第11話 生徒の成長
「お、ついに使った!」
デイモンは面白そうに声を上げた。
「がんばれクリス!」
レジーも無責任に応援の声を上げた。
「まだ遅いな」
シールドは厳しくそう評しつつも愉快そうな笑みを浮かべていた。
シールドはオルブレルであった晩年には組織とか主従関係というものを徹底的に忌避するようになっていた。それがこのホテルを作った理由である。隠居所に使用人を配する事は容易だったが、それはつまり自分の配下なので今までとあまり変わらない。
しかしホテルの宿泊客という体裁ならスタッフはあくまで対等な商取引相手であり、配下の者ではない。実際にはホテル・バラーのほとんどの従業員は元々彼の側近だし、無限と言ってもいい資産を持つシールドにとっては何も変わらないのだが。
そしてシールドは、その価値観に則りクリスを弟子とは見做さなかった。シールドにとってクリスはあくまで生徒である。生徒なのだから当然月謝も取っている。しかしどう言い繕ってもやはりクリスは彼の弟子なのである。弟子の成長は愉快だった。
「さすがにお厳しい」
マイエルンがシールドの横に立って僅かに微笑しながらそう言った。マイエルンにはその厳しさが愛情から来るものだと判っていた。食材としてではなく。そう言われたシールドはやや苦笑して不必要な弁明をした。
「まあ生徒の育成責任はあるからな」
長い銀髪を人差し指でくるくる巻きながらはにかんでそう言い繕うシールドだった。
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