第87話22才の処女 1

目をギラギラさせた

茶髪のナンパ男は


立花と小林の方に

ゆっくりと歩いてきた。


居るだろうと予想は

していたが


本当に居て、動揺している

2人に関係なく

距離を縮めてくる。


『邦子ちゃん、仕事終わりに

飲みに行こうよ?』


クチでは、そう言っているが

目はケダモノで


『今から君を食べさせて』と

言っているようだ。


立花が小林を見ると

目は怯えており

ガタガタと震えている。


『悪いけど帰ってくれ』


茶髪男に立花が言った。


すると茶髪男は


『上司だが

何だか知らないけどよ』


『仕事が終わったら

関係無いだろ?』


『俺は邦子ちゃんに

プライベートで

会っているんだよ』


そう言って

さも自分が正しく正論を


言っているように

立花の言葉を

突き返してきた。


『こいつ天然なんで、名刺とか

配ったりしたけど』


『その気が無いんだよ』

立花は茶髪男に

そう説明するが


『関係無い、アンタは

引っ込んでいろよ』と

声を荒げるのであった。


茶髪男は今朝、小林に

声を掛けた時に感じていた。


この女、押しに弱い


どうやって断ったら良いか

その方法が分からない

女性がいる。


イヤです。


ダメです。


ムリです。


キッパリと

断れないないタイプの

人間は男性、女性問わずいる。


男性の場合は新聞を何件も

契約してしまったり


必要もない英会話セットを

買わされたりする程度だが


女性の場合は、

それでは済まない。


断り方が分からず居酒屋へ

連れて行かれ


強引に酒を何杯も飲まされ

酩酊状態になって

ホテルに連れ込まれる。


都市部のナンパ男は

断り方が下手な女を

いつも探していた。


イメチェンした小林の

美しさに引き寄せられた

ナンパ男は


こんなキレイな女

声を掛けても

断られるだろうと思って、

朝に声を掛ける。


これから会社に行くOL

時間が無い

確かに、そうだろう。


え?


携帯の番組を

教えてくれるの?


え?


会社の名刺もくれるの?


この女、隙だらけじゃないか。


しかも超一流の美人

絶対に逃がさない。


そんな覚悟でいたが

携帯に電話をして

掛け直してみたら

着信拒否にされている。


なら名刺が本物か?


会社に直接行って

確かめてやる。


そこに邪魔な男が

現れやがった。


『アンタには関係無いだろ』

そう言った茶髪男に


『関係あります』

『その人、私の彼氏です』


小林が勇気を振り絞って

言い放った。


『ハァ、?』


茶髪男が

何を言っているんだ?的な

顔をしてきたのを見て


『変な態度をして

すいませんでした』


『申し訳ありませんが

おかえり下さい』


そう言って小林は

頭を下げて謝る。


その行動を見た立花も


『本当に申し訳ないです』

『俺からも

注意しておきますので

どうか、おかえり下さい』と

頭を下げたが


引っ込みのつかない茶髪男は


『ふざけんなよ』

『いいから、行こうぜ?』と

言って

小林の手首を掴んだ。



『はい、そこまで』


そう言って蝶野が

スマホで撮影しながら

近づいてきた。


撮影されている事に

気付いた茶髪男は


『何、勝手に撮ってんだよ』と

強がっているが

一歩後ろに下がっている。


『嫌がる女子の手首を掴んだ』

『これは立派な犯罪です』


そう蝶野が茶髪男に

宣言をしてきた。


それを聞いた茶髪男は


『手首を掴んだくらいで

犯罪になるかよ』と

強がって言い返してきたが


『最初っから、

全部撮影していました』


そう言われて茶髪男の顔は

引きつっている。


『迷惑行為防止条例って

知っているよね?』


『この動画を警察に

提出するのがいいか?』


『YouTubeにアップされるのが

いいか?』


『好きな方を選ばせてあげるよ』


蝶野は笑いながら

茶髪に言ってきた。


悔しそうな顔をする茶髪男に


『ウチの小林に

次に近づいたら

いつでも

警察に行きますから』と

蝶野が宣戦布告すると


茶髪男は何も言わず

振り返って3人から

離れて行ったのである。


茶髪男が完全に

見えなくなったのを確認して


『蝶野ありがとう』と

立花が言うと


『こんな感じですよ』と

蝶野が笑顔で答えきた。


何が起きたか分からない

小林は

キョトンとしている。


実は、小林に謝った後に

立花は茶髪男の事を

蝶野に相談していた。


『その手の男は

しつこいですからね』


『絶対に会社の前で

待ち伏せしていますよ』


そう自信ありげに

立花に説明してくる。


蝶野の話を聞いて

困っている立花に


『大丈夫です、その手の

スト-カ-男の撃退法』


『私は知っていますから』と

嬉しそうに立花に

説明してきた。


地域によって違うが

東京都の場合は

迷惑防止条例で


行き過ぎたナンパは

禁止されている。


『茶髪男が、しつこく

ナンパしている姿を

撮影します』


『それを警察に提出すれば

一件落着です』と


事前に蝶野と立花で

打ち合わせを

していたのであった。


その事を

知らされていなかった

小林は放心状態である。


説明を聞いて理解はしたが

茶髪男の登場は事実であり

恐怖体験も現実であった。


『証拠を押さえたんで

あの男な2度と来ないよ』


蝶野に、

そう言われた小林だが

まだ足は震えている。


『蝶野ありがとう』


『一応、心配だから小林を

家まで送って行くよ』


立花はそう言って

蝶野と別れたが


小林は、まだ不安そうだ。


それが分かった立花は


『ちゃんと家まで送るから

安心しろよ?』と言うが


『あの人は会社に直接

来ましたけど』


『藤波係長の話だと

他にも会社に』


『電話をかけてきた人が

何人かいるみたいなんです』と

心配の原因を話してくる。


『あの茶髪男以外も狙って

来ているのか?』

立花がそう聞くが


『正確な事はわかりません』と

小林は答えるしかなかった。


立花と小林が話している姿を

遠くから見ている男が

いる事を2人は知らなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る