第83話ナンパされる美女
『メイクをした、
その新人を見て』
『みんなの態度が
変わったんだよ』
女神の休憩時間が
21時30分からあったので
仕事から帰ってきた立花と
電話で少しの時間
話しをしていた女神だが
電話の向こうで
黙ってしまった。
『女神?聞いている?』
立花が電話が切れたと思って
彼女に問いかけると
『聞いてます』と、
やや怒り口調で答えてくる。
『何か機嫌悪くないか?』
立花が、そう聞くと
『その子、そんなに
可愛いんですか?』と
怒り口調のまま女神が
質問をしてきたので
『サロンの店長さんが、
モデル事務所に
所属していないなら
店のイメージ写真に
使わせて下さい、って
言ってたくらいだから
綺麗なんじゃないか?』と
悪気がなく
立花が説明するが
その言葉が女神を更に
不機嫌にさせる。
『いいですね』
『可愛い新人と一緒に
お仕事が出来て』と
女神なりのイヤミを
言ったところで
彼女がヤキモチを
焼いている事に
気付いた立花が
『もしかして女神は
ヤキモチを
焼いているのか?』と
笑いながら言うと
『ヤキモチなんて、
焼いていません』と
強く否定をするが
その態度が、
あんにヤキモチを
焼いている
アピールになっている。
悪いと反省した立花が
『俺が好きなのは女神です』
そう言うと
『そんなので
誤魔化されませんから』と
言っているが
悪い気はせずに
口調が弱くなっている。
『俺は彼女がいるって、
そいつに
ちゃんと話しているよ』
立花から出た、その言葉に
『エッチした事を
言ったんですか?』と
女神が慌て聞いてきたので
『そんな事は言ってないよ』と
否定をした。
そこから陰気キャラだった
立花が最近、
陽気キャラに変わったから
理由は何だ?と聞かれて
彼女が一生懸命に
頑張っているから
俺も変わらなきゃって
心を入れ替えて
仕事を頑張っているから
すごく良い影響を受けている
そんな説明をすると
『恥ずかしいから、
そんな事は他の人に
言わないで下さい』と
デレデレしながら
注意をしてきた。
『でも、女神の事を知らない
俺の同期の奴が』
『勝手に、立花の彼女の
名前はバ-バラだ、って
言ったもんだから』
『その新人も、バ-バラさんの
写真を見せろって、
しつこかったんだよ』と
立花が言うと
『アタシ、
バ-バラじゃないもん』
と言って怒り出している。
『今度、その同期の人に
会わせてください』
『アタシの名前は
女神です、って
言いますから』と
彼女が彼氏に頼む友人との
面談を要求してきたのである。
女の子は彼氏の友人に会って
自分の知らない
彼氏情報を聞きたがる。
それは彼氏が自分の親友に
会わせる事で、
隠したい彼女ではなく
自慢の彼女なんだ、と
認識したいからでもある。
彼女が彼氏に
『親友に私の事を
紹介してよ?』と
何度も言っているのに
『そのうちな』と言って
面会を何度も
先延ばしにするのは
彼氏が親友に会わせたくない
何かしらの理由があるからだ。
それは見た目なのか?
存在なのか?
理由は様々であろう。
女神も女性の本能で
その事を知っていたので
立花に頼んでみたのである。
『会わせるのは、いいが
そいつは超おしゃべりだから』
『会わせたら間違いなく
週刊誌にバレるぞ』と
女神に言うと
『う〜〜ん』と唸って
困っていた。
『俺も女神の事を
自慢したいんだけど
我慢しているんだよ』と
立花が説明すると
『アタシ達も今日、
会社からスキャンダルに
気をつけろ、って
注意されたばかりです』と
会社であった説明会の事を
話し始める。
サニーミュージックには
危機管理室なるモノが
存在するらしい。
所属タレントが危険に
合わないようにする為の
部署で定期的に
講習会を開催している。
最近、人気が出てきた
権太坂36は
女神のストーカ-事件も
あったので
特別な講習が
開催された、との事だ。
InstagramやTwitterに
お気に入りの写真を
アップする時の注意点を
説明された。
今のスマホの写真では
位置情報が記録されており
オフにしない状態だと
自分の自宅や
お気に入りの店舗が
ファンに突き止められて
危険な事になる、
との事だった。
だから危機管理室の人間は
所属タレントの
ホ-ムペ-ジを閲覧したり
エゴサ-チをしたりして
危ない部分を
調べているそうだ。
過去には自宅で撮影した
自撮り写真の瞳に反射した
風景から
タレントの部屋を
突き止めたファンの話や
自宅マンションまで
尾行されている事に
気づかず
マンションの外から
タレントが建物に入った後
約3分後に
電気がついた部屋から
タレントの家を突き止めて
屋上から
スパイダーマンのように
部屋まで辿り着き
鍵のかかっていない窓から
部屋に入ったファンの話が
事例として説明された。
『ファンにも週刊誌にも
気をつけなさいって言う
勉強会でした』と
女神が、その話を披露する。
その話を聞いた立花は
『女神は今や
人気No.1なんだから
特に注意しろよ』と
心配気味に言うと
『そうなんです』
『最近は送迎の車がバイクに
尾行されていた事もあって
送迎車を毎日変えています』と
過激なファンが増えて来た事を
報告してくる。
『女神が家に着いたら夜中でも
メッセージを入れておいて欲しい』
立花に、そう言われた女神は
『分かりました、必ず
ただいまメッセージを
入れます』と
彼女が言った時に
スタッフが楽屋に
呼びに来たようで
『ごめんなさい、
もう戻ります』と言って
電話が切れた。
電話を切った後に
エクシブハンターの
世界大会の話の事を
話そうと思っていた事を
立花は思い出した。
明日こそ話さないと
思いながら
風呂に入る立花であった。
場所は変わって
渋谷のファミレス
韓国コンビニで
安いコスメを買った
蝶野と小林が戦利品を並べて
楽しそうに喋っている。
『基本はナチュラルメイクが
キモだから』
『YouTubeのこのサイトと
コッチを見て
勉強してごらん?』
蝶野が小林に優しく
レクチャーをしてくれていた。
他人と買い物に行ったのも
久しぶりで
しかも会社の先輩に色々と
教えて貰った小林は
恐縮しながら感動をしていた。
『本当に色々と教えて頂き
ありがとうございます』と
小林がお礼を言うと
『他にも困った事があったら
相談してきてよ?』と
蝶野が言ってきてくれる。
『本当に今日の事は一生
忘れる事が出来ません』
そう言っている小林に
『そんな、大袈裟だよ』と
蝶野は言うが
満更でもないようだ。
『私、中学、高校、大学と
友達がいなくて』
『ず-っと、
ボッチだったんです』
『だから今日、蝶野さんに
コスメを買いに
連れて行って貰った事が
奇跡なんです』と
熱く語ってきた事に
蝶野は冷静に
『学生時代、ボッチだった時は
何をしてたの?』
自分がアニメに逃げていた
経験があったので
そう確認すると
『毎日、図書館に行って
本を読みまくっていました』
『暗いですよね?』
『陰キャで引きましたか?』
そう心配する小林に
『私はアニオタだよ』と
蝶野が言うと
『本当ですか?何か嬉しい』
そう言って喜んでいるが
『小林、その手の趣味の事は
初対面の人間には』
『情報としては言わない方が
いいから、あまりバラすな』と
忠告をしてくる。
『蝶野さんも、
吊るし上げられた事が
あるんですか?』
そう小林が聞くと
『私は中学の時に親友に
魔法少女になりたい、
と言ってから』
『クチを聞いて
貰えなくなった』と
なかなか痛い話をすると
『私も高校の時の
将来の希望に
進路先で異世界、って
書いたら』
『担任に呼び出されて
しまいました』と
こちらも重症な事を
言ってくる。
それを聞いた蝶野は
『ウチの会社で、
その手の話をして良いのは
立花さんだけだよ』と
小林に説明すると
『立花さんですか?』
『昼間、私が
今の話をした時には
何も言って
来なかったですよ』と
彼女が説明する。
『小林はスニーカー文庫の
涼宮ハルヒシリーズを
知っているか?』
そう聞かれた小林は
『久しぶりの新刊が出た時は
予約してました』と
答えると
『立花さんとアニメイトに
一緒に行った時に』
『立花さんはハルヒグッズを
探し求めていたんだ』
そう聞いた小林は
『確かに立花さんって
古泉君みたいに
完璧っぽいですもんね?』と
言った後に
ある事に気付いた。
2人でアニメイトに
行ったんだ。
『古泉より
キョンっぽいだろ?』と
蝶野が言っていたが
小林の雰囲気が
変わった事に気付き
『どうした?』と
彼女に質問すると
『あの、失礼な事を聞いても
良いですか?』と
小林がモジモジした感じで、
蝶野に質問をする。
『何、なんでも聞いてよ?』
そう言われた小林は
『噂の立花さんの彼女って
蝶野さんなんですか?』と
申し訳なさそうに聞いてきた。
それを聞いた蝶野は
『フ〜』っと
深いため息をついて
『そうだったら、
どんだけ良い事か』
そう言って下を向く。
『蝶野さん会社で
1番美人ですし
アニメイトも一緒に
行かれたって言ってたから』
『勝手に、そう思ってしまって
すいません』と
小林が謝っている。
『飲みにも行ったし、
本屋にも行った
焼肉屋にも行ったし』
『先週はアニメイトに行って
カラオケにも行ったけど』
『彼女が1番で、私はただの
後輩なんだよ』
そう説明した後に
また下を向いて落ち込んだ。
『それだけ
デ-トをしているのに
付き合ってないんですか?』
小林が驚いた顔で
蝶野に確認をすると
『付き合っていないどころか
告白して玉砕したのよ』
『これ会社の人には内緒ね』
蝶野が小林に忠告すると
『もちろんです』と
小林は頷いている。
『小林は今日、立花さんと
仕事で同行したんだろ?』
『どうだった?』
そう聞かれた彼女は
返答に困っている。
ここは蝶野に同調する感じで
少し悪い立花のイメージを
言うのが正解なのか?
立花に受けた仕事の恩義や
優しく見守ってくれた
指導方法を褒めるべきなのか?
生まれて初めて経験する
リア充っぽい板挟みに
小林が困っていると
『仕事をしている時の
立花さんって
メチャかっこよくない?』と
蝶野から答えを発表してきた。
そこで今日、小林が訪問先で
起こした2つのトラブルを
助けた上に
優しく教えてくれて
すべて解決に導いてくれ
感謝している事を
小林が熱く語っていると
その話に同調するように
『自分がピンチの時に
助けてくれて優しい言葉を
投げてくるだろ?』
そう蝶野が確認する。
『そうなんです』
『私も優しい言葉が嬉しくて
気付いたら泣いてました』と
小林が報告すると
黙って蝶野が手を差し出して
握手を求めてきた。
『あの人、仕事中の優しさを
無意識にやっているんだよ』
『それがタチ悪くて、
でもカッコイイんだよな』
と言って
蝶野が目を細めている。
『蝶野さんクラスの
綺麗な人でも
アタックしてダメなんて』
『立花さんの彼女って
どんな人なんだろう?』
小林が独り言のように
呟いた時に
蝶野の頭に
立花のアパートで女神と
会った時の事が思い出された。
テレビより100倍可愛い
女神が思い出されて
蝶野は、また大きな
ため息をついた。
あれは反則だ
女の私が惚れる
そう思っていた時
目の前の小林の顔を見て
『もしかして小林も
立花さんを狙っている?』
立花に現れた新たなライバルに
なるのでは?と思い
小林を牽制すると
両手を振って否定をして
『滅相もございません』と
否定をした。
そんな話をしていた2人に
『2人とも可愛いね?』
『良かったら、この後
飲みに行かない?』と
チャラついた2人の男が
ナンパをしてきたのである。
その光景を間近で見ている
小林は震えている。
『ハァ、』
蝶野はため息をつきながら
『こういうのが、こないように
居酒屋じゃなく
ファミレスにしたのに』と
呟いた後に
『お兄さん達、私の彼氏に
この瞬間を見られたら
埋められるよ?』と
ぶっきらぼうに蝶野が言うと
『よせよ、冗談だろ?』と
一歩引いて、
ひきつり笑いをしてる。
『私達に先に目をつけたのは
反社の彼氏だよ?』
『もうすぐ、ココに来るから
待っていなよ?』
蝶野は笑いながら、
チャラい男達に話すと
『すいませんでした』と言って
ナンパ男達は店から
飛び出して行った。
すると小林も顔を
青ざめながら
『蝶野さんの彼氏って
反社なんですか?』と
怯えながら
質問をしてきたので
『あんなのウソだよ』
『ナンパ男を追い払うウソに
決まっているだろ?』と
誤解をとく。
『アンタも可愛いんだから
気をつけるんだよ?』
そう言った後に
蝶野はある事に気がついた。
蝶野は、よく街で
ナンパされるが
今日は特別多かった。
韓国コンビニから、
ココに来るまで
6組に声をかけられている。
普段は1日で多くて3組だ。
ファミレスで
声をかけられたのは
初めてである。
こんな目立つ場所でも
声をかけるか?
コンタクトにして、
髪をきれいにセットをして
蝶野が施したナチュラルメイク
今の小林はメチャクチャ可愛い
みんな小林を狙っているんだ。
だが当の本人は、
そんな事には気づかず
キョトンとした顔で
蝶野を見つめていたのであった。
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