第78話脅迫 3
『あの娘って
17才じゃないですか?』
『泊まってエッチしたら
犯罪じゃないですか?』
蝶野に、そう言われて
3日前だったら
『神に誓ってもいい』
『エッチはしてない』と
胸を張って答えられた。
だが、今は
『すいません』としか
言えない。
それに自分の彼女が
女神だとバレてしまっている。
テレビで見ない日はない位
毎日テレビ出演をしており
CMも放映されている
トップアイドルだ。
普通の17才とエッチをして
捕まっても
ニュースになるのに
相手がアイドルだったら
週刊誌は大騒ぎだろう。
『俺は捕まっても
週刊誌に叩かれてもいい』
『アイツは、やっと
アイドルに成れたんだよ』
『蝶野に酷い事を
言っておきながら
ムシの良い話だけど』
『黙っていて欲しいんだ』
そう言って蝶野に頭を下げた。
その立花の態度を見た
蝶野は
『だったら彼女と別れて
私と付き合ってください』
『そう言うとでも
思っています?』と
立花に問いかける。
言葉の意味が分からない
立花が
キョトンとしていると
『まずは状況を教えて下さい』
『何故、アイドルが
会社の先輩の彼女に
なっているのか?』
『立花さん不思議過ぎて
全く理解出来ないんです』
蝶野に、そう言われた立花は
最初は黙っていたが
やがて
『何処から話そうか?』
と言って覚悟を決め、
ポツリポツリと
喋り始めたのであった。
『たぶん蝶野のイメージの
俺は人と関わりを持たない』
『暗い、陰気な冴えない
会社の先輩だと思うんだ』
『残業もせずに
会社と家の往復、誰とも
飲みに行かない俺は』
『会社が終わると家に帰って
毎日ネットゲ-ムをしていた』
『そのゲ-ムの世界では
そこそこ有名になっていて』
『そのゲ-ムのレクチャーを
頼んで来たのが
女神だったんだよ』と
事のあらましを
立花が説明する。
『彼女は、その時
スト-カ-が家に押し掛けて
来ていたんだけど』
『事務所に報告したら
保護されて』
『俺へのレクチャーが
頼めなくなると思って』
『ネットカフェに寝泊まりして
俺とコンタクトを
取っていたんだ』
『彼女の実家は北海道で
単身上京して来て』
『アイドルの見習いで
頑張ってはいるが
給料は手取りで15万円』
『そのウチ10万円を毎月
実家に仕送りしているんだ』
『彼女の家は7人家族で
正直、生活が厳しいらしい』
『アイツは高校生になって
バイトするまで』
『自分のスマホを
買えなかったらしいんだ』
その話を聞いた蝶野は
自分と同じだと思った。
『アイドルに成ったのも
家族を幸せにしてやりたい
一心だったらしいんだ』
『17才の彼女が
こんなに一生懸命に
仕事を頑張っているのに』
『俺は、こんなに
だらしなくて良いのか?』
『そう思った日から心を
入れ替えて働きはじめたんだ』
蝶野は自分が立花に
助けられたのは
ちょうど、その頃だったと
分かった。
『だから俺も応援したくなって
知り合いに頼んで』
『彼女がCMに出られるように
お願いしたり』
『新曲を書いてくれないか?と
頼んだりした』
立花がそう説明している時に
『新曲を書いてくれ、って
頼んだ相手は
誰なんですか?』と
蝶野が質問してくる。
『新曲を頼んだのは
ア-カムの佐山サトシさん』
立花は普通に話したが
聞いた蝶野は
『立花さん、佐山サトシとも
知り合いなんですか?』と
驚愕している。
『あぁ、女神がレクチャーを
頼んで来たゲ-ムで
同じチ-ムだったんだよ』と
立花が説明すると
驚いたままの表情の蝶野は
『そのネットゲ-ムって
何って名前ですか?』と
聞いてきた。
『エクシブハンターって
知っている?』と
立花が聞いてきて蝶野は
更に固まってしまった。
エクシブハンターは
蝶野もプレイしており
大好きなゲ-ムで
通勤電車の中で毎日遊んでいる。
ここに来て彼女が気付いた。
『彼女が出ているCMって
エクシブハンターですよね?』
『CMを頼んだ知り合いって?』
蝶野が恐る恐る立花に聞くと
『エクシブハンターの開発元
オリファルコンの会長だよ』と
立花は目を閉じながら説明した。
そこで先週会った
ス-パ-モデルみたいな
女性が言っていた
言葉が浮かんだ。
『立花さん、
先週会った美人さんが
言っていた副社長って?』と
蝶野が引きつり笑いで聞くと
『そうだよ、
オリファルコン社では俺の事を
副社長って呼んでいる』
『でも誤解しないで欲しいんだ』
『副社長への
就任は断っているから
実際にはオリファルコンからは
一銭も貰っていない』
『エクシブハンターの開発とか
イベントでアイデアを
出している程度だから』と
立花が頭を
かきながら説明するが
蝶野は壊れかけており
話が耳に入ってこない。
付き合っている彼女は
現役のアイドルで
人気ロックバンドの
ア-カムの佐山サトシと
知り合い
東京証券取引所の上場企業の
オリファルコンの副社長の
肩書きを持っている。
蝶野は立花のもう一つの
顔を全く知らなかった。
取得困難な
国家資格を持っている
憧れている会社の先輩
その人の彼女に成りたいと
思っていたが
情報量が多すぎて
パニックになってきている。
『この事は会社の誰にも
話していない』
『もちろん棚橋にも
言っていない』
そう言われて蝶野は顔が
真剣になった。
『言われた通り裏も表もない
俺の全てを蝶野に話した』
『だから、
女神の事をマスコミに
バラさないで、
やって欲しいんだ』
そう言って再び頭を下げる。
すると蝶野は
『私バラす、つもりなんて
ないですよ』と宣言してきた。
『昔の私なら、立花さんを
脅迫して無理矢理、彼女に
なっていたかもしれませんが』
『それだと立花さんに嫌われて
好きにはなって貰えない』
『ここまで話を聞いて、
誰かに喋ったら立花さんは
一生、私を
許さないですよね?』
『私は立花さんの敵には
なりたくないです』
そう言った蝶野の言葉に
『じゃあ?』と呟いた立花に
『誰にも言いません、
秘密にします』
そう言って蝶野は笑った。
『ありがとう』
立花が蝶野に頭を下げると
『でも、たまには遊びに
付き合って下さいよ?』
『月に一回なら、
会社の先輩と後輩でも』
『おかしくないと思うんですよ』
そう言ってきた蝶野に
『わかりました』
『その頻度なら、
大丈夫だと思います』
そう言って立花が承諾する。
『ヤッタ〜』
そう言って立花の腕に
蝶野が抱きついている。
『胸を押し付けるな』
立花が離れるように
要求するが
蝶野は更に押し付けていた。
転職したら
年収2000万円を稼ぐと
思っていた立花が
将来、上場企業の副社長に成る
可能性が大と知った。
年収は4000万円を超えるだろう。
アイドルと一般人
付き合っていても
別れる可能性の方が
高いはずだ。
別れた時に、
すぐに立候補出来る
2番手を維持する方法を選んだ
蝶野であった。
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