第7話 毒

☆(遠野廻)サイド☆


結論から言って俺は(別れる)という選択をした。

アイツの言い分には全く説得力がない。

そして嫌気が差した。


その為に俺は別れるという選択をした。

俺はもう生涯誰とも付き合わないつもりだ。

そう考えながら俺は窓から外を見る。


「.....」


長閑な日だが俺にとっては最悪の日になった。

考えながら俺は眉を顰めながら外を見る。

今は2時間目の中休み。

そうしていると教室のドアが開いた。


「ごめんください。このクラスに遠野くんは居ますか?」


それは東條だった。

俺は「?」を浮かべながら「東條?どうした」と聞いてみる。

すると東條は俺を見ながら少しだけ恥じらう。

そして「表に出て来て」と言われた。

それから階段付近まで歩いた。


「これ。お弁当」

「.....え?マジに作ったのか?」

「それはそうでしょう。傘の分だから」


青い四角い包みのお弁当。

俺はそのお弁当を受け取る。

ずっしりしていた。

その感じに「東條。これ結構作ったんじゃないか?」と聞いてみる。

すると「朝5時から作ったからちょっと眠い」とあくびをしながら東條は応えた。


「そんな無茶をしなくて良いのに」

「私は部活の部長でもあるから.....だから大丈夫だよ」

「大丈夫って.....現に眠たそうだぞ」

「うん。まあ仕方がないよね」

「.....」


俺は東條を見る。

そして東條は恥ずかしそうに反応した。

俺はその姿を見ながら苦笑しながら「でもありがとうな。今日限りとはいえ嬉しいよ」と言葉を発する。

だがその言葉に東條は予想外の反応をした。


「え?何を言っているの?今日だけじゃないよ?」

「え?.....それは逆にどういう意味だ?」

「私は.....お弁当を喜んでもらえるみたいだからもっと作るよ?」

「何を言っているんだ。.....1000円分の価値は貰ったぞ」

「.....1000円分の価値以上の物を貰ったんだよ。だから恩返ししたい」


一体何を言っている。

俺は目をパチクリしながら登場を見る。

東條は「.....今日一緒にご飯食べない?」と聞いてくる。

何故そうなるのか分からないが「まあ良いが.....」と返事をする。

その言葉に東條は「ありがとう」と笑顔になる。


「.....誰かと一緒にご飯なんてあまりしないから嬉しいよ。友人が少ないから」

「まあ確かにな。俺も友人はあまり居ないから嬉しい」

「そっか。えへへ」


俺は(不思議なもんだな)と思いながら東條を見る。

東條は「私は君に出会ってから本当に色々な経験をしている。だから君には感謝だよ。遠野くん」と笑顔になった。

そんな言葉に俺は少しだけ赤くなりながら「俺は何もしてない」と返事をする。

だが東條は首を横に振った。


「私は君からかけがえのない物を手に入れた気がするから。.....お互いに頑張ろう」

「言い過ぎだ。俺は何もしてない。本当に」

「そうかな」


そんな会話をしていると背後から物凄いオーラを感じた。

それは絶望的なオーラ。

俺はゾッとしながら背後を見る。

そこに悲しげな顔をしている和葉が.....居た。


「.....和葉.....お前.....何だそのオーラ」

「.....廻。誰。その女」

「この女性は例の子だ。お前こそ何だよそれ」

「.....」


和葉は気圧されている様な東條を見る。

(そうか。この女か)という感じの納得をしている。

何だこの和葉の気配は.....。

今まで見た事が無いが。

そんな事を言っている場合でもないか。


「.....和葉。東條は先輩だ。失礼だぞ」


と言いながら和葉を見る。

すると和葉は「まあそうだね」と笑顔になる。

情緒が相当不安定だな.....。

そう考えながら俺は和葉を見る。

東條は「えっと。どちら様?」という感じで反応したので「俺の義妹だ。.....そして前は彼女だった」と言う。


「え!?.....そうなんだ.....」

「私は遠野和葉です。.....私の義兄がお世話になっています」

「そうだね.....お世話なっています」

「.....」

「.....」


何かかなりキツイ空気だ。

俺は「おい和葉」と言うと和葉は「お弁当作ったけど食べる?」と言ってくる。

持っていた俺の弁当を見てから嫉妬するかの様に。

そして俺に向いてきた。


「弁当なんて作っていたのか?」

「.....急いで作ったけど言う暇がなかった。ただそれだけ」

「そうだったのか」

「そう」


すると東條が「義妹さんのお弁当食べる?」と言ってくる。

しかしそれでは東條が作ったお弁当が無駄になる。

俺は考えながら「分かった。両方ともに食べる」と言葉を発した。


こうなった以上は仕方がない.....と思っていたのだが。

和葉は「まあでも東條先輩がせっかく作っているなら私が食べようかな」と俺に渡すのを諦めた様な反応をする。


「.....和葉?」

「.....」


和葉は深刻そうな顔をしてからだが。

直ぐに笑顔になってからそのまま「じゃあ」と立ち去る。

俺はその姿に違和感を感じながら見送る。

(まさか毒でも入っていた訳じゃないよな?それで躊躇ったとか?)と考えながら。

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