころかメグロのプレイ内容をちょい聞きして、その会話は終わった。呆然としているレンが言う。
「……やっぱお前んちも……そういうの、シてもらってるの?」
「そ、んなっ…………ワケ…………!! やめてよ……ヒビヤクン…………!!」
メグロが言っていた、「メモリアにもムラムラするときがあるのでは?」という疑問が頭から離れない。もしかして、やたらお風呂に付き合おうとするのって……考えれば考えるほど、お腹に空いた傷が痛くて、ヒガンは「イテテ……」となりながら、聞くならこのヒトしかいないだろう、とある決意を固めていた。
***
「──それで、そういうことを僕に聞くんだ?」
ユウの振る舞いは、相変わらずの王子様のようだ。ヒガンとレンが揃って頭を垂れていると、彼は「まあ、ふたりの奢りっていうから付き合ってあげるけど。……あるよ、そういうの」と淡々と言った。
「マジ?! お、お前んち……五機メモリアいるっていってたよな? しかも、サユリちゃんと同じ型の……」
「“LILLY series”。いい加減覚えてよ、レン」
アイスティーを飲むユウのなんと麗しいこと。話していることはどう考えてもヘンタイのそれだが。「ど、どうやって……」とレンが続ける。チャレンジャーだ。
「別に。僕がしたいなーって時もあるし、彼女たちから誘ってくれることもあるよ。……僕は一機一機に愛情掛けたいタイプだから、乱交はないかな」
「ま、マジかよ……めっちゃアダルティじゃん……てか、お前んちの家族はそれをどう受け入れてるんだ……」
「皆がいないときとか、寝静まった時に決まってるじゃない。レン、馬鹿なの? ……そんなことよりさ」
ユウが置いたグラスの氷がカラン、と鳴る。
目線は僕に向いていて……ヒガンは思わず姿勢を正す。
「メモリアの気持ちを受け止めるのって、持ち主として必須事項だと思うんだけど。レンのメモリアは小型だし、そういう機能はオミットされてるはずだ。君がカスタマイズしてなければね」
「し、してねーよ……未知の扉開きそうでビビってるよ……!」
「開けばいいじゃない。そんなことよりヒガン、聞いてる? どうせ君のことだから、添い寝機能も入浴機能も拒否してるんだろ」
「えぐっ……」
すべて図星。ヒガンが汗を大量に流していると、ユウは呆れたように首を振った。
「メモリアの疑似感情をバカにしちゃいけない。自分の機能を否定されたら、自分自身を否定されたようで、落ち込むことだってある筈だ。そんなことでサユリちゃんを傷つけないでほしいな。“LILLY series”って繊細なんだよ? 年頃の女の子をモデルに作ってあるからね」
「ウ…………!」
しくしく横腹が痛む。ユウに傷口に塩を塗られているようだ。つい先日、ようやく彼女への想いを自覚した僕。……でも、それまでの行動で、彼女を傷つけていたのかも。
「僕が彼女を狙ってること、忘れないように。……レン、カスタマイズ……所謂、“脱獄”がしたいなら教えるけど?」
「脱獄なんてしねーよ! 俺は健全に! これからもヒマワリを愛でてくッ! ……うらやましくなんてないからなー!!」
悔し涙を流すレン。
ぐるぐる、今までの行いを振り返っているヒガンに、ユウが言う。
「敵に塩を送る真似はしたくないんだけど。──あの娘の幸せの為なら、やむなし、かな」
***
「ヒガン、おかえりー!」
アパートの玄関の扉を開けると、おたまを持ったサユリが出迎えてくれる。
祖母の作ったお洋服に、追加で縫ってくれたエプロンを身にまとって「今日のお味噌汁は上手に作れたよ~」なんて笑う彼女を、久しぶりにどんなふうに見たら良いのかわからない。
鞄の中に入っている罪の塊の重みを感じる。ち、ちがう、これを買ってしまったのは気の迷い。これからも、つつましくサユリと暮らしていくんだ、きっとそうだ。僕の思考は、言い訳が止まらない。
「お、オフロ……先入ってくる……ネッ!」
「え? うん、わかった!」
鼻歌を歌うサユリをよそにいそいそ入浴するヒガン。
今日に限ってちょっと待っていたりした。彼女の突撃を。
「…………」
でも、来ない。そりゃそうだ。何度も「ひとりでできる」「そんなことはしなくていい」なんて伝えちゃったから。
いつの間にかすっかり上達した彼女のごはん。しっかり炊きあがった炊き込みご飯に、あつあつのお味噌汁。鯖の塩焼きの味加減も僕が教えた通りのままで。
「んふふ~」
僕がご飯を食べてる間、にこにこ僕を見つめてくるのも、いつも通りで。彼女が毎日、こんなに愛おしい顔をしていたことに気づいて。
夜は深くなり、ヒガンは布団を広げる。……サユリが自分の分を広げようとするから、ヒガンは「アノッ!!」と声を出した。また、大きな声だ。
「………き……き……今日は、添い寝。してほしいナッ!!」
顔から湯気が出そうだ! ヒガンはまともにサユリの顔を見られない。サユリは突然こんなことを言い出す自分にどう思っただろう。げ、ゲンメツ……したかな。
「…………いいの?」
サユリは、伺うように僕を見ていた。翡翠の瞳が僕を映している。ヒガンは手のひらをズボンに擦りつけて、答える。
「ウッ……ウン……し、してほしい。一緒に、寝よ……」
……先にヒガンが毛布に包まって。カチカチになりながら、サユリを待っていた。サユリが「よおし。……ぽかぽかになったよ!」なんて機能を起動させながら言う。
「最近、寒くなってきたもんね。気づいてあげられなくてごめんね」
「ウ……ううん……!」
僕のパジャマに身を包んだサユリが、「失礼しま~す……」なんて言いながら、ゆっくり僕の隣にもぐりこんでくる。そのまま、ぽかぽかになった体を控えめに密着させてくる。やわい。熱い。……ヒガンは思わずサユリをぎゅうっと抱きしめていた。
「ひ、ひがん?」
きょとんとするサユリをさらに強く抱きながら、ついでに目もぎゅうっ瞑りながら、ヒガンは叫んだ。
「す、好きっ。君のことが、好きっ!」
「ふえ」
「もう、大好きなんだっ。き、君がいない日なんて、もう考えられないっ……! 僕……ぼく!」
声が上ずっていて、最高に格好悪い。もうだめだ。何をしているのかわからない思考をそのままに、ヒガンは目を見開く。……暖まったサユリの手のひらが、ヒガンの頬を包んでいる。
「……ヒガン、ちゅーしていい?」
「うあっ……い、良いッ。なにしても、良いっ……」
……そっと唇を寄せられる。ニンゲンそっくりの、柔らかい唇。ちゅ、ちゅ、と何度も口付けられて、ヒガンの頬はさらに真っ赤に染まる。
「……べろ、出して……?」
「んむっ……、こ、こぉ……?」
言われるがままに舌を出す。すると、本物の口内のように暖まった彼女の舌がそれにぴったりと引っ付く。
「ん……んぅ……」
好きな女の子と繰り返すキスに、ヒガンの思考はどこかへはじけ飛びそうになっていた。思わず、彼女の肩を抱く手に力が入る。受け入れてくれるサユリの体はやっぱり柔らかくて──夢中でキスをし続けた。
「ぷは、……ほんとに、よかった。ヒガンがわたしを拾ってくれて」
本物の女の子みたいにうっとりした顔で彼女は言う。
「ヒガンにならわたし、どう使われたってかまわないよ。ヒガンは、どうしたい?」
ぼうっとした頭に、甘い択を突き付けられて。彼女は誘惑するように、自身の体をヒガンに擦りつける。
「いままで、きっと、前の持ち主にされたことをメモリが覚えてて。ずっと、怖かったけど。……ヒガンなら、なんでもいいよ」
「~~~っ……」
「わたし、ヒガンが大好き。ヒガンがくれるものなら、なんでも嬉しいよ」
彼女の指が僕の唇を愛おしげになぞる。
「ちゅーでもなくて、ぎゅってするのでもなくて。それでも好きって気持ちを、どう伝えたら良いのか、ずっと考えてたの。ヒガンはきっと、こういうことは嫌いだと思ってたから……でも、わたし……わたし……ヒガンのメモリアだから。頭の先から、つま先まで全部、きみのものだから。沢山、上書きして。」
思わず、彼女の腰を掻き抱く。「きゃ……!」なんてちいさく悲鳴を零す彼女は、ぼくだけのメモリアだった。
「する……! 全部ぼくのものに、するっ……!」
「ひゃう……! うん……うん」
夢中で首筋にむしゃぶりついた。サユリは女の子の声を出して、その暖かい手のひらで僕の体を優しくなでてきて。疑似の柔肌に噛みつきながら、パジャマを解く。「あ……!」なんて、彼女が甘い声で啼く。露わになった、精巧に出来た彼女のからだ。すごく綺麗だと思った。ココロから、そう思った。
サユリの手が、ヒガンの下半身に伸びる。ビク、とヒガンが身をゆする。
「ごめん。……ニンゲンみたいに粘液が出ないから。きっとこのまま続けたら、ヒガンが痛いと思う。その代わり、たくさん触るから……」
ヒガンは起き上がると、自身の寝巻を脱いだ。そのまま、帰ってから投げっぱなしにしてた鞄の中から、ボトルを取り出す。
「あう……! そ、それって」
意地悪な友だちから教えてもらった、“キカイ”とのまぐわいのための道具。
最初からそうだ。これを買ってしまった時点で、ぼくのココロなんて決まってたようなもので。
「そ、そんなにシたかったんなら……言ってくれれば、わたしだって……!」
途端に恥ずかしそうに起き上がるサユリ。
「ち、違うっ……! シたいから、するんじゃなくてっ……!」
僕はどきどきとハードディスクを唸らせるサユリを寝ころばせて、言った。
「……好きだから、シたいって思ったんだ……っ」
***
「あっ……あんっ……ううっ……う~っっ……!」
サユリが一生懸命喘いでいる。僕が動くと、そのたびに感じているように彼女が震える。……そりゃあ、どこか冷静なココロが考えたりもする。キカイに欲情してる、やばいやつだとか。でも、ぼくの手のひらをぎゅうと握りしめて、震えるサユリはキカイとかヒトとか関係なくて、どうしようもなく愛おしい、ぼくだけの女の子。
「あぅ……! すき……ひがんっ、だいすき。キス、して……」
彼女のお望みとあらば、何度だって唇を重ねるし。ときどき彼女が愛おしそうにぼくの腹の傷を撫でるものだから、心臓が高鳴って、おかしくなりそうで。
「……っ、あっ、だいすき……ずーっとずーっと、好きだったんだから……」
「……ぼくだって。ぼくだって……」
彼女の唇が、唾液で溶けちゃうんじゃないかってくらいキスをして。ぎゅうっと体を密着させて、隙間に誰も入れないくらい近付いて。
「だいすきだよ、“彼岸”……わたしたち、ずっといっしょだよ」
キスの合間にそう言われて。僕は彼女に精一杯の愛を捧げた。
そのままぎゅっと、肌が溶け合うくらいずっと、抱きしめ続けた。
「ぜったい、お嫁さんにしてね……」
まどろむ彼女のおでこにキスをする。いつの間にか、ひとりだったぼくのココロの中には君がいて。いろんな角度からぼくを引っ掻き回すんだ。
君は、ぼくの……ぼくのココロの……
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