第4話 奈々たん
☆(東條奈々)サイド☆
偶然だったが1000円の男子に再会した。
まあ言い方が悪いので.....詳しく言うと遠野廻君に再会した。
私はそんな遠野君のルーズリーフを買う姿を見ながら笑みを浮かべる。
すると.....周りでヒソヒソ声がした。
私の髪の色の問題だ。
だけど今の私は.....そんな気分にはならなかった。
落ち込む様な気分に。
何故なら遠野君が助けてくれたから。
白髪の呪いの私なんかを。
「.....まだ居たのかお前」
「そうだね。.....貴方が買うのを待っていた」
「何でだよ。帰って良かったのに」
「そうもいかない。お礼がしたい」
「.....お礼なんて要らない。やり過ぎたしな」
「それは私を助ける為でしょ?」
私はそう言いながらウインクする。
遠野君は「そんな事はない」と目線をずらしながら否定するが。
私は確かに感じた。
彼が私を助ける意思を。
格好良かった。
「.....貴方は私を助けた。これは事実。.....だから貴方にお礼はする」
「要らない。どっちかと言えば1000円の傘も.....」
「それとこれとは別。.....じゃあ行こうか」
「いや行くってどこに」
「私の家」
「.....は?何故に?」
「言ったでしょう。私はお礼がしたいって」
そう言葉を発しながら私は遠野君の手を握る。
それから「行くよ」と言いながら早足になった。
ついつい早足になってしまう。
何故なのか分からないが。
遠野君は「おいおい!?」という感じで反応する。
☆
「マジで!!!!?」
マジでって。
そんな言葉をお姉ちゃんが発した。
目を輝かせながら手を叩く。
そして「そんな事があったなんて!」と目をキラキラ子供の様に無邪気に光らせる。
「まあそれで彼を呼んだ」
「そうなのね!まあまあ良い彼氏じゃない!」
「彼氏じゃないよ!?」
「彼氏よ!自宅に呼んだらそれはもう!」
まさか。
そんな事はないよ。
だって彼は浮気されて傷付いているから。
思いながら彼を見ると彼も苦笑しながら反応していた。
しかし何だろうか。
その彼の笑顔がかなり格好良く見える。
「.....まさかね」
そんな事を呟きながら居るとお姉ちゃんが「ささ。上がって!遠野君!」と彼を促しながら上がらせる。
遠野君はやれやれ的な感じながらも「お邪魔します」と上がった。
それからお姉ちゃんは手を引いてリビングに連れて行く。
「ここが私達の家よ。.....まさか奈々たんが彼氏を連れて来るなんて思ってなかったから汚いけど」
「.....彼氏じゃないって.....お姉ちゃん。そして奈々たんって.....」
「あれ?奈々たんじゃなかったっけ?呼び名」
「そんな訳ないよ.....」
たんって何.....。
思いながら私は赤くなって額に手を添える。
それから考えていると彼が「綺麗な家ですよ」と褒めてくれた。
遠野君は周りを見渡す。
落ち着かない様子だ。
「じゃあ早速お礼だけど.....夕飯食べて」
「.....え?それは悪いだろ.....流石に」
「いや。良いの。お礼だから。まさか今日で披露する事になるとは思わなかったけどね」
「奈々たんの料理は美味しいのよぉ」
「そのたんって止めて」
「良いじゃあないの〜奈々たん〜」とお姉ちゃんは笑顔になる。
私は盛大に溜息を吐きながら遠野君を見る。
遠野君は「ちょっと自宅の者に連絡します」とスマホを取り出してからメッセージを送ってくれた。
そして私はエプロンを身に着ける。
「ふむどうしようかな」
と呟き思っていると「奈々ちゃん」と小さな声がした。
見るとお姉ちゃんがニヤニヤしており「ねえ。彼とはキスしたの?」と聞いて.....この前浮気されたばかりでそんな訳ないでしょ!
「もうお姉ちゃんはコンビニでも行って!」
「そういう訳にもいかないわ。.....彼が良い人か見定めるのに」
「.....彼は良い人だよ。.....明らかにね。.....私を助けた」
「.....そう」
お姉ちゃんは笑顔のまま身を退く。
それから周りを見ている遠野君に「遠野きゅん。お食事待ってね?」と言う.....また変な事を言っている.....。
真剣なのが台無しだ。
彼氏とか連れて来ると絶対にああなる。
「お姉ちゃん。もう本当にどっか行って。お姉ちゃんの分のご飯作らないよ」
「はいはーい。これぐらいにしておきまーす」
「全く.....」
私はジト目になりながらお姉ちゃんを見る。
お姉ちゃんはてへぺろ的な感じをしながら椅子に腰掛ける。
その姿を見ながら私は卵を出した。
すると遠野君が遠慮がちに聞く。
「.....えっと。.....お姉さんとは2人暮らしなんですか?」
「そうよ。訳あってね。.....でも安心したわ。.....妹に良い彼氏。これで次はけっこ.....」
「!?」
「お姉ちゃん!!!!!」
「はい。冗談です」
またてへぺろをするお姉ちゃん。
もう!もう!!!!!
思いながら私はガシャガシャという音を立てつつ。
ボッと赤くなった。
そのままケチャップとかを出してご飯を炊いたりした。
オムライスを作ろうと思ってだ。
もう!ありえないから!
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