第77話脅迫 2

アニメイト池袋本店は

1階から9階まで


アニメに関する物を

販売しており


日本最大の

アニメショップと言って

過言ではないだろう。


先週、蝶野の参考書を買いに

付き合った時に


一緒にアニメイトに行く

約束をして


カラオケで蝶野が

アニソンを歌ってくれる

そこまでの話が決まっていた。


その時は女神と時間が

合わない欲求不満もあり


蝶野と会っている時に

積極的な彼女の

アプローチに


感情を揺さぶられて

池袋デ-トを提案したが


やはり女神が1番だと思い


蝶野と2人きりで会うのが

今日で最後だと伝える。


そう誓って池袋に来た。


だが待ち合わせ場所にいた

蝶野は股下5cmの

黒のミニスカートに


胸が強調される

白のTシャツ姿だった。


その見た目に誓いがブレる。


あきらかに

人待ちをしている蝶野に

周辺の人も注目しており


待ち合わせ相手は

どんなヤツなんだ?と

変な期待感で満ちていた。


そこにSEGAソニックの

プリントTシャツに


デニムのズボンの

立花が現れて


『何で、お前なんだよ?』

と言う


聞こえないブ-イングで

立花の心が折れそうになるが


『待ってましたよ』と

立花の腕を掴んで

自分の胸に押し付ける

蝶野の行動で


周囲の男共が

奥歯が無くなる位の


歯ぎしりをしているのを

感じて溜飲を下げた。


『お前、今日のスカート

短すぎないか?』


20代前半だから許される

ファッションに

立花が注文をつけると


『今日はビスクド-ルの

海夢ちゃんをイメージして

来ました』と


蝶野が笑いながら説明する。


『だったら俺は

作務衣じゃないと

合わないだろう』と


アニメ放送を見ていた人しか

分からない返答を

立花がして


それを聞いた蝶野は

目を閉じて感動していた。


これよ、これ


このアニメおたくの

掛け合いを彼氏と

したかったの。


歓喜に震える蝶野の頭を

軽く、こづき


『何やっている』

『店に行くぞ?』と

立花が引っ張る形で


蝶野を先導して

店内に入っていく。


店内にカップルは少ない


同性同士の友人や

一人で来ている人間の中

蝶野と立花は目立つ。


立花も、

その事に気づいている。


だが蝶野は

一切気にする事なく


『立花さんは何を

探しているんですか?』と


周りに聞こえるように

質問をしてきた。


『え?俺?』と言って

恥ずかしそうにして

答えようとしない。


『そう言えば立花さん家、

フィギュアが一体も

無いですよね?』と

不思議そうに言ってくる。


アニメが、それほど

好きじゃない人の家にも


ゲ-センで獲ったと思われる

ルフィや炭治郎はある。


それがアニメ好きだと

言っている


人間の家に無いのは

確かに違和感を感じる。


『俺はフィギュアは集めて

いないから』


『単純に好きな

アニメのグッズで

何か良い物があれば』


『買って帰ろうかな?

くらいの気持ちだよ』と

説明すると


『好きなアニメって

何ですか?』と

目をキラキラさせて

聞いてくる。


アニメ好きでも趣味嗜好は

多岐に渡り


色々なタイプがいるのを

蝶野も知っており


立花が何が好きなのか?は

知っておきたい

部分であった。


『最近、1番好きだったのは

異世界おじさんかな?』と

立花が答えると


『エルフさんの

クリアファイルとか

探しに行きます?』と

蝶野が誘うと


黙って、

少し頬を赤らめていた。


どうやら

ビンゴだったらしい。


『他は何が好きですか?』と

蝶野が聞くと


『今は売っていないかも

しれないけど』


『あったら嬉しいのは

涼宮ハルヒかな?』と

立花が呟くと


『立花さん、どことなく

キョンみたいですもんね?』と


笑いながら突っ込んでくる。


それを聞いた立花は

少し嬉しかった。


中学生の時にハルヒの

アニメを知った立花は

主人公のキョンに

憧れを持っていた。


高校に入ったら

ハルヒみたいな

女の子がいて


未来人や超能力者、

宇宙人の友達が出来ると

信じてやまない


中2病の典型的な症状に

陥っていたからだ。


立花が嬉しそうな顔に

なっている事が

蝶野にも分かっている。


『立花さんは、

ぼっち.ざ.ろっくは

好きでした?』と

蝶野が質問すると


『喜多ちゃんって

声に透明感があって

歌がメチャ上手いよな?』


『結束バンドも歌えるか?』と

立花が聞くと


『カラカラが今、私の中で

1番大好きな曲なんです』と

2人の会話は尽きない。


各階で色々な物を見て周り

CDやマンガ、同人誌売場まで

くまなく見て回った為に


結局、3時間もビルに

滞在していた。


この後はカラオケの約束に

なっていて


蝶野は何も言わずに

カラオケの鉄人に入り


慣れた感じで

受付を済ませて

個室へと向かうのであった。


『ClariSから歌いますか?』


蝶野がそう言って立花に

デンモクを手渡し

リクエストを要求している。


カラオケが苦手な立花の為に

蝶野がリクエスト曲を

歌う約束になっていたので


『アイロニ-で、いいか?』と

立花が聞くと


蝶野はリクエストに応じて

ClariSのアイロニ-を

振り付きで熱唱してくれた。


それからも蝶野は立花の

リクエストした曲を全て

歌いきって


最初は歌う事を

拒否していた立花も


スノーハレ-ションを

蝶野が歌う頃には

ノリノリになり

彼女と一緒に踊っていた。


2時間ほど歌った頃

『時間は大丈夫なのか?』と


通常のカラオケボックスが

2時間制な事を思い出して

蝶野に聞くと


『大丈夫です、無制限で

取っていますから』と

笑顔で答えてくる。


女友達や会社の人と

カラオケに行っても

アニオタがバレるのを

恐れて


無難な曲しか

歌ってこなかった

蝶野も幸せで


『来週も、また一緒に

遊びましょうか?』と

立花を誘う。


その瞬間、

立花の表情が変わった。


『立花さん?』

蝶野も彼の変化に気付き


問いかけるが

立花は黙ったままだ。


30秒ほど無言の時間が

経った頃


『蝶野、2人で会うのは

今日で最後にしようか?』と

立花が告げて

きたのであった。


『え?』


蝶野は信じられない

そんな表情になり

絶句している。


立花も次の言葉が

出ないようで

黙っていると


『普通に会社の先輩と

後輩が休みの日に

遊びに来ているだけじゃ

ないですか?』


蝶野がそう説明すると


『毎週、2人で

遊びに来ていたら

それはデ-トだと思うんだ』


立花がそう言うと


『それの、どこが

いけないんですか?』


『今日だって、

楽しかったじゃないですか?』


蝶野が必死に立花に

説明を続けた。


薄暗いカラオケボックスで

2人に沈黙が流れている。


すると立花が

蝶野を見つめながら


『俺には彼女がいる』

『だから、お前と2人では

もう遊びには

行けないんだよ』と

別離宣言を通告する。


『彼女がいたって、

遊びに行く男は

たくさんいますよ』


蝶野は必死に

立花を振り向かそうと

アピールしたが


『俺は彼女がいれば

他の子とは遊ばないんだ』と

彼女の言葉を拒否した。


藤波係長と鉢合わせをした日


あと一歩でエッチに

持ち込めそうだったのに

今日は何を言ってもダメ


やっぱり?


『金曜日に

私アパートに行きました』


『彼女さん来てましたけど

泊まったんですか?』と


蝶野が声を荒らげて聞くが

立花は黙ったままだ。


『あの子、絵色女神ちゃん

ですよね?』


彼女が、その名前を出した時に


立花は驚いた顔で

蝶野を見つめた。


バレた


たちまち顔面蒼白になる立花に


『あの子って

17才じゃないですか?』


『泊まってエッチしたら

犯罪じゃないですか?』


1番恐れていた事が

知り合いにバレてしまった

立花は小刻みに

震えていたのであった。

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