第86話狙われる
『着信拒否されたから
会いに来たよ』
見るからにチャラい
茶髪の20代の男が
小林に話しかけてくる。
その状況に彼女は震えて
立花の背中に逃げ込んだ。
『どちら様か知らないけど』
『彼女は今、仕事中なんだよ』
明らかに嫌がっている
小林の姿を感じて
立花がそう言うと
茶髪男は
『あん?』と
立花を、睨みつけた後
『俺は邦子ちゃんに
用事があるんだよ』と
すごみ
立花を、威嚇してくる。
『小林、
ちゃんと彼に説明しろ』
背中に隠れている小林に
そう促すと
『すいません、仕事中なんで』と
立花の背中に隠れたまま
震えた小さな声で言うと
『仕事なんてシカトして
遊びに行こうよ?』と
立花が見えていないように
彼女に話しかけてくる。
『今、言ったように
仕事中だから』
『お引き取りください』
立花がそう言うが
『着信拒否されて
連絡が取れないから』
『わざわざ、
ここまで来たんだよ』と
半ギレ状態で
立花に
飛びかかりそうな雰囲気で
怒鳴ってきた。
『仕事中だと
言っていますよね?』
立花も、負けずに
そう言い返すと
『なんだ、やるのか?』と
臨戦態勢で
茶髪が向かってくる。
スッとスマホを
取り出した立花が
『これ以上、しつこいようなら』
『威力業務妨害で警察に
通報しますよ?』と
言い放つと
マズいと思ったのか
引き下がり
『じゃあ、邦子ちゃん』
『仕事が終わる頃、また会社に
来るからね?』と
立花の背中に隠れている
小林に告げると
手を振りながら
会社の前から去って行った。
茶髪男が完全に
いなくなったのを確認して
背中の後ろに隠れている
小林を確認すると
下を見ながら
ブルブルと震えていた。
これは仕事にならないと
判断した立花は
小林と一緒にオフィスに戻り
藤波係長の元に報告に行く。
事情を聞いた係長は
『名刺をバラまいたのは
マズいな』とポツリと呟く。
『さっきからウチの会社にも
小林宛の電話が何件か
入っていて
不思議だったんだ』と
会社にも迷惑が
かかっている事が分かった。
『今日の帯同訪問は
中止にします』
立花がそう言うと
『確かに、その方が良いな』と
藤波係長も同調して
立花の単独訪問が決まる。
昨日のキャンセル分を
含めると
元々の予定と合わせて
相当ハ-ドな予定になるので
立花は急いで外に出た。
担当先でメンテナンスを
しながら
立花は自分の軽率な行動を
後悔している。
自分に自信が無い小林に
良かれと思って
コンタクトに変えさせたり
サロンに連れて行き
メイクをしてしまった。
まさか、ここまで
大騒ぎになるとは思って
いなかったのだが
小林のアフターフォローも
考えるべきだったと
悔やんでいる。
会社に戻ったら小林に謝ろう。
自分のせいで迷惑を
かけてしまった事を
詫びなきゃいけない。
そう考えて
仕事のペ-スを上げる。
急ピッチで仕事をこなして
今日のノルマを全て完了させて
立花は会社に戻った。
オフィスに戻ると小林は
1人でPCで
打ち込みをしている。
『小林、ちょっと良いか?』と
彼女に声を掛けて
オフィスの外の廊下に
呼び出し
『俺が余計な事を
したばっかりに
迷惑をかけてゴメンな』と
謝った。
『え?
何で立花さんが
謝るんですか?』と
小林は驚いた顔をして
聞き返してきたので
『俺がイメチェンなんて
バカな事をしたから』
『変なのが集まってきたり
騒がしくなっちゃって
迷惑かけているだろ?』と
立花は頭を下げて詫びる。
その立花の姿勢を見た小林は
立花の身体を
起こすように支え
『止めてください』
『立花さんは悪くありません』
『悪いのは全部、
私なんです』と
彼女も謝っている。
『声を掛けられて
勘違いして』
『名刺まで配って、
しまって』
『本当に
申し訳ありませんでした』と
身体を半分に折るくらい
頭を下げて
小林は詫びていた。
『立花さんは、
さっきも怖い人が
脅してきても逃げずに』
『私を守ってくださった
じゃないですか?』
『私、本当に嬉しかったです』
『だから、私に謝るなんて
止めてください』と
立花に懇願をしている。
『自分が綺麗に変わって
生まれ変わったみたいで
嬉しかったんです』
『でも、もう
メガネに戻しますし
メイクもしません』
彼女は、そう言った後は
何も言わなくなった。
立花も、しばらく黙っていたが
『そうか』と言って
彼女と一緒にオフィスに戻る。
時間は18時となり
みんな帰り支度を始めたが
仕事が終わっている筈の
小林は帰り支度を始めない。
午前中に会社の前で
待ち伏せしていた
茶髪男が
待っているのでは?と
考えており
怖くて帰れないのであった。
その姿に気付いた立花が
『俺で良かったら
一緒に帰ろうか?』と
立花が声を掛けると
少し涙目になった小林が
『ありがとうございます』と
お礼を言ってくる。
直接、対峙した立花も
『仕事終わりに待っている』と
言っていた
茶髪男の言葉は本当のような
気がしていた。
取り越し苦労なら、それで良い
そう思って2人で
会社の外に出ると
やはり茶髪男は待っていた。
すぐに立花と小林に気付き
立花を睨んだ後に
『邦子ちゃん、
飲みに行こうよ?』と
ウソ臭い笑顔を作り
彼女を誘うと
しているのであった。
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