第84話契約の真実

女神の新しいCMがテレビから

流れ始めた頃


越中美桜のお菓子メ-カ-の

CMも放送が開始された。


美桜の初めてのCMは

大事なモノを捨てた事で

得た大きな仕事であった。


出来映えは上出来で

彼女も大満足の内容である。


美桜がチョコを可愛いく

食べるシ-ンは

スタッフにも大好評だった。


テレビのCMはあらかじめ

どのテレビ局で何時から


何時までの間で

いつ放送されるか、

分かっている。


テレビ局や時間帯、

人気番組の放送時間に近い等


色々な要素で値段が変わるが

15秒のCMで1回100万円が

相場と言われている。


100回流せば1億円


ゆえに、スポットCMを

放映される時間帯は

吟味されている。


美桜にもCMが流される

タイムスケジュールが

渡されており


実家や友人に伝えたくて


『九州のCM放送の

タイムスケジュールを

ください』と

美桜が言うと


スタッフさんは

顔を見合わせて


『これって

関東ロ-カルですよ』と

彼女に説明してくる。


CMは全国で

放送されるモノと

エリア限定のモノがあった。


有名メ-カ-が関東と関西で

うどんを販売するのに


つゆの味を変えていたり

パッケージを変えたりして

販売しているのは有名である。


全国区の会社でも

エリアによって


販売戦略が変わるので

当然であった。


ゆえに全国区の

お菓子メ-カ-の

CMとはいえ


関東地方でしか

放送しない事は

ザラであったのである。


それを知らなかった美桜は

騙されたと思ったが


スタッフさんに聞くと

今回のCMはむしろ

高待遇だと分かった。


朝のワイドショーの

時間帯や


夜のプライムタイムに

流しており


見てくれる人間は

多い時間帯なので


タレントにとっては

メリットは多いらしい。


名前も知らない

グラビアアイドルが


聞いた事もない商品を

誰も見てない深夜に

放送するCMもあり


美桜の今回の出演が

一流待遇である事は

後から分かった。


美桜が勘違いしていた理由は


『北海道の妹がCMを

見てくれたみたいで』


『すごい嬉しかったんです』と

女神が楽屋で話しを

しているのを聞いており


CMは全て

全国放送するものだと勝手に

思い込んでいたのである。


自分も実家や地元の

知り合いに見て欲しいと思う


気持ちは

16才の女の子なら

当然であろう。


そんなCM事情を聞いた

美桜には

腑に落ちない事があった。


それは女神の出演している

CMを1日に

何回も見ている事だ。


彼女も働いているので

家でテレビを

見ている時間は少ない


なのに女神の出演している

オリファルコン社のCMを

何回も見ている。


その事も周りの

スタッフの人に聞いて

確認すると愕然とした。


女神の出演しているCMは

放映回数が美桜の出演CMの

倍以上だったのである。


スタッフは

美桜が気の毒なので


倍以上と言葉を濁したが

実際は10倍以上だった。


オリファルコンの

CM放送は世界大会の

認知が最大の目的なので


チカラの入れ方が

違うのである。


スタッフさんに女神の

出演CMの状況を聞いて


彼女には

気になっている事があった。


絵色女神は、

どんなスポンサーを

掴んだのだろう?


女神の話では、

例の彼氏と最近


ついに初体験を迎えたと

先日、聞いたばかりだ。


彼女のガニ股を見ていると

ウソではないだろう。


カラダを武器にしていない?


だとしたら女神は何を対価に

スポンサーを見つけたんだ?


佐山サトシを動かして

新曲を書かせるパワー


オリファルコンの会長が

女神のスポンサーである事は

間違いない。


だが会ったのは

2回ほどだと言っていた。


そもそも、

それがウソなのか?


どれが真実か、分からない。


そう考えた美桜は

スタジオでの撮影の

空き時間に

女神を呼び出して


『女神ちゃんに聞きたい事が

あるんだけど』と


単刀直入に彼女に

聞く事にしたのだ。


何の話か、分からない女神は


『何?なんでも

聞いてよ?』と

美桜に接してきたので


あたりを見渡して

2人しかいない事を確認すると


『オリファルコンの会長と

エッチをした?』と


ストレートに

聞いてきたのであった。


そんな話をされると

思っていなかった

女神はビックリしたが


すぐに通常モ-ドになり


『会長さんと、

そんな関係じゃないよ』と

笑顔で、答えている。


正直には言わないか


そう思った美桜は

『私、女神ちゃんの事を

親友だと思って』


『地元の彼氏の事とかも

全部、女神ちゃんに話を

してきたつもりだよ』と

彼女に言った。


若い女性は

親友と言う言葉に弱い


単身、上京をしている

女神にとって


同期で年齢も近い

美桜の存在は

確かに特別であった。


『うん、アタシも親友だと

思っている』


美桜にそう言われた女神は

彼女に答えている。


『だったら、女神ちゃんが

オリファルコンの会長に

気にいられている理由を

教えて?』


カラダを武器にしたとは

言いづらいだろうと

考えた美桜が


違う言い回しで

彼女に質問をする。


そう言われた女神は

困っていた。


それは美桜も

彼女の態度を見て

感じており


もうひと押しだと

考えた美桜は


『佐山サトシに選ばれたり

CMに出演したりして』


『私の知らない女神ちゃんに

なっていっちゃって

いるもん』と


感情に訴えかけるように

言った。


美桜とは同じ歩速で

歩いてきた。


自分だけが走り出した秘密を

知りたいのだろう、と

女神も分かっている。


誰にも

言わないつもりだった。


だが越中美桜には教えても

良いだろう。


彼女はそう思って

少しずつ喋り出した。


番組の中でゲ-ムを

紹介する事になったが

全く出来なかったので


そのゲ-ムの世界1位の人に

直接教えて貰いに行った事。


その人が

オリファルコンの会長と

知り合いで

CM出演を頼んでくれたり


ゲ-ム友達の佐山サトシに

権太坂の新曲を

頼んでくれたりした事。


その人が

初体験の相手だった事。


全てを包み隠さずに

美桜に話すと

彼女は驚いていた。


『でも、その人は

女神ちゃんと

エッチがしたくて』


『色々な仕事を

持って来たんじゃない?』


美桜は自分で

言葉を発していて

意地悪だと感じていた。


だが、そう言わないと

やってられない自分がいる。


『アタシの彼氏は、

そういう人じゃ

なかったんだ』


『辛い失恋を

経験していたから

次の恋人は結婚する相手に

決めていたんだって』


『だから、アタシが

未成年なうちは

エッチをしないって』


『決めていたんだって』


『でもアタシが、その人を

好きになり過ぎて』


『一生、この人から

離れたくないと思って

毎回、迫っていたのが

事実です』


『だからオリファルコンの

会長さんも

佐山サトシさんも』


『本当はアタシの彼氏にして

くれた事なんだ』と

女神が、申し訳なさそうに

言っている。


美桜の心の中で

何かが音を立てて

壊れていった。


枕営業などしていなくて

好きな人と結ばれている。


その結果、アイドルとして

夢のような仕事が

たくさん舞い込んでいる。


そして女神は日本を代表する

インフルエンサーになっていた。


汚れる事もなく

痛みを伴う事もなく


『誰にも言ってない秘密だから

絶対に喋らないでね?』


女神に、そう言われた美桜は

『当然だよ』と言って

笑っていたが目は死んでいた。


純愛して、

ビックな仕事していて

私は何?


汚いオッサンにCMを

エサに買われて


全く手を汚していない

彼女の半分以下の

仕事しか出来ていない。


美桜の精神状態は

壊れていく。


後に越中美桜は

警察の取調べの時に


女神の真実を聞いたのが

キッカケの一つに

なったと語っていた。

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