第8話 純潔

☆(東條奈々)サイド☆


和葉さんから何か恐怖を感じたが気のせいだろうか?

私は考えながらそのままお弁当を渡してからそのままクラスに戻ろうとした時。

目の前に遠野和葉さんが立っていた。

私はビクッとしながらその姿を見てみる。


「和葉さん.....?」

「.....さっきぶりですね」

「ど、どうしたの?もうすぐ授業が始まる.....んだけど」

「.....質問です。貴方は廻を狙っていますか?」

「廻.....っていうのは遠野くん?.....いや。狙ってはないよ?どういう意味?」


すると和葉さんはニコッとした。

それから「そうですか」と去って行った。

何だ今の.....は?


私は寒気がした。

まるで殺すと言わんばかりの顔立ちだった。

殺気だった。


「.....まさかね」


遠野くんの義妹さんだ。

そんな気を持つとは思えない。

思いながら私はそのままクラスに戻る。

それから椅子に腰掛けていると数少ない友人の春山メバル(はるやまめばる)が話しかけてきた。

エセ関西弁の少女だ。


「大丈夫か?ななっち。何だか顔が引き攣ってるで」

「.....いや。大丈夫だよ。あはは」

「ふーん?だったら良いけどな」


メバルは短髪の褐色肌をしているスポ根女子だ。

私とは.....正反対の存在だ。

思いながら私はメバルを見る。

「それはそうと」とニヤニヤしてくる。

私は「渡せたよ」とため息混じりに期待に応える様に先に話す。


「.....そか。良かった」

「そうだね。私のお料理食べてもらえるのが嬉しいな」

「食べてもらえたら嬉しいってそれ恋とちゃうん?」

「恋じゃないね。.....絆で繋がっている感じ」

「???.....それは恋とはどう違うん?」

「絆っていうのは.....友人的な?」


「ふーん?」とニヤニヤしながら私を見てくるメバル。

私は「本当だよ?」と赤くなりながら返事をする。

だがメバルは「ふーん?」と同じ反応だけで「そっか」と返事をニヤニヤした。

分かってない。


「ゴメンゴメン。そんな顔せんどいてや」

「もー。そんな気はないからね」

「.....でも私は恋だと思ったんや。.....それはな」

「.....メバル.....」

「私だって好きな相手は居るで。だからこそ恋なんじゃないかって思ったんや」

「.....行動がね」


そして私は苦笑いをする。

メバルの好きな相手。

それはクラスの委員の黒崎くんだ。


黒崎将吾(くろさきしょうご)くんである。

眼鏡に短髪に綺麗な真面目系男子。

憧れるという。


「.....私みたいなのと正反対の存在やから」

「うん。でも祈ってる。.....私は上手くいく事をね」

「.....有難うな。ええやっちゃな」

「私は良い人じゃないよ。ただ.....」


赤くなるメバルに私は笑みを浮かべる。

祈っているだけだ。

それも強く祈りを込めているだけ。

これは(成功してほしいとか.....そういう感情なのだろうか?)と思ったりする。

未だによく分からない。


「なあ。ななっち」

「うん?何?メバル」

「アンタのそれも恋だと思うてこれから応援してええか?」

「だから私のは恋じゃないって」

「.....いや。.....私は信じてるで。.....アンタはええ子やから」

「.....もー」


「まあそこまで言うなら友人としては応援してほしいかも」とメバルに言う。

だけどさっきから言っているがこれは恋じゃないと思う。

恋とは思えないし私みたいなのが恋をしても。

所詮は見捨てられるから。

そう思いながら居るとチャイムが鳴る。


「おっと。鳴りはったな。戻りますか」

「そうだね」


私は恋をしてはいけないと思う。

何故なら私は白髪の呪いがあるから。

思いながら居ると「言っとくけど白髪が悪いって思いなさんなよ」と声がした。

私は顔を上げる。

それから目を丸くした。


「.....アンタの白髪は.....希望の色や。.....そもそもまず心理学では白は羽衣。純潔なんやで」

「.....あはは。社会福祉士のお父さんの影響?」

「せやな。オトンから叩き込まれているから。.....色というもんに関しては何故か」

「.....そっか。有難うね」

「誇りな。.....アンタは何も悪くないんやで」


そして「ほな」と戻って行くメバル。

私はその姿を見ながら椅子に腰掛ける。

それから先生を待つ。

有難うメバル。

私、自信を持てたよ。



4時間目が終わった。

私はメバルと一緒に食事をする為に用意しているとメバルが「今日は私と一緒やなくて彼と一緒に食べーや。私は黒崎くんと食べるで」と言って私をクラスから追い出してしまった。

困惑してしまう。


そして心臓が高鳴る。

いや。これは恋じゃない。

思いながら私は遠野くんのクラスにやって来た。


「と、遠野くんは居ますか」


と言いながら。

すると遠野くんが「あれ?どうしたんだ?東條」と言ってくる。

私はその顔を見ながら少しだけ頬に熱を持つ。

(違うったら)と否定するが.....。

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