第93話女神様のお誕生日会
絵色女神の誕生日は
オリファルコンが開催する
エクシブハンター世界大会の
開催前夜祭の中で
行われていた。
本来、その日は権太坂36の
看板番組の収録日だったが
今や、その番組のスポンサーである
オリファルコン社に
権太坂36全員が
誕生日会に参加して
収録して欲しいと
言われたら
弱小テレビ局であるテレビ関東の
スタッフなど、すぐに
予定を変更する。
会場は高級ホテルの結婚式の
披露宴会場のような場所だ。
立食パ-ティ-形式で
会場の何ヶ所にオ-ドブルや
ローストビーフ、サラダや
デザートが並んでいる。
その手の催しに参加し慣れていない
権太坂36のメンバーは
どうしてイイのか分からず
料理にも手をつけずに
会場の端に集まっている。
それに気付いた女神が
『今のウチに食べちゃいましょう?』と
先輩メンバーに声を掛けると
『このいうのって、ウチらは
食べちゃダメなんじゃない?』
『来ている、お客様が
優先でしょ?』と
先輩メンバーが女神に言うと
『無くなったら補充されますから
食べても大丈夫ですよ』と
女神が説明している時に
オリファルコン社の坂口が
女神の近くを歩いていた。
すると女神が
『坂口さん、ちょっとイイですか?』と
話し掛けた。
すると2人でゴニョゴニョと
話しをしていたかと思ったら
こちらに近づいて来て
『みなさん、はじめまして
オリファルコンの坂口と申します』
『今日は、お忙しい中
お越し頂き、ありがとうございます』
『こちらの料理は、みなさんに
食べて貰う為に用意したものです』
『余らせても勿体ないですし
少なくなったら補充します』
『どうぞ遠慮なく、お食べ下さい』と
笑顔で説明してくれた。
坂口の後ろにいる女神は
笑顔でウィンクしている。
お互いの顔を見合わせていたメンバーは
『じゃあ、ちょっとだけ』と言って
皿に自分の好きな物を取り出す。
5分後、彼女達がいたテ-ブルでは
『これ食べてみん?』
『めっちゃウマイよ』と
修学旅行のノリで
乙女達が、ガッツいて食べている。
みんな喜んで食べている中
越中美桜だけは
冷静に飲み物を飲みながら
絵色女神の行動を目で
追っている。
会場にいる関係者と思われる男性達に
次から次へと挨拶して回っていた。
それでいながら権太坂36メンバーを
気遣っている。
同期で入って、お互いに
端っこにいたと
思っていた女神が
自分より、はるか先を
走っている姿を
目の当たりにしている。
彼女は白いワンピースで
ドレスアップしている。
自分は他の権太坂メンバーと同じ
女子高生の制服のような
ブレザーを着ており
その他大勢だ。
CMは放映されているが
それほど反響も無い。
自分と女神の違いは何?
オリファルコンの会長の愛人では
ない事は女神から聞いている。
美桜は自分と女神の決定的に
違う事に気付いていなかった。
人を気遣う観察力
周りを見渡すチカラは
どんな時でも
人との付き合いで
大きく作用してくる。
更に今回の絵色女神の
誕生日会のスケールに
圧倒されている。
高級ホテルの宴会場で
豪華料理が振る舞われており
予算が、いくらなのか?
知りたいくらいだ。
自分の誕生日の日には
どうなんだろう?
そう考えると
寂しい気持ちになる。
エクシブハンター世界大会の
前夜祭は前から予定されていたが
そこにイメージガ-ルである
女神の誕生日会を合体させたのは
猪木会長のアイデアである。
マスコミ各社に招待状を
送付した結果
今やブレイクアイドルNo.1の
女神の誕生日会なので
各社こぞって参加した。
これがテレビのワイドショーで
放送されれば
CM放送に換算して
数億円の効果であろう。
この後はバ-スデ-ケ-キに
ロウソクを立てて
女神が火を消すイベントが
待っている。
その姿を女神のInstagramや
Twitterで発信して貰えれば
全世界にも
エクシブハンターの世界大会
前夜祭が伝わる。
猪木会長は女神を
イメージキャラクターに採用して
大成功だったと自負していた。
そんな女神の誕生日プレゼントを
会長が考えていない訳がない。
誕生日会の終盤まで秘密と
なっており
関係者の人間でも
一部の人間しか知らなかった。
世界大会の前夜祭という事は
控えめにして
女神の誕生日会を
前面にした方が、視聴者の
ウケが良い筈です。
そう提案していたのは
広告代理店の濱口だった。
彼は強引に女神の唇を奪った男で
彼女は忌み嫌っているが
大手広告代理店の社員なので
CM現場で何度も
顔を合わせる。
『今度、一緒にメシでも
食べに行こうよ?』と誘う濱口に
『行きません』と
瞬殺で断る彼女であった。
今日の誕生日会の
説明をしていた時に
2人になった隙に
『これ誕生日プレゼントだから
受け取ってよ』と
濱口に小さな水色の
ティファニーの
紙袋を渡されたが
一切、見ずに
『いりません』と
却下する。
会場の裏で2人きりになって
馴れ馴れしく話し掛けてくる
濱口が半径2m以内に
入ろうとすると
平行移動で女神も動き
常にソ-シャルディスタンスを
維持する女神だ。
彼も嫌われているのを
知っておきながら
『俺、何か嫌われるような事を
しましたか?』と
とぼけて質問するが
彼女は
『絶対に許しませんから』と言って
態度は硬化したままであった。
そんな彼女を
『絶対にベッドに引きずり
込んでやる』と
野望を燃やしている濱口は
変わらず彼女に話し掛けている。
彼女のご機嫌を取るつもりで
『立花さんは、まだ来ていないの?』と
彼女から聞き出した名前を出して
彼女の関心を引こうとすると
案の定
『え?来ているんですか!』と
過剰に反応してしまい
彼と、ただならぬ関係だと
間接的におしえてしまう。
『やっぱり気になる?』と
濱口が笑いながら聞き返してきて
立花の話がウソだと分かり
更に女神の怒りを倍増させていた。
やがて女神はマネージャーさんに
呼ばれて
別室に消えて行ったが
残された濱口は
ティファニーの紙袋を
持ちながら
『絶対に落としてヤル』と
野望をたぎらせていたのである。
そんな事が起きていると知らない立花は
猪木会長から貰った連絡で
エクシブハンター世界大会の
前夜祭の会場に
顔を出していた。
オリファルコン社の
身内しか集まっていないと
思っていた立花は
テレビ局や権太坂のメンバーが
来ている事に気付くと
早々に帰ろうと思い
オリファルコン社の
知り合いを見つけて
帰る事を伝えて
会場を後にしようと考えていた。
そんな時に限って
誰にも会えずに
会場内をウロウロしていると
『立花さん、お久しぶりです』と
広告代理店の濱口が
話し掛けてきたのである。
『こいつ、記者会見の時に
やけに絡んできた奴だ』
立花は思い出して
関わり合いになりたくないと思い
軽く会釈をして
その場から立ち去ろうとした。
だが濱口は、しつこく
まとわりつき
『副社長が、挨拶回りを
しなくても宜しいんですか?』と
更に声を掛けてきたので
『すいません、誰かと
間違えていませんか?』
そう言って、去ろうとするので
その態度にイラっとした濱口は
『女神ちゃんから俺の事を
聞いていませんか?』と
背中を向けている立花に
問いかけた。
『何故、コイツが女神の事を?』
驚いて振り返ると
『女神ちゃんと俺がキスした事を
聞いていませんか?』と
笑いながら聞いてきたのであった。
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